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巫女さんメモリーズ  作者: 華永夢倶楽部
第37話〜第48話
44/85

第40話『来宮は一人でも通常運転なのか』

 「それじゃあ、留守番頼むよ」

 「いや待て、待ってくれ!」

しかし、母親は来宮(きのみや)の呼びかけに反応せずに買い物に行ってしまった。

 「…くっ」

来宮は家で一人お留守番する事になってしまった様だ。

 「…孤独な時間、だな」

玄関で倒れ込みゴロゴロ転がるが、体のあちこちが痛くなった。

 「やめよう。自分から怪我するのはいけないからな」

リビングに戻って、ソファーにポスンと座って横になった。

 「囚われの身ならばヒーローが助けに来るんだが… 場所からして、来るわけではなさそうだ」

分かってはいるが、本当に誰もいないのかどうか確かめたくなる。

大声で叫んで誰かいないか本当に確かめたり、部屋中を覗いて楽しんだりした。

そして一人を悲しんだ。

ソファーに座り込み、物鬱気な目で窓から見える風景をただ見つめて、

 「……一人は、嫌だな」

嫌な事をかすかに思い出したが、すぐに忘れようと頑張った。

冷蔵庫の中を覗いてみると、かろうじて昼食が出来そうな感じのおかずと、来宮の大好きなメロンソーダが入っていた。

 「うん、美味しいな」

いつも飲んでるから特に感動した訳ではないが、美味なのは変わらなかった。

やっぱりメロンソーダが好きだ。

 「まずは一人の時間を楽しむ事、それがまず最初にすべき事だ。孤独は心をエグる遅効性(ちこうせい)の精神攻撃だからな」

二階に上がって自分の部屋に入り、学校から出された宿題に取り組む。

一秒も迷う事なく、出された問題を軽々と解いていく。

 「うむ、これでよしと」

十分程で全て終わらせた。時間割を済ませ、制服の汚れを楽しそうに取り除いても、時間は沢山あった。

 「…………」

階段を下りながら、来宮はふと前に母親が家にいなかった頃を思い出す…

 「あの頃は辛かったなぁ…… 異常に大変な目に遭って、そこから逃げる為に助けを呼んでも誰も来なかった、あの日々は」

あの出来事を乗り越え、今では何不自由なく過ごしているが…

いつしか、一人でいる事が苦手になってしまった。

 「…が!!」

そんな説明は過去を元に記載した語り文を否定しだした来宮。

 「私は来宮(きのみや) めぐみ!! 闇の過去があってこそ、光輝く未来を作る事が出来る!!」

一人なのを活かして、家中に響く演説主張を始めた。

 「人は言う! 『未来は作るのではない。生み出すモノだ』と! では、未来を作るには何が必要なのか!? その答えは『過去』!! 事実無しで架空を生み出す事は不可能である!!」

