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勇者たちのそばに偶然居合わせて異世界召喚されたら、無能はいらぬと島流しに。流刑地で覚醒した俺は島おこしで世界征服をする  作者: ほさ


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邪神

戦場を埋め尽くしていた無数の魔物たちが、まるで幻だったかのように、端からサラサラと灰になって次々と消滅していく。

「なんだあ? 敵が勝手に消えていくぞ?」

ドラコが拳を構えたまま、不思議そうに周囲を見回した。

「空井くん……甲斐くん……!」

愛多が祈るように胸に手を当て、二人のいる戦場の方角を見つめる。

「ふむ、二人がうまくやったようだな。よし、我らも二人のところへ行こう」

竜神の言葉に頷き、三人は急ぎ奏多たちの待つ決戦の地へと向かった。

荒涼とした大地の真ん中で、奏多は静かに息を吐いた。

「ふう……。オウ! もう起きれるんだろ?」

「くくっ、よくやったな、主よ」

聞き覚えのある傲慢な声が響いたかと思うと、奏多の目の前に、先ほどまでの凶悪なカオスではなく、元の傲慢ながらも温かみのある人格を取り戻したオウが姿を現した。

「おーい! 空井ーー!」

その時、遠くから大きく手を振る広臣の声が聞こえた。

振り返ると、そこには広臣と、そして完全に意識を取り戻したアリスの姿があった。

「アリス……!」

奏多が叫ぶ。アリスは奏多の姿をその目に映した瞬間、大粒の涙をボロボロと流しながら、一心不乱にこちらへ走ってきた。

「奏多ッ!!!!」

「おぷっ!?」

全力で抱きついてきたアリスの勢いに、奏多は不意を突かれて後ろへ派手に吹っ飛ばされた。

「ちょ、ちょ! アリス、苦しいって!」

「あ、ご、ごめんなさい……!」

アリスは慌てて顔を真っ赤にしながら身を引く。しかし、すぐにまた涙を拭いながら、愛おしそうに奏多を見つめた。

「よかった……本当に、無事で……っ」

「アリスこそ……生きててよかった……」

そう答えた奏多の頬を、気がつけば一筋の涙が静かに伝い落ちていた。

「ハハ、よかったな、空井」

優しく微笑む広臣。だがその感動的な空気を切り裂くように、上空から大きな影が降ってきた。

「おい! 泣いてんのかおめえ! ガハハハハ!」

大声で笑いながら着地したのは、やはり空気を読まないドラコだった。

「……お前は相変わらず空気が読めんやつだな」

「全くです。良いシーンが台無しですね」

後ろからあきれた様子で竜神と愛多が歩いてくる。

「うるせえよ、ドラコ」

奏多はバツが悪そうに袖で涙を拭った。

「でも、みなさん本当に無事でよかったです……」

愛多が心底安心したように微笑むと、オウが竜神に向き直った。

「奏多たちが世話になったな、竜神よ」

「ふん、世界の危機だったからな。仕方なくだ」

古い知己である二神が短い言葉を交わす。

しかし、奏多はふと、アリスの様子を見て違和感を覚えた。

「……あれ? アリス、お前の中にあったはずの『女神の核』はどうしたんだ?」

その質問に、広臣とアリスが困ったように顔を見合わせる。

「……それが……」

アリスは意を決して、先ほど広臣の聖剣に起きた異変をすべて話し始めた。

その内容を聞いた瞬間、オウと竜神の表情が、一気に険しいものへと変わる。

「……それで、その聖剣はどこへ消えたか分からない……と?」

オウが低い声で確認する。

「そ、そうなんです。僕がいくら呼びかけても、全く応答してくれなくて……」

広臣が悔しそうに拳を握りしめた。

――その時だった。

ゾクッ……!!!!

