第28話『文音をイジるぞー!』
「さぁ! 覚悟は出来たかな!?」
体育着を着た美紀は文音の前に立ちはだかった。
「本当にやるんだね…」
文音は体育着に着替えてる途中なのに美紀が文音をイジりに来たのに対し、やられる前に仕掛けてみる事に。
「ねぇ美紀、私ちょっとイジられたかったからイジって欲しいな〜」
すると美紀はドン引きした表情でススーッと離れた。
「うわ…… 文音ってドmだったの…?」
「ドmじゃないよ!!」
「文音! 今日の体育の授業は器械運動だね!」
跳び箱や鉄棒、平均台が並べられている体育館を見て美紀ははしゃいでいた。
「そうだね。私は器械運動とかは出来るけど、明が心配で心配で…」
文音が明を見ると、美紀もつられて明を見た。
その頃、明は鉄棒で逆上がりをしていた。
足の振りが弱く、片足を上げても、もう片足がほとんど上がらずに体が浮く事は無かった。
「アハハ…」
美紀は苦笑いした。
「それで? 私は明と一緒にいながら美紀に付き合えば良いの?」
「うん! 文音には私のやりたい事に付き合って貰うからね!」
美紀の目は光っているが、幼稚な事を考えてそうな目でもあった。
「じゃあ、まずは準備体操だから真面目にやらないとね!」
二人一組になって準備体操をして、お互いにケガをしないよう念入りに体をほぐした。
「ぐで〜」
明は両足を開いて前屈をした。すると、明の上半身は床にパタンと倒れ、文音は明をただおさえるだけの仕事をする人になってしまった。
「文音ー、どう?」
「うん、すごいよ明」
文音は何処か棒読みで答えた。
いざ器械運動が始まると、美紀が一番乗りで平均台に飛び乗った。
「ふふーん、私にかかれば平均台はただの道になるのだ!!」
前に向かって歩き、そのまま後ろ歩き、横歩きT字バランスを全て決めた。
周りの女子から拍手をもらうと、美紀は素直に照れてた。
「さぁ、次は文音の番だよ! どうぞやっちゃってー!」
「イジるってこういう事だったの…?」
文音は一応言われた通りに平均台の前に立った。
「いやいや、体育が終わっても続けるけど?」
「お弁当の時間も私と絡むんだ…」
文音はこれから美紀にされる事を考えながら平均台を登った。
特に見せ場を作らず、無難にクリアして平均台を降りた。
「これで良いでしょ?」
美紀がいた場所に目を向けていたが、既に美紀はいなかった。文音が美紀を探していると、男子が半ば占拠した跳び箱のグループに一際小さい子がいた。
美紀だ。
美紀が十段跳び箱に向かって加速をつけ、踏み台を思いっきり踏んで反動で高く跳び、軽々と跳んだ。
流石の男子も美紀のアスリートぶりに興奮していた。
文音は美紀に近づいて行くと、美紀は文音に気付いた。
「あ、文音も跳ぶの?」
「いや、私には跳べないよ… 美紀はまだサッカーやってるの?」
「そりゃあもちろんやってるよ!」
「美紀って、意外とスポーツ万能なんだね…」
「えへへ〜、意外でしょ?」
意外だった。
文音は美紀がまた跳ぼうとしてる様子をしばらく眺める事にした。
よく見ると、壁際には明がいた。もしかしたら美紀が跳ぶ姿を見せようと安全な場所に連れてってくれたのかもしれない。
文音は明のそばに立った。
「あ、おかえり文音ー」
「ただいま、明」
文音は明の手を握って、明と一緒に美紀が跳び箱を跳ぶ姿を眺める事にした。
「ねぇ文音、美紀は何段の跳び箱を跳んでるの?」
「十段だよ。あ、今美紀が勢い余って盛大にコケたよ」
「落ちたのー?」
「まぁ、そんなところかな…」
お弁当の時間になり、教室の机の上に弁当を広げた美紀と文音と明は、三人一緒にいただきますをした。
美紀はふりかけがかかった玄米混じりの米を口に入れてほんわかしている。
明は箸でブロッコリーをそーっと掴んで、ゆっくり口に入れて噛んだ。
文音は明の食事が心配なのか、弁当箱を開けてなかった。
「文音ー、これ『あーん』してー」
「うん、良いよ」
文音は明の箸を持って米を少し取って、明の口の前に近付けた。
「はい、あーん」
「あー」
明の口の中に米を入れて、明は米を美味しく頂いた。
「うーん、おいしー」
明はほっぺをおさえながら米を美味しく頂いて飲み込んだ。
美紀はその様子をずっと見て思った事がある。
それは……
「なんだか新婚みたいだね」
「んっ? 何?」
文音が美紀を見た。
どうやら周りの話し声で美紀の声がかき消された様だ。
そうと分かった美紀はわざとらしい笑顔で、もう一回文音の近くで口を開いた。
「なんだか新婚みたいだね」
文音はしばらくしてから顔を赤くして、金髪ツインテがゆらゆら揺れる程焦りながらごまかした。
「しっ、新婚って…! 私と明はそんな関係じゃなくて……!」
「そうだよ美紀ー、ボクと文音は新婚じゃなくて『おしどり』の関係だよー」
「明っ! それ新婚より深い関係になってるから!!」
すると美紀は雰囲気を作って周りに誤解されてもおかしくない声色で文音をイジり始めた。
「やっぱりな… 前々からおかしいとは思ってたけど、やはり文音と明は相思相愛の関係だったか…… 恋愛はやはり、壁の無い時代になっている……」
「やめてー!! 私と明が百合関係だと思われるからー!!」
すると美紀は急に文音を指差し、
「負けないよ!!」
「何に!?」
昼休み。
「文音ー! 誕生日おめでとー! 藤原先生の許可をとってプレゼントを持って来たよ!」
美紀は文音にプレゼントを渡して、ついでに明にもプレゼントを渡した。
「ありがとう… でも、どうして明の分まで?」
「え? だって文音と明は誕生日が一緒でしょ?」
「ど、どうして明の誕生日を…」
「いや、だって入学式の日に自己紹介で言ってたよ?」
「あっ……」
文音は自己紹介を思い出した。
『ボクは天海 明! 文音と誕生日が一緒だよー!』
「明ー!!」
文音の金髪ツインテが逆立った。それはもう見事に。
「えー? 別に誕生日が一緒なのは珍しくないけど…」
「いや、その…」
文音は視線を逸らした。
「どうしたの?」
「いや、あのね…… 恥ずかしくて…」
文音がモジモジしだした。
「そんな事ないってー! 双子なんてイマドキ珍しくないってー!」
すると文音が今までにないくらいの超反応で美紀の肩を掴んで、
「どうして私と明の関係を知ってるの!?」
「いや、普通に顔が似てるから…?」
帰り道。美紀達は一緒に帰る途中、宣言した。
「どうやら来週も文音いじりをする必要があるね! またやろうっと!!」
「またやるんだ…」
「うん! やるよ! 水増しだよ!」
「ハッキリ言った!!」
次回掲載日 2019年12月1日 午後2時




