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魔王と勇者 ~我、異世界転生した!~  作者: 珈琲ノミマス
第二章 ダンジョンへ行こう

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第82話 我、便利

 その後も。


 二度。


 三度。


 ゴブリンの集団と遭遇した。


 やはり、こ奴ら。


 見た目によらず厄介ぞ。


 最初に見えた者だけが全てではない。


 前から棍棒を持った個体が注意を引く。


 その隙に、横から別の個体が回り込もうとする。


 その後ろでは弓。


 時には魔法。


 授業で聞いておったとおり、単純に正面から殴りかかってくるだけの相手ではない。


 だがの。


 ユウはもう、先ほどのように突っ込まなかった。


「右奥。弓!」


「見えてる!」


 珍しく。


 本当に珍しく。


 否。


 ダンジョンでグロック19を使うのは、これが初めてだの。


 セイヴェリアではない。


 両手で構え。


 狙い。


 撃つ。


 弓を持ったゴブリンが倒れる。


 続けて、魔法を使おうとしている個体に狙いを移し。


 もう一発。


 そちらも先に潰してから、グロック19を収める。


 そして。


 セイヴェリアを抜いた。


「行くよ、マオ!」


「うむ!」


 そこからは、いつものユウぞ。


 一気に距離を詰め。


 近接戦。


 我もシールドクローで周囲を警戒しながら援護する。


 うむ。


 良かった。


 先ほど千葉先生に言われたことを、すぐに戦い方に反映しておる。


 失敗した。


 注意された。


 ならば、次は直す。


 我も見習わねばならぬな。


 …………。


 報告書もな。


 …………。


 いや。


 前回分は、もう提出しておる。


 今は関係ないぞ。


 …………。


 まあ、ユウの監視付きではあったがの。


 そうして。


 戦い。


 進み。


 また謎を解く。


「これは……」


「マオ。今度は簡単そうだね」


「うむ」


 次の部屋。


 床には、いくつかの印。


 丸。


 三角。


 四角。


 そして、その周囲には同じ印が刻まれた石像。


 …………。


 なるほど。


 今回は分かりやすい。


「指定された印の場所に、同じ印の石像を置けばよいのだな」


「多分」


「ならば」


 ふふふ。


 ここは我の出番ぞ。


 一つずつ人力で運ぶ必要などない。


 我は石像に魔力を伸ばす。


「纏めて運んでしまえばよい」


 複数の石像が、ゆっくりと床から浮き上がった。


 …………。


 む。


 見た目以上に重いの。


 だが、問題あるまい。


 ゆっくりと。


 一つ。


 二つ。


 それぞれ対応する印の上まで運び、静かに下ろしていく。


「マオ。便利だね」


「ふふふ。我を誰だと思っておる」


「マオ」


「そういう意味ではない!」


 …………。


 便利。


 何故だろう。


 その一言で、モロイを思い出したぞ。


『流石は魔王様。では次は、あの大きな石を運んでください。その後は、そこに転がっている木々をこちらに』


 …………。


 うむ。


 モロイの頼みで、家づくりを手伝った時のことだの。


 あの時も、こうして大きな石やら木やらを運ばされたのだったか。


 …………。


 今思えば。


 我、随分と便利に使われておったのでは?


 我、魔王なのに。


 …………。


 まあよい。


 今は石像ぞ。


 最後の一体を指定された位置に置く。


 すると。


 床に刻まれていた印が淡く光り。


 正面の壁の奥から、重い何かが動き出す音が響く。


 やがて石壁がゆっくりと横にずれ、その先に通路が現れた。


「開いた!」


「うむ!」


 今度は早かったの。


 我、満足。


 …………。


 しかし。


 そう考えると、最初の一時間は何だったのだろうな。


 もしや。


 あれも、実はかなり簡単な謎だったのでは?


 …………。


 否。


 忘れよう。


 考えてはいけない気がするぞ。


 そして。


 開いた扉の先。


「おお」


 セーフスポット。


 見慣れたクリスタル。


 そして、そのさらに奥。


 巨大な扉。


 今までのものより、明らかに大きい。


 表面には幾つもの直線や円が刻まれ、それぞれが複雑に重なっておる。


 …………。


 これも何かの仕掛けではあるまいな?


