第9話 何でここにいるんですか?
門を潜るとそこに合われたのは、風に波打つ広大な草原だった。
見渡す限り何もない、しいて言うなら遠くの方に森が見える。
車も人も建物もない。気配も感じない。
「すっげ…。ここが、異世界…。」
「フフフ。初めて異界渡りをするとそうなりますよね。」
「阿部さんも?」
「もちろん私も初めて来たときは驚きました、空気は綺麗だし、長閑な雰囲気で私も結構好きですよ?」
そう言って、清は優斗にはにかんだ様に笑いかけてくる。
その顔にドキっとしたが、すぐに元の真面目そうな表情に戻った。
「今回の目的は、皇居に入るためなので、すぐに異界は出ます。」
「あ~、ワープ的な感じで使用した感じかな?」
「はい、理解が早くて助かります。」
少し残念な気持ちを抑え指示に従う。
◇
走ること20分、車は再度停止し、清がまた呪文を唱える。
光る門を潜るとそこには、写真やネットでしか見たことなかった皇居があった。
「さぁ、着きましたよ、車から降りてついてきてください」
「あ、あぁ」
黒沼さんに扉を開けてもらい、車から降ろされる。
彼女は皇居に入りなれているのか、優斗を案内しながら先導していく。
どんどん進んでいき、辿り着いたのは、大きな平屋の家屋だった。
「入ってください」
「わ、分かった」
玄関で靴を脱ぎ、建物内に入った優斗は周りをキョロキョロと見渡す。
まだ、深夜帯なのに人が動き回っていた。
(夜勤なのかは分からないけど、日常的に稼働しているのか)
そこには、多くわないが人が走り回っていた。
普通の夜勤では、こうも走り回るイメージがないので陰陽師はもしかしたら、とてつもなくブラックなのかもしれない。
「いらっしゃいませ。お話は伺っております、禍津様でしょうか?」
「わっ!!」
そんなことを考えていたら、後ろから声を掛けられびっくりしてしまった。
振り返り、声の主を探す。そこにいたのは、和服姿の妙齢の女性だった。
顔は美しく、肌も人形のように白い、そして、あまり生気を感じない瞳。
「只今戻りました、今より御屋形様へお目にかかりに伺いたいのですが、問題ないでしょうか?」
「えぇ、問題ありませんよ。」
「申し訳ありませんが、重要伝達事項が発生した為急ぎご報告に向かわせて頂きます。」
「分かりました。禍津様、また今度お話させてください。」
「えぇ、はい。いつか…。」
目が死んでいるせいかとても怖く、捕食者の圧を感じる。
逃げるように清の後についていき、姿が見えなくなったところで深く息を吐く。
「はぁはぁはぁ、彼女は何なんだ…。」
「彼女は、御屋形様の式神:貴人です。陰陽寮の中でも上位に位置する強さを持っています」
「えっ!人間じゃなかったのか!?」
貴人と言われた彼女は、優斗の目から見ても人間にしか見えなかったのだ。
式神かは分からないが、青龍は人間ではなかったし、
「日中は異界にいるのですが、今日みたいな多忙な日には仕事を手伝って頂いているんですよ、でも、今日は機嫌がよかったようですね、彼女から話しかけるなんてとても珍しいことですよ?」
そんなこと言われたって反応に困る。
いきなり、現れて人間じゃありません?ここは、お化け屋敷か何かなのか?
◇
御屋形様といわれる人の部屋にたどり着き清が声を上げる。
「阿部清帰還いたしました。御屋形様、失礼いたします。」
「入りなさい。」
中の人に通され部屋に入る清と優斗。
中にいたのは、まだ、30代程の男性が座って書類を読んでいた。
「御屋形様、先程ご連絡させて頂きました、悪神に憑りつかれていると思われる禍津氏を連れてまいりました。」
えっ、俺って憑りつかれているの?
初耳なんですが!?
「ご苦労様。清、もう下がっていいよ?」
「…っ、しかし、御屋形様の身に何かあっては…。」
「ここに僕より強い人なんていないよ?」
「…。何かあったら声をお掛けください、扉の前に待機させて頂きます。」
そう言って、彼女は優斗を一瞥し退室していった。
そこまで信用されていないのだろうか。道中で少し仲良くなれたと思っていたのに…。
「ごめんね、なんか。」
「い、いえ。」
「彼女は明と違ってとてもまじめな子だからさ。」
「明?」
「あぁ、彼女の双子の妹だよ」
清には妹がいたのか。まだ、会ったばかりだけど、まだまだ知らないことが多いな。
考え込んでいると、目の前の男性がわざとらしく咳払いをする。
「こほん。僕は、現陰陽寮当主、六道隼人だよ。早速本題に入らせて頂くね。君は禍津日神に憑りつかれているのかい?やり取りはできているのかい?」
「え、いや。今日初めて彼女と話をしまして。詳しいことは私の方でも、あまり…。」
―わっぱ、妾の方から話をしてやろう
また、力をかりるぞ
「えっ!」
「????」
皇居敷地内に入ってから、気配を完全に消していた彼女が突然話し出す。
そして、また、急激に何かを吸われる感覚。今度は立っているのが、辛いくらい吸われている。今度は、急急如律行って言う必要ないの!?
「ふむ、顕現出来たな。そして、そちが今代の陰陽師当主か、まぁまぁな強さじゃの。」
「これはこれは、禍津日神の瀬織津姫様にそう言われますれば、末代までの誉れでございます」
「そうであろう、そうであろう」
バンっ!!!!!
いきなり、襖が力強く開かれた。
驚きながら、そちらに目を向けて目を見開いた。
「お兄ちゃん!!!!!」
なぜって?そこに妹が息を切らしながら立っているのだから。
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