表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
勇者たちのそばに偶然居合わせて異世界召喚されたら、無能はいらぬと島流しに。流刑地で覚醒した俺は島おこしで世界征服をする  作者: ほさ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

19/44

禁忌の代償

「くっ……リリスはまだなのか……」

クルスは荒い息を吐きながら膝をついた。いくら魔導に長けたエンシェントエルフといえど、魔力は無限ではない。彼女の周囲では、盾となっていた戦闘部隊のエルフたちが一人、また一人と力尽き倒れていく。

魔法を持たぬ肉弾戦で応戦していた他の三種族も、圧倒的な「数の暴力」の前に防戦一方となっていた。一人のドワーフ兵が力尽き、地面に伏そうとしたその時だった。

「待たせちまったな、同胞よ」

後ろから分厚い手がその肩を支えた。ボンドが、戦える職人たちを引き連れて戻ってきたのだ。さらにその脇からは、ゲルド率いる獣人族と、アルマが先導する鳥人族が次々と駆けつける。

「やっと避難民の誘導が終わったからな。動けるやつらを根こそぎ連れてきたぜ!」

得意げに吠えるゲルドに、アルマが呆れたようにツッコミを入れる。

「さっきまでビビってたくせに、何を言ってるんだい」

「お前たち……やっと来てくれたか……」

安堵からか、クルスの瞳にわずかに涙が浮かぶ。

「クルスさん、リリス様が『あともう少し』だと言っていました。だから、踏ん張りましょう!」

アルマの言葉に、クルスは力強く立ち上がった。

「なら、弱音を吐いてはいられないね。いくよ、みんな!」

【場面転換:リリス】

「ふぅ……あと少し……あと少しで、島のマナを繋ぎきれる……」

額ににじむ汗を拭い、リリスは極限の集中を続けていた。

魔王の末裔である彼女には、島そのものに宿るマナと住民から発せられるマナ、その二種類を一点に集束させる能力があった。それを練り上げ、巨大な「壁」を再構築することで、島のマナを持たぬ者を強制的に弾き出す――それが先代から伝わる禁術だった。

だが、この術は諸刃の剣だ。島全体のマナ濃度を一気に下げ、呪いとも言える「石化」を早める危険性がある。

「ごめんなさい……ごめんなさい……」

リリスは心の中で謝り続けていた。

感謝祭のために訪れていた他の異人たち。この術を使えば、彼らは慈悲もなく外海へと放り出され、海の藻屑となるだろう。そして、石化がどこまで進行し、住民にどれほどの苦痛を与えるかも未知数だった。

(だけど……このままでは全員殺されてしまう。人間たちは、この島を、魔王を恐れすぎている……)

「私が、みんなを守らなきゃ……!」

リリスはカッと目を見開き、両手を天へと突き上げた。

「――コラプス・アルス・ノヴァ!!」

その叫びに応じるように、島の上空に夜空を覆い尽くすほどの巨大な魔法陣が出現した。

「な、なんだ!? 何が起きてる!」

狼狽する人間の兵士たち。だが、クルスだけは空を見上げ、確信を持って呟いた。

「……きたか」

やがて、狂乱の声を上げていた兵士たちの姿が、蜃気楼のように希薄になっていく。

人間だけでなく、彼らの黒い軍艦も、観光客の異人たちも、その船までもが、まるで最初から存在しなかったかのように世界から「消去」されていく。

「こりゃあ、すげえ……」

ボンドが呆然と呟いた直後、大地が鳴動し、海がゴゴゴと唸りを上げた。

「ここは危険だ! 早く鉱山へ避難するぞ!」

クルスの号令で全員が駆け出す中、アルマだけは一度だけ海の方へと振り返った。

「ドラコ……」

その名を一度だけ口にすると、彼女もまた仲間たちの後を追った。

荒れ狂う海と共に、港は島が縮小していく過程で飲み込まれ、消えていった。

こうして人間たちの襲撃は、リリスの禁術によって幕を閉じたのである。

最強の竜人族は、島に一人も残っていなかった。おそらくドラコが全員を連れて、混乱に乗じて脱出したのだろう。

最善を尽くした結果ではあったが、代償はあまりに大きかった。島は小さく縮小し、多くの命が失われた。そして何より、この島は世界から完全に切り離された「石化の檻」となり、閉鎖的な歴史を歩み始めることになったのである。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