「恐らく……」


「最深部だよね」


「うむ」


 間違いないであろう。


「小休憩ぞ」


「うん。今は……昼を少し過ぎたくらいだね」


「ならば、昼食も食うかの」


 腹も減っておる。


 頭も使った。


 特に最初。


 物凄く使った。


 …………。


 結果はともかく。


 我らはセーフスポットに荷物を下ろし、携帯食を取り出す。


 …………。


 うむ。


 携帯食。


 岩手で散々食べたばかりなのだが。


 まあよい。


 腹が減っては戦えぬ。


 我は袋を開け、一口。


 噛む。


 …………。


 おおっ。


 糖分が頭に回ってくるの。


 多分。


 これで謎解き能力も少しは上がったであろう。


 …………。


 もう最深部だから、必要ないか。


「さて」


 我らが食事を終えた頃。


 それまで少し離れていた千葉先生が口を開いた。


「この先が最深部だ。その前に、白崎」


「はい」


「さっきのことは、もう分かってると思うが。もう一度だけ言っておく」


 ユウが姿勢を正す。


「怒るなとは言わん。だが、それで周りを見失うな」


「はい」


「その後の戦闘は問題なかった。遠距離攻撃をしてくる奴から潰して、それから接近戦に切り替えてたからな」


「はい」


「なら、今の感覚を忘れるな」


「分かりました」


 ユウがしっかりと頷く。


 うむ。


 先ほど注意されたことを、すぐに戦い方に活かしておったからの。


 もう大丈夫そうぞ。


「それと、天神」


「え?」


 我?

 …………。


 何故?


 我、何もしておらぬぞ?


 むしろ守った側では?


「お前もだ」


「我も?」


「止める時は、ちゃんと止めろ」


「…………」


 あ。


 そういうことか。


「白崎が走った時、お前も違和感は持ったんだろ?」


「う、うむ」


 確かに。


 何故いきなり走った。


 そう思った。


 我も、すぐにユウの名を呼んだ。


 だが。


 止まれとは言わなんだ。


 一瞬。


 本当に一瞬だが、何故走ったのか考える方を優先してしまった。


「少しでも危険だと思ったなら、ちゃんと言え。止まれってな」


「うむ……」


「名前を呼ぶだけで伝わる時もある。だが、伝わらねぇ時もある。止める必要があるなら、はっきり言え」


「……うむ。以後、気をつける」


 我も怒られてしまったの。


 …………。


 まあ、仕方あるまい。


 言われてみれば、その通りぞ。


「ごめん、マオ」


「気にするでない」


 我はユウを見る。


 少し申し訳なさそうな顔。


 そんな顔をするでない。


「もしかしたら、我にもそういう時があるやもしれぬ」


「マオにも?」


「うむ。我とて、いつも冷静とは限らぬ」


 家族。


 仲間。


 ユウ。


 もし。


 大切な者に何かあれば。


 我とて、何をするか分からぬ。


 だから。


「その時は、ユウが我を止めよ」


「うん」


「我も止める」


 どちらかが周りを見失ったなら。


 もう一人が止める。


 片方が間違えたのなら。


 片方が教える。


「お互い様よな」


「うん」


 ユウが笑う。


 我も少しだけ頬が緩んだ。


 うむ。


 これでよし。


「お前ら、こういう時だけ妙に息が合うよな」


「…………」


「…………」


 千葉先生。


 何故そこで入ってくる。


「ええい! 余計な茶々を入れるでない!」


「いや、なんか妙にまとまってたから」


「折角、我が慰めておったのに台無しではないか!」


「スマンスマン」


 絶対、悪いと思っておらぬな。


 まったく。


 …………。


 まあよい。


 休憩も終わった。


 目の前には、最深部の巨大な扉。


 複雑な線と円が刻まれた、その向こう側。


 そこが。


 我らにとって最後の訓練ダンジョン。


 そして、ここを攻略すれば。


 本免許の試験が見えてくる。


 我は立ち上がり、装備を確認する。


 魔王。


 問題なし。


 六枚のシールドクロー。


 問題なし。


 ユウもセイヴェリアとグロック19を確認しておる。


 よし。


 ならば。


 最後まで。


 気を抜かずに行くぞ。

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