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降る星に読む物語  作者: 紫木
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黒き少年と偽りの幻想

降り注ぐような星空の下で大切な人が立っている。

萎れた花畑の中で彼女は一人、空を仰ぐ。


『時に思い出す。あの時ああしていればと』


1つ、2つと彼女の周りに星の欠片が集まり出す。

世界を拒み、世界の中で自分の世界を創造し、

彼女は今日も物語を紡ぐ。


『これは星のように空にあり、星のように力を持つ話』


もはや1つの星を構成するのに足りるほどの数の星の欠片が彼女を包む。

それは巨大な力の塊で、彼女には大きすぎる力。


何故、皆は彼女を一人きりにしてしまったのか

何故、ここまで深くなるまで彼女の目を覚ますことが出来なかったのだろうか


オレは彼女に近づきながら、世界の在り方と自分の不甲斐なさに怒り狂っている。


星の欠片はその一つ一つが輝きを持ち、目を凝らせば刻まれた記憶が蘇る。

オレが守ると決めた事。オレが守ってみせると誓ったもの。

胸に突き刺さるような痛みがはしる。


『嬉しかったんだ。私は本当に嬉しかったんだよ』


知っているよ。貴女の事はオレが一番よく知っている。

オレはあの時、誰にも傷付けられない人になると誓った。

オレはあの時、正義の味方になると豪語した。


『どうしてこんな事になってしまったんだろう?』


少し黙れよ。だからと言って許される事じゃないはずだ。

悪い事は全部オレのせいにしろ。オレだけが罪を被ればそれでいい。


『どうして皆は平気な顔をしているんだろう?皆は悲しくないのかな』


悲しんでくれただろ?時が経てば忘れる事もある。その程度には時が流れたんだ。


『じゃあ思い出させてあげる。私が思い出させてあげるわ』


より一層、彼女の周囲に星の欠片が散りばめられ、

幻想に包まれながら、彼女は欠片を束ね合わせて一冊の本を生む。


誰も報われない、因果の調律もない、ただの救われない物語。

その物語は御伽噺の様な結末を迎えようとし、最期には必ず失敗する。


『皆が私と同じ気持ちになればいいのよ。だから皆には本を読んで聞かせてあげるわ。そうしたらきっと思い出すはず、そうしたらきっとみんな俯いてしまうの。でもそれでいいのよ。そうじゃなきゃ不公平じゃない。あの子を失った痛みが忘れられてしまうなんて、私には耐えられない』


オレはそんなこと望んじゃいない。

貴方がそんな風になってしまったのは全部俺のせいだ。

そんな事はこの世界に生まれた時から解っている。


だからこれまで語られた全ての物語を書き換えた。

貴方に描かれた物語の結末に干渉した。

その為にオレはこの世界に生み出されたのだから


そこまで考えた時、意識が鮮明に浮き上がる。

頭の中に響いていた声ももう聞こえない。


そうか、貴方が最後に書いた物語は貴女の心そのものだった。

物語を紐解けば、必ず読み手の最愛の人との別れが語られる。

幸せな未来を自分で塞ぎ、自分で消してしまう物語。

この物語の結末は『報われない』どころか『諦め』を選択する。

一言で言うなら破綻してしまっている。



最後の物語を抜け出したオレの目の前には、この物語の読み手としての役割を演じた女がひとり。



『やぁやぁ、今日はなんて日だ!今日はなんて素晴らしい日だ!よもやまさか物語の住民がこの地に訪れるとは!歓迎しよう賓客よ、さぁ君は何を望みこの場へ顕現した?』


『ようやく辿り着いた。姉さん、オレは今度こそ貴方を救ってみせる』



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