第23話『美紀にはやりたい事がある』
ある日の昼。美紀が通う学校の昼休みでの事である…
机に突っ伏して寝ている時、目の前の席にいる明の話し声が耳に入ってきた。
明は周りの女子達と談笑して、笑顔で会話をしている。
文音は近くにいない。来月に行われる学校祭について先生と話し合いをしに職員室にいるので、今は明と一緒ではない。
周りの女子達は明の子守を兼ねてお話をしているのだ。
悪い意味では無いが、美紀には少し心配な雰囲気が読み取れている…
“明は、文音がいなくても平気なのかな…? もし文音に依存してるとなれば、少しは文音なしでも生きていける様にしないと…!”
美紀は席を立ち、目の前にいる明の席の前に立った。自分より背の高い女子高生をかき分けて、明の手を触った。
「ねぇ明、ちょっと良いかな?」
明は手触りを確認して、誰かを確認してから、
「うん、いいよー」
明は席を立ち上がった。
美紀は明が転ばない様に助けながら移動して、女子トイレの個室に二人で入った。
ここで少し余談を挟ませて欲しい。
女子トイレは広めに設計されていて、二人が余裕で入れる広さになっている。
男子トイレも同様の設計なので、女子だけいい思いをしてるなんて事は一切ない。
女子トイレの個室に明を入れて、ドアを閉めてから明に話しかけた。
「ねぇ明…」
「何?」
美紀は両手をそーっと伸ばし、明の両頬に手を当てた。
「んー?」
明のほっぺは柔らかくて、モチ肌に近い肌触りだった。
そして美紀は少しだけ顔を近付け、明の顔を覗き込んだ。
明は美紀に見つめられて顔を赤くする事は無く、同じ方向をじっと見つめている…
「明…」
「美紀…?」
美紀は明にもうちょっとだけ近付いて、
両手の指に少しだけ力を入れて、
横に引っ張った。
明のほっぺが伸びて、明の口が「いー」の口になった。
明が「いー」の顔をしたまま、美紀に話しかけた。
「いきー、あんんでおくおおっふおうにーっえふるのー?」
美紀は楽しそうに明のほっぺをいじりながら答えた。
「いやー、明のほっぺを見てると触りたくなってさぁ〜。しばらく触らせてねー! はぅー、かぁいいねー! お持ち帰りー!!」
美紀の指が明のほっぺを強く掴み、本当にお持ち帰りしようと引っ張り始めた。
「いあいいあい…」
美紀は女子トイレから出てから明に抱きつき、そのまま明を背負って廊下を歩き始めた。当然周りの視線が美紀に向けられた。
「とりあえずお持ち帰りの許可を得に文音のトコまで行こう! そして一緒に遊ぶんだよ!」
「何して遊ぶの?」
明はおんぶされながら質問した。美紀はすぐに答えた。
「抱きついて、ほっぺすりすりして、食べて、抱きついて、匂いを嗅いで、握って、見つめて、触って、撫でて、さすって、いれて、楽しんで、眺めて、掴んで、かじって、舐めて、誘って、寝る! たったそれだけだよ!」
「たったって量じゃないよ!!」
明は美紀に頭突きをかまし、言葉を続けた。
「よく分かんない言葉があったんだけど… その… 『舐める』とか『いれて』とか… それってどうやって遊ぶの?」
美紀は黙り込んだ。
そして、息を吸って…
「私は明を食べる為に捕まえたのだー!」
「きゃー!」
明はノリノリで悲鳴を上げた。美紀は嬉しくなって、演技を続けた。
「お前は人間の女! 女は食べる以外の楽しみもあるからなぁ!!」
「たっ、食べる以外… って、何…?」
美紀はちょっとドヤ顔で、
「ベッド」
後ろからチョップが入った。
「ヘッド!!」
美紀は明を背負ったまま頭を抱えた。
「いたい… いたいよ文音〜…」
文音は顔を赤くしながら明を助けに入った。
「何があって明を誘拐しようと思ったのよ!?」
美紀は明を取られそうになりながら答えた。
「かぁいいから!!」
「明はお持ち帰りしないでよ!! 美紀はケンタ君人形を救出してなさい!!」
「ヒドイ! 私に何の疑いが!?」
