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第24話「断ります」

お読みいただきありがとうございます。早川との話を終えた帰り道、黒い車が路肩に停まっていました。降りてきた男は「研究への協力をお願いしたい」と言います。護衛が一歩前に出た瞬間、蓮は手を伸ばします。地面が、男の靴底の一センチ先で焦げました。「断ります」——名刺を返して、蓮は歩き続けます。

覚醒から四十七日目だった。


 施設での早川との話を終えて、外に出た。凛と二人で、施設の最寄り駅まで歩いた。報告書の内容がまだ頭の中にあった。ダンジョンが生命体の器官。測定不能スキルが同調能力の表れ。根源が取り込もうとする反応。それが今日理解したことだった。


 曲がり角を過ぎたところで、凛が小さく「蓮さん」と言った。


 前に車が止まっていた。


---


 黒い車だった。エンジンがかかったまま路肩に停まっていた。後部ドアが開いた。男が一人降りてきた。四十代に見えた。スーツを着ていたが、動き方が事務職ではなかった。探索者の体の使い方だった。


 後ろからもう一人降りてきた。こちらは背が高く、体が大きかった。前の男と並んで、二人が道を塞いだ。


「柏木蓮さんですか」


「そうです」


「少しお時間をいただけますか。車の中でお話ししたいことがあります」


「話を聞く前に確認させてください。どういった方々ですか」


 男が名刺を一枚取り出した。差し出した。受け取って読んだ。


 組織名はなかった。名前と連絡先だけが書いてあった。


「組織名がないですね」


「公開している組織ではありませんので」と男は言った。「ただ、あなたの研究にとって非常に重要な情報をお持ちしています。同調能力の制御について、私どもの方が——」


---


 後ろにいた背の高い男が、一歩前に出た。


 蓮の方向に向いた。特に言葉はなかった。ただ前に出た。それだけだった。


 蓮は男を見た。凛が少し後ろに下がったのがわかった。男がもう一歩前に出ようとした。


 蓮は手を伸ばした。


 地面が焦げた。男の足元の、一センチほど先だった。男が止まった。靴底の焦げた匂いがした。


「動かない方がいいです」と蓮は言った。「次は場所が違います」


 男が固まった。動かなかった。


 名刺を持っていた方の男が「……あの」と言った。声が少し変わっていた。


「名刺をお返しします」と蓮は言って、男に名刺を戻した。「研究への協力は断ります」


「……理由を聞かせていただけますか」


「あなた方の目的が何であれ、研究対象として協力する気がありません。それが理由です。それ以外の理由はないです」


---


 男が少し間を置いた。名刺を受け取った。


「……一度だけ話を聞いてもらうことも、難しいですか」


「話を聞く場を設けるかどうかは、こちらが決めます。今日は聞きません。今後について約束もしません」


 男が凛を見た。凛は何も言わなかった。男は視線を戻した。


「わかりました」と男は言った。「ただ、次の大規模異常は遠くありません。その時にまた考えていただけると——」


「その時も断ります」と蓮は言った。


 男が少し頷いた。背の高い男に目で合図した。二人が車に戻った。ドアが閉まった。エンジン音が遠ざかった。


---


 凛が蓮の隣に来た。


「大丈夫ですか」


「はい」


「あの人たちは」


「アルケミアだと思います。御堂さんが言っていた組織です。測定不能スキルの研究目的の私設機関」


 凛が少し考えた。「それで名刺に組織名がなかった」


「はい。ただ、動き方は想定の範囲内でした」


「護衛の人を、脅しましたね」


「一センチ先を焦がしただけです」


「それを脅しと言います」


 蓮は少し考えた。「そうですね。ただ、前に出てくる気をなくす必要がありました」


 凛が少し息を吐いた。「そうですね」


---


 御堂に連絡した。今あったことを話した。御堂は少し黙ってから「わかりました」と言った。「アルケミアが直接来た、ということですか」


「名刺に組織名はありませんでした。ただ、そう判断しています」


「先手を取られました。こちらの監視に気づく前に接触してきた。昨夜から動いていたのかもしれません」


「今後どうすればいいですか」


「今夜、移動してください」と御堂は言った。


---


 アパートに戻って、荷物を確認した。着替えを三日分。充電器。財布と鍵。そして手帳。それだけだった。


 凛に電話した。


「今夜、動く必要があります。御堂さんの施設に移ります。凛さんにも来てほしいです」


「わかりました。荷物を用意します。何を持っていけばいいですか」


「最小限でいいです。手帳は持ってきてください」


 少し間があった。


「あなたが言うんですね」と凛は言った。少し笑っているような声だった。「わかりました。夜に合流します」


 電話を切った。手帳を持てと言ったのは御堂だった。そして今、蓮も凛に同じことを言った。師匠の頼みが、また一段先に渡っていた。

次話:第25話「凛に、話した」

機密内容を凛に話します。そして御堂から、アパートが監視されているという連絡が入ります。今夜、動く——続きが気になった方は、ぜひブックマークや【☆☆☆☆☆】評価で応援いただけると嬉しいです!


新作も並行連載開始しました!是非のぞいてみてください!


タイトル:AIでよくね?と思って会社を辞めたら死に損ない扱いされ、女神に罵倒されながら「満足」するまで何度も転生させられる件

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