↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔王と勇者 ~我、異世界転生した!~  作者: 珈琲ノミマス
第二章 ダンジョンへ行こう

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
77/100

第77話 我、疑われる

 時折襲い掛かってくるアントラーディアを屠りながら森林を進み、昼を過ぎた頃。


 ようやく。


 ようやく、最深部の扉が見えたの。


「おお……」


 思わず声が漏れる。


 扉そのものは、以前のダンジョンで見たものとそれほど変わらぬ。


 だが、すごいのはその周囲ぞ。


 扉の左右には木々が隙間なく立ち並び、まるで巨大な壁でも作るように行く手を塞いでおる。それが我の見える限り、左右へずっと続いているのだ。


 迂回して先へ進む余地など、何処にも見当たらぬ。


 我、圧倒。


 随分と分かりやすい。


 この先が最深部。


 そう言わんばかりの光景ぞ。


 幸い、扉から少し離れた場所にはセーフスポットがあった。


 我らはそこで荷物を下ろし、水分を取りながら小休憩。


 さて。


 問題は、どうするか。


「マオ。このまま挑戦した方がいいと思う」


「ユウもそう思うか」


「うん。明日に回して、もし戦闘に数時間とか掛かったら、帰りは日が落ちる中で森を進むことになるかもしれないし」


 うむ。


 ユウも分かっておるの。


 最深部へ辿り着けば終わりではない。


 ここから入口まで帰らねばならぬのだ。


「ならば、今日この後に挑戦しよう。終わったらここまで戻って一泊。明日の朝から帰還する方向で行くかの」


「うん。その方がいいと思う。夜は私たちにとって敵だしね」


「そうだの」


 その方が安全であろう。


 ただ、懸念があるとすれば、予定の日程ぎりぎりになりそうなことか。


 初日から、方向を間違えて進んだ時間が、やはり響いておるの。


 …………。


 今更悔やんでも仕方あるまい。


 まずは目の前。


 最深部のボスぞ。


 我は水をひと口飲み、蓋を閉めて荷物へ戻す。


「まずは、いつもどおり少し見てみるかの」


「そうしよう」


 今のところ、千葉先生は我らの話し合いに口を出してはおらぬ。


 ちらりと見る。


 …………。


 何も言わぬ。


 一言くらい「問題ない」とお墨付きが欲しいところだが、仕方あるまい。


 これは我らの訓練だからの。


 自分たちで考え、自分たちで決める。


 ならば、行くか。


 小休憩を終えた我とユウは荷物を整え、最深部の扉に近づいた。


 そして、いつものように扉をほんの少しだけ開き、その隙間から中を覗き込む。


 …………。


「ミノタウロスか」


「大きいね」


 広い空間の中央に立っているのは、一体のミノタウロス。


 目測で三メートルといったところかの。


 牛に似た頭部から伸びる角は、これまで散々見てきたミノバッファローよりも立派。太い四肢を持つ巨体の手には、その身体に見合った巨大な斧まで握られておる。


 あれは。


 重そうだの。


「角は素材になるの。あれは取るぞ」


「うん。でも、あの斧……重そうだね」


「まともに受けるのはやめた方がよさそうだの」


 授業で見た時から分かってはいたが、実物を前にすると余計にそう思う。


 あれを正面から何度も受け止める必要はあるまい。


 ならば。


「ユウ。我が囮になる」


「マオが?」


「うむ。我が先に突撃し、シールドクローと魔王で奴を翻弄する。必ず隙を作るぞ」


「その隙に首を落とせばいいってことだね」


「…………うむ」


 流石、首置いてけウーマン。


 迷いがないの。


 我がわざわざ「仕留める」と言わずとも、真っ先に首が出てくるとは。


 元勇者、恐るべし。


「斧には注意ぞ」


「お互いにね」


「うむ」


 作戦は決まった。


 ならば。


 さあ、行くかの。


 我は扉に手を掛け、一気に押し開く。


 そのまま先頭で室内に飛び込んだ。


 こちらへ気づいたミノタウロスが、大きく口を開く。


 腹の奥まで震わせるような低い咆哮が空間に響いた。


 だが。


 まずは挨拶ぞ。


 我はホルスターから魔王を抜き、迷わず引き金を絞る。


 狙うのは太い脚。


 一発。


 二発。


