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魔王と勇者 ~我、異世界転生した!~  作者: 珈琲ノミマス
第二章 ダンジョンへ行こう

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第52話 我、思い知る

 どうやら、少なくとも行き止まりではなかったようだの。


 通路の奥へ進むにつれ、襲いかかってくるゾンビの数が少しずつ増え始めた。


 一体一体は弱い。


 動きも遅く、狙うべき場所も分かっておる。


 だが、こうも数が多いと、流石に面倒になってくるな。


 新たな分かれ道に差しかかった、その時。


 正面から三体。


 さらに右の通路から、四体のゾンビが姿を現した。


 二方向から挟み込むように、我らに迫ってくる。


 魔法を使えば、この程度の敵など一気に殲滅することもできよう。


 広範囲に炎を放ち、通路ごと焼き尽くせば、数など関係ない。


 だが、それでは駄目よな。


 今回の目的は、我らがダンジョンの中で戦い、探索するための経験を積むこと。


 今の段階で我が魔法に頼り、すべてを一瞬で終わらせてしまえば、我のためにもユウのためにもならぬ。


 我は正面から迫ってきたゾンビの首をシールドクローで挟み、内側のソーを回転させた。


 腐敗した肉に刃が食い込み、頭部が胴体から離れる。


 その横から別の一体が腕を伸ばしてきたため、今度は腕に装着したシールドクローを正面から叩きつけた。


 鈍い衝撃と共に、ゾンビの身体が石床に倒れ込む。


 そこに浮かせていた一枚を落とし、起き上がる前に頭部を打ち砕いた。


 首を飛ばし。


 盾で殴り倒し。


 ユウの死角に回り込もうとする個体には、別のシールドクローを差し込んで動きを止める。


 六枚を同時に操ることには慣れておる。


 だが、ユウを守りながら戦うとなれば、まだ完全とは言えぬな。


「マオ。右の盾を、もう少し後ろに」


「心得た」


 ユウの声を聞き、右側に浮かせていたシールドクローを即座に後方へ下げる。


 おっと。


 また少し近づけすぎてしまったか。


 ユウの視界を塞がぬ位置。


 セイヴェリアを振り抜いても当たらぬ距離。


 それでいて、何かあればすぐに攻撃を防げる場所。


 頭では理解しておるが、動き続けるユウに合わせて位置を保つとなると、中々に難しい。


 我、まだ感覚を掴みきれておらぬな。


 だが、先ほどよりはよい。


 ユウも邪魔に感じれば、すぐに伝えてくれるようになった。


 我もその声に合わせ、シールドクローの位置を変える。


 失敗して。


 調整して。


 また失敗したら、さらに直す。


 今はそれを繰り返すしかあるまい。


 そう考えながら、我は正面から迫ってきたゾンビに二枚のシールドクローを向かわせた。


 その時だった。


 ユウの斜め後ろ。


 他のゾンビに隠れていた一体が、不自然な動きを見せた。


 足を止め、上半身を大きく反らしておる。


 他の個体のように腕を伸ばしてくる様子もない。


 何だ?


 腹の辺りが、妙に膨らんで――。


 いかん!


「ユウ! 離れよ!」


 我の声を聞いた瞬間、ユウは理由を尋ねることなく床を蹴った。


 セイヴェリアを身体の前に構えたまま、一気に後方へ飛び退く。


 直後。


 死角にいたゾンビが口を大きく開き、腹の中に溜め込んでいた汚物を勢いよく吐き出した。


 腐臭を放つ液体が、先ほどまでユウのいた場所に飛び散る。


 ユウは避けた。


 だが、このままでは周囲に弾けたものが身体にかかる。


「やらせぬよ」


 我のシールドを舐めるでない!