階段の五段目で長々と語るが、誰も聞いていないのは言うまでもない。

 「陰鬱(いんうつ)かつ凄惨(せいさん)な過去を抱えた者は、必ず見返りとして幸福で最高の未来が待っているのだ!!」

数秒の沈黙。

 「……とは言ったものの、やはり一人に恐怖を覚える私がいるな」

一人でいると、自由になるが何をしようか迷ってしまう。娯楽用品はあるが、ほとんどが対戦用の物。

来宮の母が子供の頃よく遊んでいたらしい、どう見ても古そうなテレビゲーム機があるが、本格的なパズルやアクションがいくつかある。

正直、初心者の来宮には一面クリアすら無理だろう。

 「そうだな… とりあえず洗濯をしよう」

自分の服を洗濯機に入れ、開始ボタンを押した。

 『じーーーーっ…』

何分か見つめる。

 「おっと、また奴の姿に魅了されてしまった…」

急いで洗濯機から離れて、今度は掃除機を手にした。

部屋だけでなく、家中のゴミを吸い取って綺麗(きれい)にした。


おやつタイム。

メロンソーダを一本。

 「美味しい……」


まだ夕方前だが、お風呂に入る事にした。

浴室の電気を付けず、窓から入ってくる微かな日光で浴室を照らして入るお風呂は、まるで夕方に入る銭湯の感覚に近く感じる。

 「なかなか良いな。明るい内のお風呂というのも」

深く息を吸って、大きく吐く。

心身共にリラックスしている。

 「気持ち良い……」

目を閉じて湯船の温かみを感じる…

深く。

深く。

 「…………っ!!」

顔が湯船に沈みかけて、来宮は浴室で(おぼ)れそうになった。


 「はぁ〜…… 助かった……」

脱衣場で濡れた髪をバスタオルで拭き、次に体を拭いていく。

少しお湯を飲んだかもしれない。喉奥が少し変な感じなのは、そのせいかもしれない。

 「やはり、どんな時も常に考える事で危機は乗り越えられるな…」

その時。

電話の呼び出し音が鳴り出した。

何回もコールして、誰かを待ってる様にも感じる…

 “電話に出たいんだが… まだ裸だからなぁ〜……”

不意に人がいる事もあるから、不用意に電話に出る訳にはいかない。

 “すまん、許せ……!”

しばらく鳴り続けて、音は止んだ。来宮は落ち着いて下着を穿いて、服を着た。

 「今のは一体誰からのだったのだろう……」

着信経歴があればこっちからかけられるが、家電話なのでこっちからはかけられない。

ここで来宮の推理が始まる…

 「まだ学校から帰って二時間も経ってない。もし私の事を知ってて、その私に用があって電話をかけに来る人となると……」

空のペットボトルを頭に乗せヨガっぽいポーズをとるが、すぐに落とす。

ペットボトルを拾い、ゴミ箱に入れてソファーに座り込む。

 「誰だ?」

分からなかった。

 「私に電話をかける人なんて、果たしてこの世に存在するのだろうか…?」

色々と考えてみたが、すぐには思い付かない。

 「(しゅう)…」

その時、今度は玄関のインターホンが鳴り出した。

来宮は瞬時に警戒態勢に入り、玄関前で構えた。

 “今度は直々にお出ましか… やる時が来た様だな”

念の為、玄関に鍵をかけて簡単に開けられない様にしてやった。

相手も焦っているのか、ガチャガチャさせて無理矢理開けようとしている。

 「バカめ、そんな事で開けられると思うとでも思ったのか!!」

玄関の扉をドンドン叩いて、誰かを呼ぶ声が聞こえる。

 『おい! 開けろよ!』

男の声だ。

若いぞ。

 「騙されぬぞ!! 貴様は偽者なのだろう!! 名を名乗れ!!」

 『俺だよ! 秀だよ!』

言い方に何処かボケを感じるが、来宮には伝わらない。

 「そうか、ではお帰り頂こう」

 『いや本者だって! あそうだ、今ここでお前のセリフを言ってやろうか?』

しばらくして、向こうの男が叫んだ。

 『丑三(うしみ)(どき)に集う悪霊達に告ぐ。ここにある結界はお前達の––––』

 「うわぁぁぁぁ!! もういい!! お前は秀だ、入れ!」

玄関の扉を開けて相手を確認すると、秀が立ってた。

 「や、やぁ秀… どうした?」

来宮はオドオドしながら質問する。秀は来宮の肩を掴んで、

 「お前、一人で大丈夫か?」

秀が積極的に来る。来宮はいつもよりグイグイ来る秀に驚きながら、

 「ま、まぁ… 大丈夫だが?」

 「そうか、なら良かった」

秀は手を振ってから帰った。

 「あぁ…」

帰ってしまった。

来宮は玄関前で立ち尽くしている。

 「また一人だ……」

その場で座り込んだ。

来宮「……」


来宮「秀、また来てくれ……」

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