 さらに数発。


 弾丸は外れることなく太い脚を穿つ。


 血が弾け、ミノタウロスの足取りが僅かに崩れた。


 だが、倒れぬ。


「うむ。しかし、これでよい」


 確実に効いてはおる。


 それに、ミノタウロスの目が我を捉えた。


 よし。


 狙いが我に向いたの。


 巨大な斧を持ち上げ、こちらとの距離を詰めてくる。


 遅い。


 いや、決して鈍いわけではない。


 あの巨体で考えれば十分に速い。


 だが、見える。


 振り下ろされる斧の軌道に一枚のシールドクローを滑り込ませる。


 受け止めぬ。


 盾面を斜めに当て、軌道だけを外へ逸らす。


 巨大な斧が我の横を通り過ぎ、そのまま床に叩きつけられた。


 凄まじい威力ぞ。


 まともに受けなくて正解よな。


 続けて別のシールドクローをミノタウロスの顔の前に滑らせる。


 一瞬だけ。


 本当に一瞬だけ、視界を遮る。


 その隙に我は反対側へ移動。


 見失った我を追うようにミノタウロスが顔を動かし、斧を振るう。


 だが、そこにはもう我はおらぬ。


 斧は空を切り、重い風だけが身体の横を抜けていった。


 しかし。


 音がすごいの。


 あれに当たりたくはないぞ。


 我はシールドクローを奴の顔の前に残したまま距離を取り、その間に魔王に弾を装填し直す。


 再び脚を狙う。


 撃つ。


 移動。


 シールドクローで視界を塞ぐ。


 斧の軌道を逸らし、また撃つ。


 狙う場所も、できるだけ脚に集中。


 一発ごとに傷が増え、あれほど力強かった足取りが少しずつ崩れていく。


 よし。


 我しか見ておらぬ。


 ユウに視線を向ける様子すらない。


 そのまま少しずつ、確実に。


 脚にダメージを蓄積していく。


 そして――。


 ついに耐えきれなくなったのか、ミノタウロスが片膝を床についた。


「今ぞ!」


 まずは、その厄介な斧から!


 一枚のシールドクローを斧を握る腕めがけて飛ばし、手首を挟み込む。


 逃がさぬ。


 そのまま内側のソーを走らせ――切断。


 斧を握ったままの手が床に落ちる。


 次!


 我は二枚のシールドクローをユウの前に動かし、盾面を上へ向けて高さをずらす。


 ユウのための足場ぞ。


「ナイス! マオ!」


 すぐに我の意図を理解したユウが駆け出す。


 一枚目。


 ユウが踏み込む瞬間に合わせ、我はシールドクローをその場に固定する。


 蹴る。


 次の一枚。


 そちらも同じく支え、ユウの踏み込みを受け止める。


 二枚のシールドクローを足場に、一気に高さを稼いだユウがミノタウロスの首元に迫る。


 そして。


 一閃。


 セイヴェリアの刃が、膝をついたミノタウロスの首を走った。


 次の瞬間。


 切り離された頭部が床に落ち、続いて巨体がゆっくりと崩れていく。


 しばらく待つ。


 …………。


 動かぬ。


 我は魔王をホルスターに戻す。


「終いかの」


「そうだね……もう動かない」


 ユウは周囲に視線を巡らせ、それから剣先を下ろした。


 ふむ。


 それにしても。


 我が何も言わずシールドクローを足場にしたというのに、よくすぐ意図を理解したの。


「流石はユウぞ」


「マオのアシストのおかげだよ。でも、怖かった」


「む?」


「マオ一人で突撃していくの」


「ユウよ。我があの程度で死ぬと?」


「思ってはないけど、怖いものは怖いよ」


「むっ」


 ユウが我に抱きついてきた。


 ええい。


 抱きつくでない。


 我、一応汗だくぞ。


 それに三日ほど前から風呂にも入っておらぬ。


 流石に少し気になるのだが。


「あ~……お前ら。いい加減、素材を取っておけよ」


 …………。


 千葉先生。


 なんぞ、その生暖かい目は。


 少し離れた場所から、何とも言えぬ顔でこちらを見ておる。


 何か。


 何か勘違いしておらぬか?


「ユウ。そろそろ」


「あっ、うん。じゃあ角、切ってしまおうか」


「うむ。そうするかの」


 ユウがようやく離れ、セイヴェリアを手にミノタウロスの頭部へ向かう。


 …………。


 千葉先生。


 いつまでニヤニヤしておるのだ。


 言っておくが。


 違うからの。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。