奏多たちのすぐ後ろ。先ほどカオスが消滅したまさにその場所から、世界がひっくり返るほどの圧倒的な『負のプレッシャー』が地響きと共に湧き出た。

「ッ!?」

全員が一瞬で振り返り、それぞれの武器を構えて極限の戦闘態勢をとる。

「主よ……これは……!」

オウの顔に緊張が走る。

「……ああ。クソ、まだ終わりじゃなかったか!」

奏多が刀の柄を強く握りしめる。

彼らの目の前の空間にポツンと現れたのは、先ほど広臣の元から消え去った、あの禍々しく赤黒く変異した聖剣だった。聖剣が虚空に浮かぶと、

――チャポン……。

何もない大気であるはずの場所に、まるで水面のような静かな波紋が広がっていく。

ザバァンッ!!!!

次の瞬間、激しい水しぶきのような闇のマナと共に、その波紋の中から一本の白い「手」が突き出た。

「これって……!」

愛多が息を呑む。

「間違いない……カオスだ……!」

広臣が叫ぶ。

波紋から現れた手は、まるで現実世界へよじ登ってくるように、ドロドロとした闇を押しのけてその全容を現していく。

しかし――そこに現れた姿は、カオスでも魔神でもなかった。

それは、かつて世界を創ったとされる女神イリスと瓜二つの、美しい青い髪をした少女の姿だった。

「あぁ!? こりゃ一体どういうことだ!? 女神様じゃねえのか!?」

ドラコが混乱して叫ぶ。

「いや……イリスの核を元にして肉体を再構成したのだ。だからあの姿なのだろう」

竜神が冷徹に分析する。

「ふぅ。危なかったわねぇ、本当に」

少女――イリスの姿をしたカオスは、自分の白い腕を眺めながら、どこかおっとりとした大人の口調で呟いた。

「お前……どこまでしつこい奴なんだ、カオス……!」

奏多が狂おしいほどの殺気を放つ。

「たまたま勇者の聖剣という、これ以上ない最高の触媒が目の前にあったから助かったわ。感謝しなくちゃね」

イリスの顔で、カオスが妖しく微笑む。

「……フン、性格や喋り方までイリスそのものだな。反吐が出る」

オウが不快そうに吐き捨てる。

「関係ない。姿が何だろうが、今度こそ完全に消滅させる」

奏多が静かに刀を引き抜き、切っ先を突きつけた。

「今度は油断しないわ。まとめて全員、私の世界から消してあげる」

カオスが優雅に手を伸ばすと、目の前にぷかぷかと浮いていた赤黒い聖剣が、その手にカチリと収まった。

「主よ……気を引き締めるのだ。奴は先ほどとは『格』が違う。神の核と聖剣を完全に取り込み、真の邪神へと成り果てているぞ」

オウの警告に、奏多は短く応じる。

「ああ。分かってる」

「空井……。まさか、今度も君一人でやるわけじゃないよな?」

後ろから、広臣が新たな聖なるマナを全身から爆発させ、奏多の横に並び立った。

「私だって、今度はちゃんと奏多と一緒に戦います。もう絶対に離れません!」

アリスもまた、白銀に輝くレイピアを構えて奏多の逆の隣へと立つ。

「おいおい、俺様も混ぜてくれよ? 竜人族の王の力、見せてやるぜ!」

ドラコが拳を鳴らして不敵に笑う。

「やれやれ。若者にあれだけ言われてはな。……我らも行くか? なあ、オウよ」

竜神が翼を広げて笑う。

「ふっ。当たり前だ。我が主のためになら我の力全てを捧げる覚悟だ」

オウもまた、極大の魔力を練り上げる。

「私もみなさんをサポートします!」

愛多が聖杖を握って覚悟を決める。

カオスは彼らの圧倒的な戦意を前にしても、ただニヤリと美しく、そして残酷に口元を歪めた。

「いいわ。――全員一気にかかってきなさい」

本当の最終決戦が、今ここに幕を開ける――!

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