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巫女さんメモリーズ  作者: 華永夢倶楽部
第25話〜第36話
36/85

第33話『巫女さんは年終わりを告げる』

冬休みの宿題を解きながら、外の景色を見て黄昏(たそがれ)ている美紀(みき)

今年一年を振り返って、宿題の問題を一つ解いた。

 「もうすぐ… 今年が終わってしまう…」

美紀はこたつに少し深く身体を忍ばせて、ぐったりした。

美紀の向かいで小夜(さよ)は黙々とみかんの皮をむいて、むき終わったみかんを一つずつちぎって口に入れた。

 「ねぇ小夜ちゃん、みかんちょうだ〜い…」

小夜はみかんを食べながらみかんを美紀に手渡した。

 「ありがと〜」

美紀はゆっくり起きてみかんの皮を剥き始めた。

 「ずっと勉強してて疲れたんだよ… 少し休憩させて…」

皮が剥き終わって、そのまま口に入れた。

小夜は特に驚かず、また別のみかんに手を伸ばした。

 「いやぁ〜、もう半分程終わったから気が楽になってきたよ!」

小夜は剥き終わったみかんの房を一つ取って口に入れた。

 「よしっ! 頑張って宿題を終わらせるぞ〜…」

美紀はほっぺを軽く抑えて、

 「ん〜」

気合を入れた。

 「よ〜し、がんばるぞい!」

すると小夜は空気を読んで、こたつから出て美紀一人にしてくれた。

美紀はまだ気付かず、黙々と宿題を進めていく…

 「ふぅ〜、これで国語は終わりっと…… ねぇ小夜ちゃ––––」

部屋を見渡して、ようやく一人になっている事に気付いた。

 「一人にしないでよ!!」


もうすぐ大晦日が終わって、二〇二〇年に入る。美紀は二〇一九年との永遠の別れをしようとしている。

 「今年があと四時間で終わり… 楽しかったねぇ〜」

 「そうだね。美紀は高校に上がってからは色んな事をして楽しんだよね」

アルバムを作ってない二人は、思い出しながら過去を振り返った。

 「(あきら)と一緒に文音(あやね)をからかったり〜、イジったり〜、操縦したりしたね〜」

 「操縦って、どういう事?」

 「操縦っていうのはね…」

美紀は小夜の肩に乗って、落ちない様にしっかり足を固定させた。

 「肩車して、文音のツインテで操縦するんだよ」

小夜の髪を優しく掴んで、発進させた。

小夜はすぐに動き出し、美紀の指示通りに動いてくれた。

 「あぁ… 小夜ちゃんが楽しそう…」

 「楽しいけど、なんか幼稚じゃない?」

 「大丈夫だよ! 明がこの遊びを気に入ってくれたから!」

 「多分それは、美紀の所為だと思うんだけど……」


二〇二〇年になるまでもうすぐになってきて、数人の参拝者が健康御守りを頂きに訪れる様子を美紀は受付から見ている。

美紀の担当は参拝者が御守りを(さず)かりに訪れたり、絵馬を奉納(ほうのう)する為に訪れる参拝者の対応。

 「んーっ…」

まずは人目につかない様、手鏡で笑顔を作れているかどうか確かめる。

次に髪。

服装。

精神。

美紀の全てが綺麗になっていないる事を確認したら、後は受付で常に笑顔を見せる。

 「こちら運気上昇の御守り二体になります。初穂料(はつほりょう)は二千円です」

参拝客に運気上昇の御守りを授け、腰から深く真っ直ぐお辞儀をする。

 「ようこそお参り下さいました」

少し遠くにいる小夜は小さな子供達に神社のマナーを簡単に教えていて、一緒に本殿の前で二礼(にれい)二拍手(にはくしゅ)一礼(いちれい)をした。

 “やっぱり年末は忙しいねぇ〜… 明日はこれの何倍も忙しいけど”

