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巫女さんメモリーズ  作者: 華永夢倶楽部
第13話〜第24話
21/85

第20話『来宮 めぐみは厨二病である』

 「空よ! 風よ! お前達はそれで良いのか!? ほんの些細(ささい)な事ですぐに風の魔法を乱発し、最強の殺傷能力(さっしょうのうりょく)を持つ水と雷の魔法を使うとは…! 全く、世も末だな…」

台風が過ぎ暴風域から外れておよそ四十分後、家の屋根に上がり台風の方向を向いて来宮(きのみや)はそう叫んだ。

 「良いか! よく聞け‼︎ 我らにはその様な理由で争うお前達を見て、非常に幼稚に見えるぞ!! その程度の事で争うお前達とは、我等の秘宝を賭けて戦う意味など無い‼︎」

 「来宮ッ! よく聞け‼︎ 俺にもそんな理由で屋根に登るお前を見て、非常に幼稚に見えるぞ‼︎」

来宮の家の庭で、男が来宮に向かって叫んでいる。

 「下がれ(しゅう)!! ここは危険だ…!」

 「それはお前もだろ!! まだ雨が止んでないってのに屋根に上がって風神雷神にケンカ売ってからに…!!」

男は風雨に負けないくらいに大きな声で来宮に降りる様に説得している。

 「ケンカではない… これは戦争なのだ… 我等と神との戦いなのだ…」

来宮はお手製の黒いローブをはためかせ、台風の影響でローブはカッコよく揺れる。

秀は二階のベランダから屋根によじ登り、来宮を確保した。

 「離せ秀!! 私がこの戦いに加わらないと、世界が変わってしまうのだぞ!! それでも良いのか!?」

秀は来宮を抑えながら、叫んだ。

 「それでも良い!! お前と一緒にいられるならな!!」

来宮は一瞬、ときめいた様な表情を見せて、視線を逸らした。

 「…我が名は来宮(くるみや)。昔は大魔法使い、今は大いなる魔法使い…」

秀は何かを感じて、来宮を離した。すると来宮は歩き出し、屋根の端に立って上を向いた。

 「我は散らばった仲間と共に、神へ戦いを挑む… この歴史は、漆黒の闇へと(ほうむ)られるであろう…」

来宮は、悲しい顔で秀を見た。

 「もし私が戦いに敗れて、身体が動かない程になっても… 秀は、私を支えてくれるか?」

秀は決意の固まった表情で頷き、笑顔を見せた。

来宮は秀の笑顔を見て、

 「…では、行って来る」

来宮は屋根から飛び降り、地面に着地してから六秒程経ってから家を飛び出す来宮を見てから、秀は屋根からゆっくり降りてベランダに入って二階の部屋に入って一階に降り、家を出た。

ついさっき来宮が走ったルートを辿って行くと、風雨の中に倒れる来宮の姿があった。

秀は特に何とも思わず、体を起こし、おんぶをして歩き始めた。

 「惨敗だな…」


学校に登校しても、来宮(きのみや)は周りが付いていけない程の「痛い女の子」扱いを受けていた。

が、最近はそんなに「痛い娘」扱いを受ける事が減り、むしろ来宮の事をジッと見つめる生徒まで現れる様になってきた。

そういう特別な視線を来宮に送る内に、いつしか来宮の呼び名は変わっていた。

『残念な美少女』と。

 「来宮!」

秀が来宮の肩を軽く叩き、来宮を呼び止めた。来宮は移動中の足を止めて振り向いた。

 「秀、どうかしたんですか? 闇の力がこの近くで渦巻いてたんですか?」

 「いや、そうじゃなくて… お前、昨日道の真ん中で倒れてただろ。風邪引いたんじゃないのかよ」

来宮はフッと笑みを浮かべ、秀の手を下ろした。

 「たかが風如きで風邪を引く様な身体ではない。私には薬の調合に()けた魔術師がいるからな…」

 「でも、お金が無いから自分で材料を揃えて自分で調合したんだろ?」

来宮は秀に本音を言われて、一瞬だけ黙ってしまった。

そのまま照れ隠しで、秀の肩をポカポカ叩いた。

 「先に言うな! さてはお前、他人の心を読んでるのか!?」

 「いたっ、痛い! 小学の時から一緒なんだから、それくらい俺にかかれば分かるんだよ!!」

廊下でぎゃいぎゃい騒ぐので、当然近くを歩く人は秀と来宮の普段のやりとりをチラ見して、心で笑っている。

この学校の名物でもある二人は、しばらく争っていると、疲れで手が止まってしまった。

お互いに牽制(けんせい)で出方を伺い、超反応をする構えで相手の全身を見る…

お互いに、一歩も動かない…

 「この勝負… 先に動いた方がやられる!!」

 「この勝負… 先に動いた方がやられる!!」

秀も来宮も、呼吸を静かにし、相手の動きに反応する為の引き金を作り、秀は右足を後ろに、来宮は左足を後ろにして相手を見つめながら構える…

その間に、通行人はチラッと秀達を見ては素通りしていく。

二人は、まだ動かない…

二人は、まだ…

二人は…

二…

 『キーンコーンカーンコーン…』

始業のチャイムの音が鳴ると同時に、秀と来宮は我に返り床に置いていた授業の道具を手に取り、視聴覚室へ一目散に駆け出した。

 「うおおおおお!! 完っ全に遅刻じゃねぇか!!」

秀は急ブレーキで曲がり、階段を三段上りで駆け上がった。来宮は後に続いて階段を二段上りで駆け上がった。

 「秀! これは奴の仕業かもしれん!!」

 「あぁ! 『先生』と言う名の恐ろしい存在のな!!」

チャイムが鳴り終わって十数秒が経った頃に、視聴覚室の前に着き、秀が扉を開けた。

 「先生!! 遅刻しました!!」

挨拶はとっくに終わっており、今回の授業の内容を教えているところだった。


 「結構気まずかったな…」

下校途中、秀は肩を落としながら来宮に話しかけた。

 「えぇ… 今日はあんまりツイてませんでしたね…」

来宮はやや下を向いて秀の言葉を返した。

秀はカバンの中から財布を取り出し、中身を見てから来宮に話しかけた。

 「なぁ来宮、これから寄り道しないか?」

来宮はバッと秀を見て、綺麗な目で期待した。

 「ではメロンソーダを私に恵むのだ!!」

秀は自販機の前に立ち、お金を入れた。

 「あぁ、俺のマネーでな」

自販機のメロンソーダのボタンを一回押し、メロンソーダを取り出して来宮に渡し、メロンソーダのボタンをもう一回押し、メロンソーダを取り出して秀が手に取った。

 「んじゃあ、明日から一緒に頑張ろうな!」

 「あぁ、秀もな」

フタを開け、お互いに乾杯をした。

 「乾杯!」

 「乾杯!」

次回掲載日 2019年10月6日 午前10時

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