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魔王と勇者 ~我、異世界転生した!~  作者: 珈琲ノミマス
第二章 ダンジョンへ行こう

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第94話 我、進む

「俺は後ろから確認する」


「うむ。わかった」


「マオ、行こう」


「うむ」


 行くかの。


 阿野殿を後方に、我とユウが並んで石造りの通路を進む。


 すると、さほど進まぬうちに通路が左右へ分かれておった。


 もう分かれ道か。


 我は足を止め、まず周囲を見渡す。


 それにしても。


 今回は石壁そのものが光っておるタイプなのだな。


 松明も照明もないというのに、床も壁も天井も淡い光を帯び、通路全体を照らしておる。


 さて。


 感心しておる場合ではない。


 床。


 壁。


 天井。


 左右の通路。


 一つずつ確認していく。


 罠らしきもの。


 不自然な亀裂。


 何かが潜んでいそうな影。


 …………。


 特に怪しいところはなし。


 そう思ったのだが。


「む?」


 左の通路。


 僅かに光り方が違わぬか?


 右と見比べてみる。


 …………。


 うむ。


 やはり左の方が暗いの。


 ほんの僅かな違いではあるが、見間違いではない。


 確か授業では、このように進む先で明るさに差がある場合、特に理由がなければ明るい方を選ぶことが推奨されておったはず。


「右かの」


「だね」


 ユウも同じ判断か。


 ならば、迷う必要はないな。


 我らは右の通路へ進む。


 無論、選んだからといって安心はせぬ。


 足元。


 壁際。


 天井。


 曲がり角の先。


 今のところ罠らしきものは見当たらぬが、あるものと思って警戒しておいた方がよい。


 そうして慎重に進んでおると――。


 …………。


 奥から声。


 一つではない。


 複数。


「マオ」


「ユウ。慎重に行くぞ」


「うん」


 やはりユウも気づいておったか。


 我は歩みを緩めながら、六枚のシールドクローを展開する。


 いつも通り両手に一枚ずつ。


 二枚を我の周囲に。


 残り二枚をユウの周囲に浮かせ、何処から攻撃が来ても動かせる位置に置く。


「ほう」


 む?


 背後から阿野殿の声。


 なんぞ。


 感心したような声を出しおって。


 …………。


 いや。


 今はそちらを気にしておる場合ではないな。


 通路の奥。


 淡く光る石壁の向こうから、複数の影が見えてくる。


 ゴブリンか。


 一。


 二。


 三――。


 …………。


 八匹ほど。


 前に近接武器を持ったゴブリン。


 その奥に弓を持った個体が一匹。


 さらに。


 手元に杖を持つ個体が一匹。


 弓と魔法。


 遠距離役が一匹ずつか。


 ならば。


 我が先陣ぞ。


「ユウ。我が潰す」


「わかった」


 我の言葉だけで、ユウも何を狙うのか理解したらしい。


 まずは厄介な遠距離攻撃を潰す。


 我は腰から魔王を抜く。


 隣では、ユウもグロック19を抜いた。


 そして。


 向こうも我らの存在に気づいておるな。


 ゴブリンたちが一斉にこちらを向き、前衛が武器を構えた。


 弓ゴブリンも矢に手を伸ばす。


 魔法ゴブリンの手元には光。


 だが。


「遅いの」


 我はすでに魔王の銃口を向けておる。


 まずは魔法。


 照準。


 引き金。


 一発。


 放たれた弾丸が魔法ゴブリンの頭部を捉え、そのまま頭部を吹き飛ばす。


 力を失った身体が、後ろへ倒れ込んだ。


 同時に、ユウのグロック19からも数発の銃声が続いた。


 狙いは、こちらへ迫ろうとしていた前衛の脚。


 一匹が脚を撃ち抜かれて体勢を崩し、他のゴブリンたちも銃撃を警戒して足を止める。


 牽制。


 うむ。


 そのまま頼むぞ。


 我は魔王の銃口を横に振る。


 次。


 弓ゴブリン。


 矢をつがえようとしておるが――。


 遅い。


 二発目。


 弓を構える暇すら与えず頭部を撃ち抜き、そのまま吹き飛ばす。


 力を失った身体が石床へ崩れ落ちた。


 よし。


 これで遠距離攻撃は潰した。


「ユウ!」


「うん!」


 後は――。


 ユウの独壇場ぞ。


 ユウがグロック19を収め、セイヴェリアを抜きながら一気に前へ出る。


 速い。


 前にいたゴブリンが武器を振り上げる頃には、すでに懐へ入っておった。


 セイヴェリアが横薙ぎに走る。


 一匹。


 首が落ちる。


 そのまま足を止めず、次。


 二匹目。


 振り下ろされた武器を身体をずらしてかわし、返す刃で首を刎ねる。


 …………。


 相変わらず容赦ないの。


 無論。


 我も見ておるだけではないぞ。


 ユウに攻撃が届きそうになれば、浮かせているシールドクローを割り込ませて受け止める。


 別の一枚は前衛に向かわせる。


 その一枚から左右のクローを伸ばし、ゴブリンの身体を挟み込む。


 動きを止めたところに、右腕に装着したシールドクローを叩き込む。


 盾ごと殴りつけ。


 さらに爪を伸ばし、そのまま身体に突き刺す。


 うむ。


 まず一匹。


 その時。


 視界の端。


 一匹が我の後ろに回り込もうとしておる。


 …………。


 遅いの。


 我が見ておらぬとでも思ったか?