小夜と一緒にお参りをした子供達が美紀のもとにやって来て、絵馬を一枚ずつ求めている。

 「待っててね、順番だよ。今、一人ずつ絵馬を授けるからねー」

子供達の初穂料を一人ずつ受け取り、絵馬を授ける。

ようやく渡し終わった時に小夜がボソッと、

 「––––素敵だよ」

小夜は一瞬笑顔を見せて、子供達と一緒に絵馬を奉納しに行った。

美紀は一瞬の出来事に、

 “…………”

リアクションが全く取れなかった。


 「美紀、私と代わる?」

 「大丈夫だよ。夜中まで起きていられるから、小夜ちゃんは本殿をお願いするよ」

 「分かった。何かあったら伝えてね」

 「分かった! じゃあ小夜ちゃん!」

 「早速だね。どうしたの?」

 「トイレに行きたいから、ここの対応お願い」

 「…………」


夜中にわざわざ神社を訪れて頂いてくれる参拝者の対応をしながら年明けを待っていると、段々と街の明かりが消え始めた。

もう何時なのか分からないが、とにかく子供が起きてたら親に軽く怒られる時間なのは確かだ。

美紀は数時間前から貼るカイロをあちこちに貼って、夜の寒さを耐えている。

 「…っていうか、小夜ちゃんはカイロなしでピンピンしてるんだけど… どんだけ寒さに強いの…?」

小夜はガスストーブも焚かず、暖かい物すら使用せずに参拝者の対応をしている。

美紀はくしゃみをハンカチで抑えて、役割が終わる時を待った。

正月終わりの時を。

 「あと四日… 先はまだ長い…!!」

気合を入れて、受付を続ける美紀のもとへ小夜がやって来た。

 「美紀、もうすぐ年越しだよ」

 「あっ、もう終わるの?」

小夜が年越し蕎麦(そば)を用意してくれた。

 「もう大丈夫だよ。さぁ、一緒に食べよう」

 「食べる食べるー!」

神社の縁側に二人で座って、箸を片手に持って境内(けいだい)から見える夜の八王子を眺めた。

 『いただきます!』

蕎麦をすくって、フーフーしてから口に入れて味わった。

 「う〜ん、美味しー!」

 「美紀の分は少し冷やしておいたよ」

 「ありがとう小夜ちゃん!」

美紀は勢いよく蕎麦を口に入れて、小夜に向けて「熱くないアピール」をしていたが、突然蒸せた。

 「熱かったの?」

美紀は咳込みながら、

 「つゆが肺に入った…」

呼吸を整えて、深呼吸した。小夜は水を用意しようとしたが、美紀はそれを断った。

 「大丈夫。大丈夫だよ…」

美紀の呼吸が少しずつ落ち着いて、また蕎麦を口にし始めた。

 「小夜ちゃんと一緒に年越しが出来て良かった〜。もしあのまま参拝者がいたら、ここにいる参拝者と一緒に年越しをする事になるからね〜。でも、参拝者と一緒にカウントダウンも面白そうだけどね!」

美紀は残ったつゆを飲み干し、完食した。

 「ごちそうさまでした!」

美紀は皿洗いをしに台所へ向かった。小夜はゆっくり蕎麦を口に入れて、じっくりと味わう。

蕎麦があと一口になった時に美紀が戻って来て、小夜にくっついた。

 「ちょっと、食べづらいんだけど…」

 「小夜ちゃんと一緒が良いんだよ〜。去年は参拝者と一緒の年越しで賑わったからね〜。若者と一緒の年越しだったから、今年は小夜ちゃんと一緒に年越しが出来そうだよ!」

美紀は自分の肩と小夜の肩を合わせて、年越しの瞬間を待った。

 「あと五秒だよ。四、三、二、一……」


 『ハッピーニューイヤー!!』

次回掲載日  2020年1月5日 午後10時


2019年「巫女さんメモリーズ」全36部分掲載

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