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魔王と勇者 ~我、異世界転生した!~  作者: 珈琲ノミマス
第二章 ダンジョンへ行こう

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第69話 我、頭が上がらず

【更新時間変更のお知らせ】


いつも『魔王と勇者 ~我、異世界転生した!~』を読んでいただき、ありがとうございます。


現在、ストックが少なくなってきましたので、更新時間を少し変更させていただきます。


今後は平日の16時と20時の一日二回更新とし、土日はお休みとさせていただきます。


そのため、本日の12時更新はございません。

16時と20時には予定どおり更新いたします。


何度も更新時間を変更してしまい、本当に申し訳ございません。

できるだけ無理なく続けていくための変更となりますので、ご了承いただければ幸いです。


これからも『魔王と勇者 ~我、異世界転生した!~』をよろしくお願いいたします。

 我のせいで延期されていた、次なる訓練ダンジョン。


 ようやく予定が組み直され、我らは岩手へ向かうことになった。


 移動手段は、今回もバイク。


 高速道路をひたすら北へ。


 長い。


 実に長い。


 だが、これで訓練ダンジョンへ向かう遠出も三度目。


 最初の頃に比べれば、我も随分と慣れてきたものぞ。


 高速道路の流れ。


 休憩を取るタイミング。


 バイクを降りた時に身体を軽く動かしておいた方がよいこと。


 そうしたものも、少しずつ分かってきた。


 まあ――。


 腰は痛いがの。


 いくら慣れたところで、長時間同じ姿勢を続ければ身体は疲れる。


 尻も痛い。


 肩も凝る。


 バイクというもの。


 乗っている時は楽しいのだが、長距離となると別の戦いが始まるよな。


 しかし。


 ユウにとっては、高速道路での移動そのものが随分と楽しいらしい。


 正確には――。


 サービスエリアが、だな。


「マオ! 次のところ、名物あるみたいだよ!」


「…………また寄るのか?」


「せっかくだし」


 その「せっかく」を、今日何度聞いたことか。


 サービスエリアに入る。


 バイクを停める。


 ユウ、店へ向かう。


 名物を見つける。


 食べる。


 満足する。


 再び出発。


 しばらく走る。


 次のサービスエリア。


「マオ、寄ろう」


 …………。


 またか。


 鳥取へ行った時と、何も変わっておらぬではないか。


 そんなことの繰り返し。


 しかも、見るだけでは終わらぬ。


 何かしら食べておる。


 串。


 菓子。


 肉。


 その土地でしか売っていないというものを見つければ、嬉しそうに買ってくる。


 …………。


 おぬしの胃袋。


 どうなっておる?


 以前からよく食べるとは思っておったが、こういう場所へ来ると一層凄いの。


 当然。


 そのたびに我も待つことになる。


 本来であれば、


「早う行くぞ」


 くらいは言いたい。


 だが。


 今回は言えぬ。


 何故なら――。


 予定がずれた原因。


 我。


 報告書を期限近くまで放置した結果、千葉先生が立てていた予定を変更させてしまった。


 …………。


 我、やらかしておる故な。


 ユウが少しくらい寄り道したところで、強く言える立場ではない。


 故に。


 我、待つ。


 ユウ、食う。


 また走る。


 さらに寄る。


 …………。


 岩手。


 遠いの。


 そうして。


 予定より随分と時間がかかり、岩手へ着いた頃には、すでに日は沈んでいた。


 岩手山の近くに予約してあるホテルに到着。


 駐車場にバイクを停め、荷物を持って中に入る。


 そして。


「おっそい!」


 ロビーで待っていた千葉先生に、開口一番怒られた。


「仕方あるまい。サービスエリアをはしごしておったからの」


「美味しかったです」


 ユウ。


 何故そこで満足そうな顔をしておる。


 悪びれる様子、一切なし。


 千葉先生も、そんなユウを見て何か言おうとしたようだが――。


 やがて。


「はぁ~~……」


 深い。


 実に深いため息。


「大体な。どこかの怠け癖のせいで、こっちは予定を変更してるんだぞ……」


 …………。


 おお。


 今度はこちらに来た。


「それは、本当に申し訳ない」


 我、素直に頭を下げる。


 そこはもう、何も言い返せぬ。


「それ、何度目だと思ってる?」


 千葉先生の目が細くなる。


 …………。


 おお。


 怖いぞ。


 顔が怖い。


 仕方あるまい。


 我にも色々と事情が――。


 …………。


 いや。


 仕方なくはないのだが。


 完全に我が後回しにしただけよな。


「本当にすまぬ。これからは、きちんと報告する故」


「前にも似たようなこと聞いた気がするんだがな」


「…………」


 言ったかもしれぬ。


 いや。


 恐らく言っておる。


 宿題。


 提出物。


 そして今回の報告書。


 我。


 成長しておらぬのでは?


 そんな我を睨んでいた千葉先生が、今度は隣のユウに顔を向けた。


「白崎!」


「はい!」


 ユウ、姿勢を正す。


「お前に命令する」


「はい!」


「帰ったら、いの一番にこいつに報告書を作らせろ。絶対に後回しにさせるな」


「分かりました! しっかり見張ります!」


「ちょっと待て」


 何故、我の監視役が増えておる?


