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巫女さんメモリーズ  作者: 華永夢倶楽部
第25話〜第36話
37/85

第34話『巫女は年初めを告げる』

 『新年明けましておめでとうございます』

小夜(さよ)美紀(みき)に、(あきら)文音(あやね)の二人だけでなく、来宮(きのみや)も新年の挨拶を神社の本殿で行った。

小夜は、

 「今年も」

美紀は、

 「よろしく」

明は、

 「お願い」

文音は、

 「いたしま」

来宮は、

 「す」

しかし、誰も笑わない…

これが小夜達で考えたそれぞれのセリフだからだ。

しかし、このやり方を提案したのは美紀。

美紀は自分で提案しておいて、口を挟んだ。

 「やっぱり、『す』はないよね」

 「でしょうね…」

文音は「やりきった」と言わんばかりの来宮を見ながら、美紀のやりたかった事を事前に止めた。

これ以上、前置きを長くしたくないから。


 「ねぇねぇ! 折角だし皆でかるたをしようよ!」

美紀がかるたを取りに行こうとしたら、小夜が美紀の手を掴んだ。

 「かるたなら、私の祖父が作ったかるたがあるよ。普通のかるたじゃないから、やり込んだかるたよりも盛り上がるよ」

小夜が取り出したかるたは手作り感が味を出していて、とてもかるたとは思えない時程に立派なかるただった。

それを見て来宮は一枚手に取った。

 「何と厚みがある紙なんだ… これはまさか、手作りなのか?」

 「そうですよ。よくお分かりになりましたね」

そして来宮はポーズをとって、

 「当たり前だ… 我には手に取った物の魂が見えるからな…」

 「えっ、あなたも『見える』んですか!?」

小夜が来宮に喰いついた。

美紀や文音は笑いを必死で堪えて、小夜と来宮のトークを眺める事にした。

 「当たり前だ… 我は人間とは別格の存在。お前達とは生きてきた世界が違うのだ…」

 「あっ、私も生きてきた世界が違うんですよ! あの、あなたはどの様な能力を…!」

美紀はもう、小夜に対して何も言えなかった。


美紀がかるたを床一面に広げて、読み札をシャッフルして一枚目を引いて準備した。

小夜はまだ来宮と楽しくお話を盛り上げている。

美紀は先ほどの小夜のテンションを思い出して、また笑いを込み上げてしまった。

 「小夜ちゃんって、厨二病耐性が無いんだね〜」

 「ちょっと… 言わないであげてよ…」

と言っている文音も、ほっぺが少し膨らんでいる。

文音は小夜の事をほとんど知らないが、来宮の痛い発言を真に受けて楽しく会話するという噛み合っている様で噛み合っていない会話を見て、つい笑いが出てしまう…

 「まぁたとえ、本物の巫女だとしても周りからしたら『厨二病』になっちゃうけどね…」

 「深いね…」

能力者の苦悩は、もしかしたら科学が発展した事による先入観や視点の変化なのかもしれない。

美紀はそれらを一言で文音にさり気なく伝えた。

 「お待たせ。ごめんね美紀、待たせちゃって…」

 「いっ、いや… 大丈夫だよ…」

美紀は小夜の顔を見ただけで思い出し笑いをしてしまう。

それは、文音も一緒だった。

 「こちらは準備が… でっ、出来ましたよ…」

 「……?」

小夜は、美紀と文音の笑いの意味が全く分からない…

そこへ来宮が、

 「待たせたなぁ諸君! さぁ、散りばめられた言葉を探して集めようではないか!!」

小夜と美紀と文音は正座し、明は文音にもたれかかる様にかるたをのぞき込み、来宮は座禅(ざぜん)でかるた一点を見つめた。

 「はい、じゃあ始めるよ!」

美紀は読み札を見て、苦い顔になった。

小夜は美紀を見ずに、

 「大丈夫? 読める?」

 「う、うん… 読めるけど…」