 正面のゾンビに向かわせていた一枚を即座に引き戻し、ユウと吐瀉物の間に滑り込ませる。


 飛んできた汚物が装甲にぶつかり、その表面で弾けた。


 うむ。


 一滴たりとも、ユウには届いておらぬな。


 そのまま防御に使った一枚を前方に押し出す。


 シールドクローは汚物を吐き出したゾンビの身体に正面から衝突し、そのまま石壁に押しつけた。


 さらに力を加える。


 ゾンビの身体が盾と壁の間で押し潰され、力を失って崩れ落ちた。


 我は汚物を受けた一枚をユウから離し、他のシールドクローにも触れぬよう、後方に下げた。


 流石に、この状態のままユウの近くに置くわけにはいかぬ。


 戦闘が終わり、安全な場所に着いたら、すぐに汚れを落とさねばな。


「ありがとう、マオ」


「問題ない。流石に、あのようなものを浴びるのは嫌であろう」


「それね!」


 ユウは顔を僅かに引きつらせながら答えた。


 うむ。


 我も嫌だ。


 傷を負うよりはましかもしれぬが、全身をあの汚物にまみれさせて探索を続けるなど、考えたくもない。


 臭いも酷い。


 服に付着すれば、セーフスポットに着くまで落とすことも難しかろう。


「じゃあ、続き!」


 ユウはすぐに気持ちを切り替えると、再びゾンビの群れに飛び込んでいった。


 踏み込みと同時にセイヴェリアを横に振るう。


 刃が一体目の首を捉え、そのまま頭部を切り飛ばした。


 返す動きで次の一体に近づき、今度は斜め下から首を斬り上げる。


 また首。


 流石、首置いてけウーマンよ。


 敵を見る度、迷いなく首を狙いおる。


 かつて我の首ばかり狙っていた時と、何一つ変わっておらぬではないか。


 ……などと思いつつ。


 我も左右から二枚のシールドクローを飛ばし、それぞれゾンビの首を挟み込んだ。


 内側のソーを作動させ、そのまま二体の頭部を切り落とす。


 …………。


 我も人のことを言えぬな。


 ゾンビには頭部を落とすのが最も確実なのだ。


 決して、ユウの影響を受けたわけではないぞ。


 恐らく。


 そうして襲いかかってくるゾンビを倒しながら、我らは通路の奥へ進み続けた。


 やがて、前方の光景が変わる。


 これまで続いていた細い石造りの通路が途切れ、その先に少し広い空間が見えてきた。


 壁に並ぶ松明の数も多く、通路より明るい。


 床には目立った汚れがなく、モンスターの姿も見当たらぬ。


 それに、先ほどまで通路に漂っていた腐臭も、この場所ではほとんど感じない。


 あれは――。


「セーフスポットかの」


 我がダンジョンマスターの能力でダンジョンを作っていた頃にも、同じような場所を設けておった。


 モンスターが近づかず、罠も作動しない休憩用の区画。


 魔族たちはそこで装備を確かめ、怪我の手当てをしておった。


 そして、魔素が固まり、クリスタルが生える場所でもある。


 魔族にとって、クリスタルは力を補うための携帯食。


 我の中では、クリスタルを食べる場所。


 すなわち、お弁当エリア。


 この世界の人間たちは、セーフスポットと呼んでおるようだがな。


 名称は違えど、休息を取る場所という役割は同じ。


 ここならば、周囲を警戒しながら歩き続ける必要もない。


 ようやく一段落できそうだの。


 我は周囲にモンスターがいないことを確かめると、後方に下げていたシールドクローを少し離れた場所に浮かせた。


 火力を絞り、収納部分に火が触れぬよう、汚物を浴びた表面だけに炎をまとわせる。


 淡い炎が装甲をなぞり、こびりついていた汚れを焼いていく。


 やがて残った灰を軽く振り落とし、クローとソーが問題なく動くことを確かめた。


 うむ。


 これで、ようやく近くに戻せるな。


 ユウも周囲にゾンビがいないことを確かめると、セイヴェリアを下ろして息を吐いた。


「多くなってきたね」


「うむ。個体は弱いが、こうも群がられると面倒よな」


 一体を倒すだけならば簡単。