 背後に浮かせていた別のシールドクローを即座に回り込ませる。


 左右から首を挟み――。


 内側のソーを回転。


 刃が首を切断し、頭部が胴体から離れる。


 力を失った身体が、そのまま石床に崩れ落ちた。


 よし。


 我はすぐにユウの方を確認する。


 …………。


 終わっておる。


 先ほどまで残っていたゴブリンたち。


 全て首を落とされ、石床に倒れておった。


 速いよな。


 相変わらず。


 我も周囲を確認する。


 右。


 なし。


 左。


 なし。


 前。


 動く個体なし。


 後方――。


 阿野殿だけ。


 うむ。


 ゴブリンの殲滅を確認。


 これでよし。


「先へ進むかの」


「うん」


「ふむ」


 …………。


 阿野殿。


 なんぞ?


 黒いサングラスのせいで視線までは見えぬ。


 だが。


 その口元。


 明らかに面白いものを見つけたような顔をしておるよな?


 …………。


 やめよ。


 褒められておるような気がして、こちらまで気が緩みそうになるではないか。


 まだ始まったばかり。


 油断は禁物ぞ。


 そうして再び通路を進んでいくと――。


「む……」


 鼻につく、この臭い。


 腐臭。


 となれば。


 次はゾンビか。


 少し先まで進むと、案の定、通路の奥から腐りかけた身体を引きずるようにしてゾンビたちが姿を現した。


「マオ。今度は私が行くね」


「うむ。任せるぞ」


 今度はユウが先陣。


 セイヴェリアを手に、一気にゾンビの群れへ切り込んでいく。


 我もすぐ後に続き、シールドクローを展開したまま周囲を警戒。


 ユウに横から迫る個体がいれば盾で阻み、我に向かってくるものはクローで潰す。


 だが。


 やはりゾンビ相手では、ユウの方が速いの。


 振るわれるセイヴェリア。


 一体。


 また一体。


 迷いなく狙うのは――首。


 首。


 首。


 …………。


 相変わらずよな。


 頭部を落とすのがゾンビには確実なのだから、間違ってはおらぬのだが。


 それにしても、徹底しておる。


 我もシールドクローで残った個体を仕留め、周囲を確認する。


 動くものなし。


 うむ。


 殲滅完了ぞ。


「少しいいかい?」


「はい?」


 む?


 阿野殿。


 ユウに何かあるのかの?


 阿野殿は倒れたゾンビたちに一度視線を向け、それからユウを見る。


「何故、首ばかりを狙う?」


「え?」


 ユウが不思議そうに瞬きをした。


「切りやすいからですけど」


「…………」


 阿野殿が僅かに黙る。


「……そうか。変わってるな」


 やはり。


 ユウの攻撃方法は変わっておるのか。


 まあ。


 ここまで本当に首ばかり切っておるからの。


「変わってますかね?」


 当の本人は、本気でわかっておらぬようだ。


「いや、失礼。大丈夫だ」


「良かったです」


「すまんな。邪魔をした」


「いえ、大丈夫です」


 阿野殿はそれ以上何も言わず、再び我らの後方へ下がった。


「うむ。では進むかの」


「うん」


 やれやれ。


 流石、首置いてけウーマンよな。


 本人には言わぬが。


 そうして、さらに奥へ進んでいく。


 …………。


 おや?


 少し広い空間。


 モンスターの姿もなし。


 それに、壁際にはクリスタルまで生えておる。


「もうセーフスポットか」


「ほんとだ」


 そして。


 そのさらに奥。


 大きな扉。


 …………。


 あれが最深部か。


 我はスマートウォッチで時間を確認する。


 ここまで――15分程度。


 …………。


 短いの。


 随分と短い。


 確かにゴブリンやゾンビとの戦闘はあった。


 だが。


 それを含めても、まだ15分ほどしか経っておらぬ。


 我、疑問。


 ならば何故。


 先ほど待機室や通路におった仮免ハンター諸君は、あそこまで疲労困憊であったのだ?


 肩で息をし。


 立ち上がる気力すら失い。


 その場にへたり込むほど。


 …………。


 何かあるのか?


 それとも、我らが早すぎるだけなのか?


 いや。


 今ここで考えても仕方あるまい。


「マオ。どのクリスタルを持って帰る?」


 む。


 そうであった。


 今回の試験。


 最深部へ到達するだけではなく、途中でクリスタルを採取して持ち帰ることも課題の一つ。


「阿野殿。クリスタルの採取場所はここでよいのかの?」


「ああ。ここでいい」


 やはり、このセーフスポットか。


 壁際を見れば、大小様々なクリスタルが淡い光を放ちながら生えておる。


 採取すること自体は難しくなさそうだな。


 だが――。


「ユウ。まずは最深部の攻略からにしよう」


「先に?」


「うむ。その方がよかろう」


 我はクリスタルから奥の扉に視線を移す。


「採取した後に最深部へ入り、万が一戦闘でクリスタルを壊してしまっては意味がないからの。先に攻略を済ませ、その後で採取した方が安全ぞ」


「ああ、確かに」


 ユウも納得したように頷く。


「じゃあ、挑む?」


「うむ」


 だが。


 そのまま扉に手を掛けるほど、我らも不用心ではない。


「まずは、いつもどおり確認してからだの」


「だね」


 何がおるかわからぬ。


 扉を開けた瞬間に襲われる可能性もある。


 油断なく。


 いつもどおり。


 まずは――。


 のぞき見からぞ。

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