読み札の文字は古き良き墨文字で、現代人には読めないが小夜と美紀なら読める。

 「じゃあ、読むよ」

美紀の一声で、小夜達全員が集中し始めた。

 「一枚目… 『いつも散歩をしている彼の後ろに、女の子が付いてきます』」

 「えっ… 何そのかるた!?」

文音は予想外過ぎる内容に一瞬だけ手の動きが固まった。

 「はぃー!」

来宮が札を一枚叩き飛ばし、その札を取った。

 「先は私が頂いた。なかなかの難易度だな」

 「それ、お手つきですよ」

小夜は別の札を手に取り、来宮に見せてあげた。

 「なっ…… では私が取った札は…」

 「それは『池ポチャ』ですよ」

来宮が取った札をよく見ると、何か水溜まりの様な何かに人が落ちている様な絵が描かれていた。

 「分かりにくい!!」

来宮は取った札を投げ飛ばし、それを小夜は皆が取りやすい様に位置調節をした。

美紀は小夜の準備が整ったのを確認して、

 「じゃあ、二枚目いくよー」

二枚目の読み札を読み上げた。

 「今まで黙ってた犬が、突然吠えて驚いた」

文音も来宮も、読み札の内容のおかしさに手が止まった。

 「はい」

小夜だけを除いて。

 「んじゃあ、次行くよー。『どっちが男か分からない せめて文字にしてくれ』」

 「はい」

また小夜が取った。美紀は嫌な予感を感じながら次を読んだ。

 「えっと… 『ここだ。美味しい蕎麦屋は』」

 「あっ、これかな?」

文音の手前にあった札を取って、絵を確認した。

 「水墨画…… しかも芸術的……」

小夜が何も言わないのは、お手つきではない証。美紀はほっとしてすぐに次を読み上げた。

 「読むよー。『月が見えますか? 今は上弦(じょうげん)の月です』」

 “上弦だから… これ!!”

文音と小夜の手が重なった。美紀は目を凝らして審判に入ると、小夜の手が浮いていた。

体を伸ばして取りに来ていたが、ギリギリ届かずに触れられなかった様だ。

 「文音の札だよ。小夜ちゃん、惜しかったね」

小夜は正座の姿勢を正しながら、

 「うん、ちょっと距離があったから差がついちゃったみたい」

 「小夜ちゃんの反射神経には誰も勝てないと思ってたけど、どうやら無理があるみたいだね… え〜っと、次は〜…… 『読み手が口にした数字の順に取ってほしい』」

文音と小夜と来宮が黙り込み、美紀の声に全神経を集中した。

 「三…」

一斉に手が「三」と書かれた札に伸び、軽い取り合いが始まった。

しかし、数字は「五」まである。

美紀の好きなタイミングで数字を読み上げる事を考え、小夜と文音は手を引いた。

来宮が札を整理してる最中に、

 「イチ!」

 「なっ…!」

来宮は手を伸ばす余裕はなく、文音と小夜の一騎討ちが始まった。

 「おー、今度は小夜ちゃんだね」

小夜がよそ見した一瞬を狙って美紀は、

 「五」

ボソッと言うと、すぐに手が伸びた。

 「二人の手だから… 文音と来宮(くるみや)かな?」

 「それは私だよ」

 「えっ…?」

小夜の左手が札を押さえていた。一方の右手は、札を整理していた。

美紀の行動が読まれていた。

 「……二と四」

もう美紀は淡々と読み上げて次に入った。


 「これで最後にしよう。札がまだ五十枚もあるから、読み終わった頃には昼になるからね… 最後いくよー! 『この札は、下の名前が漢字一文字の人しか取れない』」

 「えっ、それって…」

文音は、ずっと肩に乗ってる女の子の手を優しく掴んで、札にタッチさせた。

 「取れたー。文音ー、ボク取ったよー」

 「()専用の札だ……」

思わぬ挑戦者が現れた。

次回掲載日  2020年1月12日 午後10時

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