第8話 魔法って使えないんですか?
異世界を通る。
その言葉だけで今日の不運を帳消しにできる、優斗はそう思った。
優斗は、異世界が好きだった。特に、web小説にあるような主人公が覚醒し無双してヒロインたちとイチャイチャするような話が。
「…異世界のことを知っているんですか?」
「あ、あぁ!勿論だとも!こう見えても俺は異世界のことは結構博識な方だと思う!」
「…。」
清はやや引いた目で優斗を見ていた。
27歳男性が口早に話している。確かに、女子高生位の女の子から見たら気持ち悪いかもしれない。でも、異世界に行ける、それにはそれだけのロマンがある。
「スライム、ゴブリン、エルフにドワーフなんかもいるのかなっ?」
「…いますけど」
「ステータスなんかもあるのかな!?」
「…ないですけど、そもそもステータスってなんですか?」
「えっ?」
気分が急降下した。ステータスがない。…つまり、無双も俺TUEEEEも無い…?
―あぁ、お主の趣味は知っておったが、それは、あくまで創作物じゃな。
この世界の住人にステータスなんてものは、ないじゃろ。普通に。
瀬織津姫が話しかけてきた。さっきまで黙っていたくせに、煽るように、又は、可哀そうな我が子をあやす様に話しかけてきた。大体、普通そうじゃない奴にそんなこと言われたくないよ!
じゃ、じゃあ、魔法もないのか!
「…魔法的なものも無いのかな…?」
「あぁ、魔法は使っている方を見たことはありますね」
「そこは、あるんかいっ!?」
「っひぃ!!」
驚かせてしまったようだ。だが、男にしか分からないロマンがそこにある。そこは、譲れない。絶対に!
「フフフ。分かりますよ、良いですよね、異世界。夢がありそうに思える。」
「えっ?」
話しかけてきたのは、ドライバーの黒服の人だった。
強面で体も筋肉質でちょっと怖かったが、その声は優しくこちらの話に理解があるようだった。
「あぁ、私は、旧中務省現宮内庁陰陽寮所属3級陰陽師の黒沼と申します。」
「っんっん~!失礼しました、俺は禍津です。」
「魔法は憧れますよね」
「えぇ、そうなんですよ!エルフに魔法!とても男のロマンがあると思ます!」
「最近私も異世界のことを知ったのですが、思ったのと違って驚きましたよ」
「思ったのと違う?」
「えぇ、まず、こちらの世界とあちらの世界…、ファフナーリアと言いますが、理が違うようでして、あっちの生物とこちら地球の生物は似てはいますが、根本が違うようです」
「????」
―お主には、理解できぬようじゃな…。まったく…、妾が説明してやろう。
まず、魔法はその世界にある空気中にある、魔素エネルギーを体内に取り込みあちらの神を通して行使を行う。
じゃから、地球の人間には、魔素を取り込む器官もなければ、神の形態も違うので魔法が使えんのじゃよ。
そんなばかなっ…。夢もへったくりもないじゃないか。そもそもしようできないんじゃ話にならない。優斗は、自分の夢を否定された気持ちになり、表情が暗くなった。
―…。じゃが、お主がどうしても使いたいって言うならば、使えるようにしてやらんでもない。
「マジですかっ!」
「っ!どうしたんですか?大丈夫ですか?」
「…また、例の彼女が話しかけてきたんですか?」
「えぇ!どうやら、魔法を使えるようにしてくれるそうで、お願いしてみよう思っていたところです!」
「こう言っては、何ですが、あまり彼女を信用しない方がいいと思いますよ?」
「え?な、何でですか?」
「だって、彼女自分で言っていたじゃないですか。禍津日神だと」
禍津日神だと何か問題があるのだろうか?自分は、そんなに信仰深い訳でもないのでそれが何なのかよく理解できていない。
「いいですか?禍津日神は厄災と禍事を司る悪神なんですよ?」
「悪神だと何か問題があるんですか?」
「…。悪神は人間に災い、疫病、戦乱などの害をもたらす神や悪霊の総称です。しかも、彼女はそれを自称していたんです。」
「別に、現代ではまだ何もしていないじゃないか?」
「…。」
怒らせてしまったかな。無知過ぎて無神経だったのかもしれない。
それでも、俺は魔法を使ってみたい。
「あのぉ、私も魔法を使えるようになるのでしょうか?」
「黒沼っ!」
「すみません、何でもありません!」
分かる分かりますよ。使いたいですよね、魔法。
黒沼さんは怒られて黙り込んでしまったが、その気持ちは痛いほど分かる。
「とりあえず!異界の門を潜りますよ!」
『…急急如律令…開け異界の門!降臨!』
彼女が呪文を唱えるとそこに現れたのは、光の扉だった。
「さぁ、行きますよ。本当にもう時間がありませんから!」
「はぃ~!」
やはり、何歳になっても異世界、魔法、エルフ、魔物って聞くとわくわくしますよね。
どうやら俺は魔法が使えるようになるようです。(条件があるようですが)
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