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勇者たちのそばに偶然居合わせて異世界召喚されたら、無能はいらぬと島流しに。流刑地で覚醒した俺は島おこしで世界征服をする  作者: ほさ


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魔神王の力

「お前……オウ……だよな……?」

奏多が搾り出すように、震える声で問いかけた。

その姿はどう見てもオウのままだ。しかし、目の前の怪物は自身の右手を何度も握り、開き、まるで新しいおもちゃを手に入れた子供のように無邪気にその感触を楽しんでいる。

「オウ……? ああ。この体の持ち主、精霊王か……」

オウの体をしたモノは、他人事のように首を傾げて、鈴の鳴るような、しかし酷く冷徹な声を響かせた。

「お前……何者だ……っ!」

「……分かっているだろう? 僕はカオス。魔神の王、カオスだ」

カオスが淡々と、しかし絶対的な傲慢さを孕んだ声で告げた。

その瞬間、奏多の頭の中で何かが激しく弾け飛んだ。仲間を、オウを、世界の調和を無残に奪われた激しい怒りが、彼の理性を一瞬で焼き尽くす。

「おおおおおおおおおッ!!!!」

「空井(奏多)!?」

背後からの広臣の制止の叫びすら耳に入らなかった。奏多は怒りに任せて地面を蹴り、カオス目掛けて一直線に飛び出していった。

ビュンッ!! と激しい音を立てて、彼の全身から黄金のオーラが爆発的に増幅していく。全霊の魔力を乗せ、カオスの脳天へ向けて黄金の刀を全力で振り下ろした。

カアンッ!!!!

鋭く高い金属音が響き渡る。だが、手応えは全く無かった。

「何をそんなに怒ってるんだ?」

カオスは奏多の方を見向きもせず、ただ左手を軽く掲げ、その指先だけで黄金の刃を完璧に受け止めていた。空間そのものが固定されたかのように、刀がピタリと止まる。

「カチ、カチ、カチ……っ!」

奏多は歯を食いしばり、顔を真っ赤にしながら刀に全体重と力を込め続けた。しかし、カオスの指先は微動だにしない。

「その体を……返せ……っ!!」

「それは無理だな。この体は本当に馴染む。素晴らしい器だ。これだけの出力があれば、千年前にお母さん(女神イリス)にも負けなかっただろうにね。……あ、お母さんもここにいるんだった!」

カオスは邪悪な笑みを浮かべると、空いた右手で、自身の胸をトントンと軽く叩いてみせた。

「イリス様も……!」

背後で広臣がハッと息を呑む。ベノムの右腕からセバスチャンが奪い、繭に捧げたあの女神の封印。今や、イリスの力までもがカオスの肉体の一部として取り込まれているのだ。

「僕の配下たちが、最期によくやってくれたみたいでね。本当にいい目覚めだ」

カオスは心底満足そうに目を細めると、声音をスッと冷たく落とした。

「続けて……あとさ、そろそろ離れてくれないかい?」

カオスが奏多をチラリと横目で見た、その瞬間。

凄まじい衝撃波が刀を伝って奏多の全身を襲った。

「うわっ……!?」

まるで巨大な暴風に吹き飛ばされるように、奏多は刀ごと強引に後方へと投げ飛ばされた。

「空井!」

広臣が咄嗟に動き、空中へ飛び上がって奏多を受け止めに走る。

ガッ!! と、凄まじい勢いで落ちてくる奏多の身体を、広臣が執念でがっしりと受け止めた。二人は激しくユグドラシルの床を滑りながら、どうにか踏みとどまる。

「大丈夫か、空井!」

「ああ……。だけど、あいつ……底が見えない……っ」

奏多は刀を支えに立ち上がるが、あまりのプレッシャーに冷や汗が止まらない。

カオスはそんな二人を気にする様子もなく、ふんわりと宙に浮いたまま、顎に手を当てて楽しそうに独りごちた。

「うーん……。この世界には、僕に届きそうな奴は君たち……あとは竜神くらいかな……」

カオスは世界の広さを値踏みするように見渡していたが、ふと、世界樹の下層へと視線を向け、その瞳を怪しく光らせた。

「……ん? ユグドラシルの下にもう一人、面白そうなマナを感じるなあ……!」

不気味にニヤリと笑うカオス。

「まさか……!」

奏多の脳裏に、ある人物の顔が浮かぶ。

「アリスさん……だね」

広臣が厳しい表情でその名を口にした。

「ちょっと見に行こうかな」

カオスはそう言うと、ふらっと空中を歩くように一歩を踏み出した。

「やばい……っ!」

逃がすわけにはいかない。奏多と広臣は同時に地面を蹴り、カオスを引き留めるべく飛びかかろうとした。

「だから、邪魔だよ」

カオスが背後をチラッと振り返り、二人を冷たく見据えた。

ドクン……!