「疑いがあると言えば嘘になるけど、信用してると言えば嘘になる… 美紀の頭なら分かるよね…?」
美紀は明を手放し、一瞬だけ考え、
「分かります」
何故か男っぽい声で答えた。
「何故男の声で…」
「出せるかなぁ〜って思って… 出せなかったね」
「あぁ…」
文音は姿勢を正し、右手をやや直角に曲げ人差し指をさした。
「じゃあ、帰ったら明の家においでね。部屋で明が待ってる様にしておくから」
美紀は目をキラーンと光らせ、少しニヤついた。
「じゃあ、帰る前に渡したい物があるからすぐに帰らないでね!」
「渡したい物? それってどんなの?」
美紀は制服ポケットから厚めの輪ゴムを取り出して、一言言い放った。
「ゴム」
輪ゴムをビヨンビヨン伸ばした。文音は輪ゴムを見ながら美紀の思考を読んだ。
が、無駄だった。
「えっと… ゴム、だよね? それってどういう––––」
「私はゴムが好きだからね!!」
「何もしないでよ!?」
文音の金髪ツインテが見事に逆立った。
「冗談だって! 私がゴム好きなワケないでしょー?」
「本気かと思った…」
文音は明に抱かれながら美紀に質問した。
「それで、元々明にどんな用があったの?」
「あぁ〜… それなんだけどさ、明を一晩借りて良い?」
文音は二秒程考え、すぐに答えた。
「良いよ。寝泊りなら、明の両親に伝えておくから」
「ありがとう文音! 私が明を立派な『女』にするからね!」
美紀は笑顔で文音の手を握った。文音は美紀の怪しいセリフをなんとか聞き取れた。
『女』と。
「しなくていいから」
文音は美紀の手の甲をペシッと手刀で攻撃した。
「いた〜い」
美紀はキャッキャしながら痛がった。
「じゃあ私は明を連れて帰るから、明の両親に伝えといてねー!」
美紀は明の手を引いて走り出した。文音は美紀を冷静に見ながら右手を伸ばした。
「こらー、お昼の授業をサボるなー」
美紀が神社に帰ってくる頃には、小夜は境内の掃き掃除をしてる最中だったが、時計をしばらく見ていない小夜は気付くはずもない…
そよ風はずいぶん前から吹いており、折角集めたあらゆる木の枝や葉が風に乗って少しだけ飛んで行ってしまう。
それでも頑張って掃き掃除を続けていると、小夜は誰かの気配を感じ、掃き掃除の手を止めた。
誰かが参拝にやって来たらしい。階段を二人が上っている…
「ただいまー!」
“あ、美紀が帰って来たんだ… じゃあそろそろおやつの時間––––”
小夜は境内の掃き掃除の仕上げに入ろうとした時、もう一回声が聞こえた。その声を小夜が聞いた時、違和感が…
“あれ… 美紀の声って、こんなに綺麗な声だったっけ? もうちょっとロリっぽい声じゃ…”
「ただいまー!」
よく見たら知らない人が笑顔で手を振っていた!
「誰ですか!?」
時間經過
明は小夜に挨拶を丁寧に済ませ、肌触りや匂いを覚えた。明が小夜を覚えるまでの間、小夜は手をベタベタ触られたり零距離で髪の匂いを嗅がれて、くすぐられている感覚を覚えた。
「ね、ねぇ美紀… この子ってもしかして…」
小夜は明の目を見ながら美紀に確認をとると、美紀は明を見て若干にやけている様な表情を浮かべていたが、小夜の問いに気付いた美紀は焦りながら頷いた。
「覚えた!」
明は小夜を覚えてから神社に上がった。
「明〜、そこは家じゃないよー!」
美紀は明を呼び止めたが、時既に遅し。明は柱に頭をぶつけた。
明は頭をおさえて痛がっている時、小夜が明の手をとって案内し始めた。
「美紀の家はこっちだよ。私が教えるね」
「よろしくお願いします」
明はペコリと頭を下げて小夜の手を握った。小夜はゆっくりと足を動かし、部屋の案内を始めた。
美紀は家の方へあがりながら、独り言を始めた。
「どうしよう… 今回の尺がもう無いよ〜… あ、そうだ。来週に持ち越せば良いのか! じゃあ! この続きは来週のお楽しみにしよう! そうしよう!」
美紀は目を輝かせながら小夜と明の後を追った。
次回掲載日 2019年10月27日 午後1時