 だが、前と右から同時に迫られれば、常に周囲を見続けなければならぬ。


 ユウの位置。


 シールドクローの配置。


 次に襲ってくる敵。


 さらに、先ほどのような特殊な行動をする個体まで混ざっておる。


 身体の疲れはそれほどないが、意識を休める暇がないことの方が堪えるな。


「お前らは、よくやってるよ」


 後からセーフスポットに入ってきた千葉先生が、倒したゾンビの横たわる通路を振り返りながら、我らに声をかけた。


 褒められた。


 だが、素直に喜ぶ気にはなれぬ。


「しかし、学んだことをまだ十分に活かしきれておらぬ」


「そうだね。ダンジョンの進み方も、思い出すまで時間がかかったし」


 ユウも我と同じことを考えていたらしい。


 松明や煙から空気の流れを読むことは、授業できちんと学んでおった。


 だが、実際に分かれ道に立った時には、すぐに思い出すことができなかった。


 それに、シールドクローの位置を戦闘中に伝え合うことは、つい先ほど千葉先生から教わり、我らが実践し始めたばかりだ。


 ユウが声を上げ、我が位置を調整する。


 頭では理解できても、動き続けながら互いに合わせるのは、そう簡単ではないのだな。


「自分たちで問題に気づけているなら、それでいい」


「そうかの……」


 千葉先生の言葉に少しだけ救われながら、我は壁際に腰を下ろした。


 身体から力を抜くと、張り詰めていた意識が僅かに緩む。


 ユウもセイヴェリアを傍らに置くと、そのまま石床に寝転がった。


「私、少し舐めてた。訓練用のダンジョンで、G級よりも下だって聞いてたから」


 天井を見上げたまま、ユウがぽつりと零す。


「我も同じだ。個体は強くないからと、脅威まで低く見積もってしまっておった」


 一体ずつならば、我らの敵ではない。


 だが、数が増えれば周囲を見る余裕が削られる。


 前方の敵に気を取られれば、死角にいる個体の異変を見落とすかもしれぬ。


 ユウを守るためにシールドクローを近づけすぎれば、今度は視界や剣の軌道を塞いでしまう。


 弱い敵しかいないから安全なのではない。


 弱い敵を相手に、我らがどう動くかを学ぶ場所なのだ。


「間違いであったな」


 そう言葉にして認めると、胸の奥に残っていた僅かな甘さまで、はっきりと自覚できた。


「そこまで自分たちで反省できているなら、十分だ。まだ初日だからな。とりあえず、軽く携帯食を食っておけ」


「そういえば、水も飲んでおらなかったの。今は何時ぞ?」


 千葉先生に言われて初めて、喉が渇いていることに気づいた。


 我はシールドクローの収納を開き、中から携帯食と水を取り出す。


 そのまま何気なく、腕に装着しているスマートウォッチに視線を落とした。


「…………もう六時間も経っておったのか」


「ええっ! そんなに経ってたの?」


 我の言葉を聞いたユウが、石床に寝転んだまま勢いよく上半身を起こした。


 驚いた顔で、自分のスマートウォッチを確認しておる。


 表示されている時刻は、当然ながら我のものと同じ。


 ダンジョンに入ってから、すでに六時間が経過していた。


 我の感覚では、それほど長い時間が過ぎたとは思えぬ。


 せいぜい二、三時間ほど。


 それくらいにしか感じておらなかった。


「ようやく気づいたか。これは現場に入らないと実感しにくいが、前にも教えただろ」


 千葉先生も壁際に腰を下ろすと、携帯食の袋を開いた。


 中身を一口食べてから、我らの顔を交互に見る。


「白崎。どうして時間が経ったことに気づかなかったと思う?」


「…………ダンジョンの中では、時間の感覚が狂いやすいから」


「そうだ」


 千葉先生は短く頷き、今度は我に視線を向けた。


「次、天神。ここは、どの種類のダンジョンだ?」


「階層型だと思われる。六時間進んだが、自然環境も、謎解きや大掛かりな仕掛けも見当たらぬ。現時点では、複合型である可能性も低いだろう。ただし、この先にも小規模な罠がないとまでは断定できぬな」