その瞬間、奏多と広臣の身体が空間に完全に縫い付けられたかのように、ピキリと動きを止めた。

「なっ……!? 体が……動かない……っ!」

奏多が必死に四肢に力を込めるが、指一本すら動かすことができない。絶対的な格上のマナによる、空間そのものの拘束。

「あとで殺してあげるから、ちょっとそこで待っててくれ」

カオスは退屈そうに言い残すと、そのままユグドラシルの下層へと、吸い込まれるようにふわりと降りていってしまった。

「ま……て……っ!!」

奏多はカオスを追うため、精神のすべてを集中させて、動かない身体を力ずくで動かそうと抗った。しかし、神の領域の拘束に無理に逆らった反動で、ミシミシと肉体が悲鳴を上げ、全身の皮膚からブツブツと血が噴き出し始める。

それを見た広臣が、驚愕に目を見開いた。

「空井……っ!? 出血が……危ない、無理をするな!」

「これくらいで……俺を……縛れると……思うなよ……ッ!!」

奏多は己の魂を燃やすように激しい気合を入れた。彼の内に眠る黄金のマナが爆発的に膨れ上がる。

バチンッ!!!!

激しいガラスの割れるような音とともに、奏多を縛っていた見えない拘束が力ずくで粉砕された。

「よし……っ! 甲斐も……いくぞ!」

奏多が息を荒くしながら叫ぶ。

「あ……ああ……っ!」

広臣もまた、親友の執念に突き動かされるように、身体中から血を噴き出させながら動かない四肢を無理やり駆動させた。勇者の意地が、カオスの呪縛を拒絶する。

「うおおおおお……おおおおおッ!!!!」

バチンッ!!!!

同じように空間を引きちぎるような音が響き、広臣もまた全身の拘束を力ずくで解き放った。

「いくぞ……っ!!」

血を拭い、二人はアリスの元へと向かって、世界樹の闇の中を狂ったように駆け下りていった。

同刻――ユグドラシルのふもと

パッ! と、アリスは意識を取り戻し、勢いよく目を開けた。

「はっ……! 私は……」

急激に覚醒した視界を動かし、アリスは周囲の状況を確認する。そこは、アリスティアの住民たちが彼女のために急ぎ設営した、臨時の救護テントの中だった。

身体の痛みは引いている。誰かがずっと、付きっきりで高度な回復魔法をかけてくれていたのだということが、体内に残る温かいマナの残滓で分かった。

「誰かが、私を治してくれたんですね……」

アリスは小さく呟くと、世界樹の上層で戦っているはずの奏多たちの安否を確かめるため、ふらつく足取りで立ち上がり、外へ出ようとした。

しかし、テントの入り口に立った瞬間、アリスの背筋にゾクリとした違和感が走る。

外が、あまりにも静かすぎるのだ。普通なら怪我人の手当てや兵士たちの声で騒がしいはずのテントが、水を打ったように静まり返り、生き物の気配が全くしない。

「……なに? 一体、何が起きているの……?」

不穏な予感に胸を締め付けられながら、アリスは簡易的な布の扉を、そっと左右に開いた。

「……っ! ――あ、ああ……っ!?」

次の瞬間、アリスは凄まじい衝撃に言葉を失い、その場に凍りついた。

テントの周りには、アリスティアの住民たちが、まるでゴミのように雑多に、大量に地面に倒れ伏していた。

「みんな……っ!!」

アリスは悲鳴のような声を上げ、倒れている一人の住民の元へと駆け寄り、その身体を抱き起こした。

「そんな……嘘でしょ……っ! 目を開けて、お願い……!」

しかし、どれだけ揺さぶっても、返事はなかった。

アリスティアの住民たちは、誰も彼もが苦しむ暇すら与えられなかったかのように、魂を抜き取られた抜け殻となって、すでに全員が冷たく死に絶えていたのだ。

「なん……で……どうして、みんなが……っ」

あまりの凄惨な光景に、アリスは絶望の涙を流しながら、恐怖で思わず後退りした。

その時だった。

「ようやく目覚めた?」

不意に、何の気配もなく、すぐ背後から少女のような澄んだ声が響いた。

「えっ――」

アリスは心臓を跳ね上がらせ、弾かれたように後ろを振り向いた。

そこには、見覚えのある黒髪の少女が、死体の山の真ん中で退屈そうに佇んでいた。アリスがよく知る、あの愛らしい精霊王の姿。

「オウちゃん……!」

アリスは思わずその名を叫び、駆け寄ろうとした。

だが――一歩を踏み出す直前、アリスの全身の細胞が、最大級の警鐘を鳴らした。

何かがおかしい。姿形は間違いなくオウなのに、その瞳から放たれているのは、世界を丸ごと飲み込もうとするような、底知れない禍々しい闇の魔力。目の前にいるのは、決して彼女の知る心優しい精霊王ではない。

「……違う。あなた……誰ですか……っ!?」

アリスは恐怖に顔を歪め、杖を構えながら鋭く問いかけた。

オウの姿をしたモノは、口元を裂けんばかりに歪に釣り上げると、楽しそうに笑った。

「僕? ――僕はカオス。魔神王、カオスさ

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