第10話 今からでも陰陽師になれますか?
「お兄ちゃん!!!!!」
妹の紬が息を切らしながら、部屋の襖を開いた。
何でここに、紬が?しかも、白装束?巫女さん服?を着込んでいた。
「おや?彼は、巫女様のご親族でしたか。」
「うぬは、知っていたのであろう?」
「いえ、なんのことだか私には分かりませんね?」
瀬織津姫と六道が含みの言葉でお互いを牽制しあっていた。
巫女様?何を言っているんだ?紬は、普通に高校に通う俺の妹のはずだ。
「何も知らん、わっぱの為に説明してやろうか」
「いえ、その話は私の方からさせて頂きます、…禍津日神様」
瀬織津姫の言葉を遮ったのは、優斗の母である恵であった。
そりゃあ、紬がいれば母さんもいるか…。
「母さん…、これは一体…?」
「優斗…。今まで何も言ってあげられなくてごめんなさい。」
「母さんは、何か知っていたの?」
「えぇ、ここにまで来てしまったのならば、もう隠す必要もないでしょう…。」
「…。分かったよ。とりあえず、話を聞かせてくれ。」
◇
母の話ではこうだった。
歴代の禍津一族は、瀬織津姫の封印を守り管理を行ってきた一族なんだとか。
妹の紬は、神を鎮めるため巫女見習い、父は出張が多いなぁって思っていたけど、2級陰陽師だった。唯一、母だけが一般人だった。
今までは、封印が溶けてしまう恐れがあるため、霊的存在に近づけさせないために秘密にしていたとの事。
俺の中に瀬織津姫がいる理由は、原因不明だが27年前に瀬織津姫の封印が綻んでしまって、当時唯一適正値が高く、産まれたばかりで身の汚れが無かった俺が選ばれたそうだ。
なぜ、討伐ではなく封印なのかというと、瀬織津姫は、災厄と禍事を司る神だが、それと同時に穢れを正す、正確に言うならば世に薄く広めて自浄させる神であるとの事。討伐してしまうと世界の穢れが自浄できなくなってしまうとの事。
そして、病院で恵と紬が驚いていた、この刀のキーホルダーだが、六道も確認を行ったところ安部一族が管理していた伊弉諾尊って言う神様の使用していた刀、十拳剣と呼ばれるものらしい。
なぜこの刀で瀬織津姫が力を取り戻し顕現出来たのか?は推測にはなるが、元々瀬織津姫は、伊弉諾尊が天の川に流した穢れを天の海へ薄めて流していたとのこと。
その関係から、伊弉諾尊の刀から伊弉諾尊の神力と俺の身体エネルギーで顕現したと考えられる。
そして、一番重要なことだが、なぜ今になって瀬織津姫が目覚めたのか。
これも推測にはなるが、感情の浮き沈みによって封印が緩んでしまったのではないか?との事だった。更に、ここで追い打ち、緩んだ封印に強い霊力が触れてしまい完全に解除されてしまった。
……。
27歳にして主任に昇格……。会社をクビになってしまった……。
これかっ!!!!!!原因はっ!!!!!!
◇
「……。」
あらかたの説明を聞かされた優斗は黙るしかなかった。
母は申し訳なさそうに、妹の紬は、涙目でこちらを見つめていた。
そして、当人?当神は寝ていた。お前の話をしてんだろ、寝るなよ…。
「とりあえずは、分かったよ。母さん」
「優斗…!」
「お兄ちゃん…!」
秘密にされていたことは、とても悲しいけど、俺のことを思っての秘密だったことが何よりも嬉しかった。
「うんうん、家族愛を再確認したところで僕の方から一つ提案があるんだけど聞いてみない?」
う、胡散臭い。
「そうかな?僕としては、君のことを思って提案させてもらおうと思ったんだけど?」
「声に出てた!?す、すみません!」
「いいよいいよ~、で提案なんだけど、禍津君きみさ、陰陽師になってみない?」
「えっ?」
俺が陰陽師?今まで関わらずに生きてきた俺が陰陽師になれるのか?
いきなりの提案でどうしたものかと優斗は、恵と紬を見た。
母の恵も優斗と同じく驚き心配そうにこちらを見ている。紬も驚いているが、嬉しそうにこっちを見ている。
「…あの、自分27歳なんですけど、今までスピリチュアル系というか、そういった裏稼業はしたことが無いっていうか…。」
「大丈夫だよ!補助に清を付けるし!」
「えっ!」
バンっ!
「御屋形様っ!」
立ち聞きしていたのかよ…。
「御屋形様!私が禍津さんの補助とはどういうことですか!?」
「だって彼、このまま放置するわけにもいかないでしょ?こんな不安定な状態で放置とか清は鬼畜なんだね~、これは、君のキャリア的にも大きく評価されるよ?」
「…!」
睨まれましても…。いや、途中から、にやけ出したぞ…。思いのほか現金なやつなのかもしれない。
「承知いたしました。拝命いたします…。」
「彼女は、とても優秀だから分からないことがあれば、何でも聞くといいよ~」
「分かりました…。」
「あっ、それと外だと危ないかもしれないから、今日からここで寝泊まりしてね!」
「えっ?」
「あと、陰陽師になるための手続きとして、明日天皇陛下に挨拶を行って貰います、そしたら君は晴れて陰陽師見習いだね!」
俺が皇居敷地内に寝泊まりしていいの⁉天皇陛下に挨拶っ⁉
拝啓
明日から陰陽師見習いになるようです。
これにて、第1章は完結です。
これより閑話を挟んで、第2章:見習い陰陽師でも助けていいですか?が始まります。
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