 いや。


 AIモロイもおるから、すでに監視されているようなものではあるが。


「報告書一つで訓練を止めてたら、高校に行かなかった意味がねぇだろ」


 …………。


 その言葉に、我は口を閉じた。


 確かに。


 我もユウも、高校へ進む道を選ばなかった。


 仮免ハンターとして実地経験を積み、早く正式なハンターになる。


 それが我ら自身で選んだ進路。


 ならば。


 報告書が面倒だからと放置し、そのせいで訓練の日程まで遅らせておっては、本末転倒よな。


「……うむ」


 反論。


 できぬ。


「マオ。次からちゃんとやろうね」


「おぬしに言われると、少し腹立たしいの」


「でも見張るよ?」


「…………頼む」


 くっ。


 魔王たる我が、幼馴染に報告書を監視されることになろうとは。


 元の世界ではモロイ。


 こちらではユウ。


 …………。


 何故、我の周りには書類を急かす者ばかり集まるのであろうな。


 いや。


 我が溜めるからか。


「もういい」


 千葉先生が呆れたように頭を掻く。


「今日はしっかり寝ておけ。今回の訓練ダンジョンは、長く潜ることになるかもしれないからな」


 む?


 そこまでか?


「一週間分でしたよね」


 ユウが確認する。


「ああ」


 今回。


 持ってくるように指示された食料や消耗品は、一週間分。


 前の訓練よりも明らかに多い。


 当然、荷物も増えておる。


 今回は積載用のバッグまで増やし、バイクから降ろす荷物も前回より多かった。


 必要だから持ってこいと言われた以上、前回より長くなる可能性があるということなのだろうが――。


 ユウも同じことを考えたらしい。


「そこまで必要なダンジョンってことは、環境型ですか?」


 おお。


 我もそう思っておった。


 以前。


 中学校の授業で習ったダンジョンの分類。


 階層型。


 環境型。


 機構型。


 そして、複数の特徴を併せ持つ複合型。


 その中でも環境型は、他と少し毛色が違う。


 森林。


 荒野。


 砂漠。


 洞窟。


 入口からは想像もできぬほど広大な自然環境が、ダンジョン内部に形成されている。


 中には天候が変化したり、昼と夜が移り変わったりする場所もあると教わった。


 無論。


 全ての環境型がそうではない。


 内部の広さも環境も、それぞれ違う。


 だが。


 環境型で特に注意せねばならぬことがある。


 広さだ。


 中には、非常に広大なものも存在する。


 故に。


 道を見失う。


 帰る方向が分からなくなる。


 探索に夢中になって、想定以上に奥へ入り込む。


 実際、迷った末に帰還できなくなりかけたハンターの事例も、授業で習った。


 単純に強いモンスターを倒せばよい、という場所ではない。


 探索そのものが危険。


 そういうダンジョン。


 もし今回が環境型なのであれば、一週間分の物資を持ってこいと言われたのも納得できる。


「入ってみてからだな」


 千葉先生は、それ以上教える気がないらしい。


「教えてくれぬのか?」


「訓練だからな」


「むう」


「まあ、楽しみにしておけ」


 …………。


 その言い方。


 何ぞありそうではないか。


 前回。


 富士樹海で悪戯ばかりしてくる変なダンジョンに連れていかれたばかりなのだぞ。


 我。


 少し警戒。


 だが。


 同時に楽しみでもある。


 これまでとは違うダンジョン。


 しかも、今回を終えれば本免許の試験にまた一歩近づく。


 ならば。


 挑むしかあるまい。


「とりあえず、飯を食いに行くぞ」


 おお。


 その言葉を待っておった。


「奢ってやる」


「やったー! マオ、何食べようか」


 ユウの顔が、一瞬で明るくなる。


 先ほどまでサービスエリアで散々食べておったよな?


 まだ食うのか?


 いや。


 聞くだけ無駄か。


「我は寿司がよいの」


 せっかく遠くまで来たのだ。


 旨い魚。


 よいではないか。


 そう思って提案したのだが。


「アホか」


 即答。


「食い放題の焼肉だ」


「焼肉!」


 ユウの目が輝いた。


「いいね! 先生、ありがとう!」


「ああ」


 千葉先生も満足そうに頷いておる。


 …………。


 ユウよ。


 おぬし。


 気づいておらぬな?


 我は千葉先生の顔を見る。


 次に。


 満面の笑みを浮かべるユウを見る。


 そして。


 もう一度、千葉先生。


 …………。


 うむ。


 間違いない。


 これは先生の作戦ぞ。


 以前。


 普通の店でユウに思いっきり食われた。


 恐らく、あれを反省したのだ。


 ならば最初から値段の決まっている食べ放題へ行けばよい。


 ユウがどれだけ肉を食おうが。


 御飯を何杯おかわりしようが。


 最後にデザートまで詰め込もうが。


 支払う額には上限がある。


 なんと堅実な判断。


 流石、千葉先生。


 学習しておる。


 一方。


「何食べようかな。カルビとタンと……」


 ユウ。


 すでに頭の中が肉でいっぱい。


 おぬしは少し気づいた方がよいと、我は思うぞ。


 まあ。


 気づいたところで食う量が減るとは思えぬが。


「行くぞ。車に乗れ」


「はーい」


「うむ」


 千葉先生がホテルの出口に向かい、ユウが楽しそうについていく。


 我もその後を追った。


 寿司ではなかったのは少し残念。


 だが。


 焼肉も嫌いではない。


 それに――。


 千葉先生の財布に優しいのであれば、問題なかろう。


 何せ。


 我らの指導で苦労を掛けておるからの。


 …………。


 主に我が。


 今日は大人しく、焼肉をいただくとしよう。

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