空っぽの器、塔を作る
奏多が【創造都市】のスキルを発動した、その瞬間だった。
島全体が、底から突き上げられるような激しい揺れに襲われる。
「な、なんじゃ!? 奏多殿、一体何をしたんじゃ!」
ゲルドが狼狽えながら叫ぶと、奏多は静かに「後ろを見てくれ」と告げた。
ゲルドが弾かれたように振り返る。そこには、ちょうどドワーフの集落がある方向に、天を突くような巨大な「白い塔」がそびえ立っていた。
「な……な……なんじゃあありゃあ!!!!!」
ボンドが目を剥いて絶叫する。
ゲルドとボンドがパニックに陥る中で、アルマだけは「ふっ」と不敵に笑い、「こりゃまた規格外でおりますなぁ」と感心したように見上げていた。
そんな中、エルフの長であるクルスが冷静に問いかける。
「奏多よ。あの塔があるのは新しくできた土地の上であろう? あれが、皆が暮らせる場所なのかな?」
「いや、あれはまだただの巨大な塔でしかない。これを、お前ら全員が住める場所に作り変える。――スキル【マナの再構築】」
奏多が再びスキルを唱えると、白い巨塔は生き物のように蠢き、みるみるうちにその姿を変貌させていった。
やがて、光が収まり完成したその姿に、流石のクルスも目を丸くして呟いた。
「これは……面妖な……」
「あれが、俺の住んでいた国にあった『城』だ」
「あれが城なんですね……? 初めて見ました」
アリスがうっとりと見惚れる一方で、ドワーフのボンドは職人としての血が騒ぐのか、「あのような建築の城、見たことがないんじゃが……ぜひとも中が見てみたいもんじゃ」と鼻息を荒くしている。
対して、獣人のゲルドは少し不安げに尋ねた。
「むう。しかし、あれが奏多殿の言う『全種族が共存できる中心都市』というものなのかの……?」
「いや、あれはあくまで中心都市のシンボルみたいなものだ。あの城を中心に、これから都市作りをしていくんだよ。……まあ、まずは一度あの城をみんなで見に行こうか。中を見てほしいんだ」
奏多の提案に、アルマがワクワクした様子で翼を広げた。
「本当に愉快なお方でございますなあ。楽しみじゃわい。ちょいとわっちだけ先に見てきますわ!」
「あー! アルマさんずるい! 奏多、皆さん! 私たちも早く行きましょう!」
走り出したアリスを追うように、他の面々も顔を見合わせながら城へと駆け出していく。その様子を見送っていたオウが、感心したように口を開いた。
「流石は我の主殿。まさか、全種族のマナを合わせて新たなマナを作り上げるとはな……」
「これなら、全員が暮らしやすいと思ったんだ。まあ、俺も中がどうなっているかまでは分からないから楽しみだよ。……早く行くぞ、オウ」
「ふふ、承知した」
奏多が歩き出すと、オウは楽しげな笑みを浮かべてその背中についていくのだった。




