表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
巫女さんメモリーズ  作者: 華永夢倶楽部
第37話〜第48話
43/85

第39.5話『我が思いを込めて羽ばたけ! 黒鉱石!!』

※今回は不定期掲載の『.5話』回です

 「(しゅう)! 少し良いだろうか?」

秀の机の前に立ち、堂々と立つのは来宮(きのみや)

 「あ、あのな……」

突然モジモジしだし、

 「い、いや〜… 今日は何も起こりそうにないな〜……」

秀の返事を聞く前に走り去って行った。

廊下を走り、人気のない階段裏で…

 「やってしまったぁ……」


来宮は他の教室を覗き、他の女子が好きな人にチョコを一人で渡す一部始終を見て、少しうつむいた。

 “…他の人達は、皆当たり前の様にチョコを渡しているな… だが、一方で私は……”

右手に持つ小箱を軽く握る。

 “……勇気を出して、秀に感謝の気持ちを込めないとな”

ずいぶん前に来宮は秀に思いを伝えている。しかし、その後で贈り物を渡した事はない。

バレンタインは、秀に思いが込められた物を渡すには絶好のチャンスだ。

 「…よし!」

もう一度秀の前に近付き、秀が気付いてくれるのをただ待った。

 “秀…”

落とさない様に持って、ずっと待って……

 『キーンカーンカーンコーン……』

 「うわっ! 時間か!!」

来宮は慌てて自分の教室へ戻って行く。その様子を秀は一瞬だけ見ていた。


 「ううっ、学校で渡せなかった…」

とうとう家に帰ってしまった。部屋の机に突っ伏して、自分の意気地なさに嫌気がさした。

 「勇気とは、こんなにもあっけなく折れるのか…」

ふと来宮は、「考え方を変えてみる事で渡せるのでは?」と閃いた。

 「そうか… “決意”だ」

決意。

赤きソウル。

 「決意なら、勇気よりも固い精神で満たされるかも知れんな…」


*来宮は 秀にチョコを渡す “決意”をした。


 「……よし、行こう!!」

スクッと立ち上がり、階段を下りてリビングに入った。

 「あら、どうしたの? 急に下りて来て…」

 「あぁ、これから秀と公園で遊ぼうと思ってな」

 「もしかしてチョコ? チョコなの?」

来宮の頬がかすかに赤くなったかもしれない。

 「なっ、何を言うんだ! さっき公園で遊ぶと言ったではないか!」

 「この日で男の子と二人きりなんて、チョコ目的しか思い付かないけど〜?」

 「ぐぬぬ〜……」

おっしゃる通りです。

来宮は何も言い返さず、受話器を手に取った。

 「……積極的ね」

来宮の母親は、超がつく程の小声で呟いた。

狙い通り、来宮の耳には届かなかった。

 「やぁ秀、学校で来宮二号が迷惑をかけて済まなかった」

 『お前はいつから多重人格者になったんだよ…』

 「実はさ秀…」

急に来宮が喋り方を元に戻した。

 「その… 学校での事は悪かった。言いたい事をしっかりまとめたから、これから近くの公園に来てくれないか? 私と秀、そして今日は二月一四日だ。大方の察しはつくだろう?」

秀はおそらくカレンダーを見たのか、一瞬だけ静かになった。

 『分かった。公園で待ってるぞ、来宮』

母親の目には、秀と電話を通じて会話が出来てとても嬉しそうな来宮が写っている。

 「来宮も『女』になったんだねぇ……」

来宮の母親は、桃を一気に真っ二つに切り、食べられない部分を取り除いてお皿に盛り付けた。

 「じゃあ、すぐに行く」

受話器を置いて、部屋に上がろうとした来宮を呼び止めた。

 「桃、食べてく?」

来宮は食卓につき、

 「食べる」

桃を手に取り、一口噛りついていく。


小箱を持って公園に行くと、秀がベンチに座って待っていた。

座り方は…

狙ってやってる可能性が…

 「誰の座り方なんだ? あれは…」

まぁ、来宮には全く伝わらなかった。

 「秀」

秀の前に立つ。

 「おぉ、来宮。外で会うのは久々だな」

 「ふふっ、そうだな。前に会ったのはいつだったかな…」

 「三週間前だ」

 「そうか、もうそんなに経つのか…」

来宮は秀のすぐそばに座り、太ももに小箱を乗せる。

秀も何となく、中身が分かってしまったが何も言わない。

 「あのさ秀。私、昨日徹夜して作ったんだ。これを…」

小箱を秀に差し出す。

来宮は決意を込めて、秀に思いを伝えた。

 「ほ… 本命、だ……」

来宮に開けていいかどうか聞いてから、リボンを解いた。

中身はクッキー四枚。

 「いっ、いぃ〜…… 一緒に食べよう……っ!」

来宮はすっかり赤くなってしまった。

秀が褒めながら来宮の頭をポンポンしてくる。

来宮は何だか幸せな気持ちで満たされるのを感じた。

 「じゃあ、食べようか」

二人でクッキーをつまみ、お互いの顔を見合ったまま口に入れる。

美味しい。

秀が来宮に「美味しい」と言ってくれた。

来宮はいつもとは違う笑顔で返した。

お互いに最後のクッキーをつまみ、寄り添う様に座り直してから口に入れた。

相手の顔を見ながらクッキーを美味しく味わい、笑顔になる。


 「美味しいな、秀」

明「文音にチョコあげるー」

文音「え、くれるの?」

明「うん! 文音は『大切な人』だからね!」

文音「ありがとう…」

明「あれ? 文音泣いてる?」

文音「涙目だけど、泣いてはないよ……」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