「よし。二人とも正解だ」


 うむ。


 授業で習った内容は、きちんと覚えておった。


 今度は思い出すまで、それほど時間もかかっておらぬ。


 千葉先生は携帯食をもう一口食べると、ゆっくりと言葉を続けた。


「特に、こういう外の光が届かない階層型や、閉鎖された場所を進む機構型では、時間の感覚が狂いやすい。太陽の位置も分からない。空の明るさも変わらない。腹が減った、喉が渇いたという感覚も、戦闘や探索に集中しているうちは後回しになりやすいからな」


 確かに、この場所には松明の光しかない。


 我らが歩いている間、その明るさはほとんど変わらなかった。


 外が昼なのか。


 すでに日が沈んでいるのか。


 スマートウォッチを確認しなければ、知る方法がない。


「気づいた時には、丸一日近く休まず歩いていたというハンターの話もある。環境型の場合は、内部に太陽や昼夜が再現されている場所もあるから、そういう場所では時間の変化に気づきやすい。ただし、すべての環境型がそうとは限らないぞ」


「なるほどの」


 千葉先生の話を聞きながら、我は携帯食を口に運ぶ。


 固められた生地を噛むと、ほのかな甘みが広がった。


 水も飲む。


 冷たさが喉を通り、身体の奥に染み込んでいく。


 そこで、我は一つのことに気づいた。


 我らはこの六時間、ほとんど休むことなくダンジョンを進み続けていたのだ。


 周囲の音を聞き。


 臭いを嗅ぎ分け。


 通路の先を警戒し。


 襲いかかってくるゾンビを倒しながら、分かれ道では進む方向を考える。


 我はユウの動きを追い続け、シールドクローの位置を調整しておった。


 ユウもまた、我や盾の位置を意識しながら、前方の敵へ対処し続けていたはず。


 体力には、まだまだ余裕がある。


 足も腕も、それほど疲れてはおらぬ。


 だが、張り詰め続けていた意識の方は違う。


 戦闘が終わっても、いつ次の敵が現れるか分からない。


 物音が聞こえる度に注意を向け、暗がりがあれば何か潜んでいないか確かめる。


 そうして六時間もの間、一度も気を抜かずに進み続けていたのだ。


 身体ではなく、精神の方に疲れが溜まっておったのだな。


 セーフスポットに入り、ようやく緊張が解けたことで、それを自覚できた。


「お前らには、まだ体力も集中力も残っていた。それに、モンスターが出る通路で立ち止まるより、ここまで進んだ方が安全だったからな」


 千葉先生は水を一口飲み、容器を傍らに置いた。


「だが、俺がいない時は、自分たちで時間を確認しなきゃならん。疲れを感じてから休むんじゃ遅いこともある」


 千葉先生は、我らが限界になるまで放っておいたわけではない。


 後ろから様子を見て、まだ進めると判断しておったのだ。


 だが、実戦では千葉先生が常に傍にいるとは限らぬ。


 己の状態は、己で把握しなければならない。


「これも、実際に体験しないと分からないことだからな」


 千葉先生の言葉が、先ほどまでより重く感じられた。


 授業で聞いた時には、我も理解したつもりでおった。


 ダンジョン内では時間の感覚が狂う。


 適度に時刻を確認し、水分と栄養を補給する。


 言葉として覚えるだけならば簡単だ。


 だが、実際に入ってみれば、六時間が過ぎるまで水を飲んでいないことにすら気づかなかった。


「たとえ訓練用であろうと、甘く見ていた我らが悪い」


「うん」


 ユウも水を飲み、真剣な表情で頷いた。


「この先は、もっと気を引き締めよう。ここは訓練用のダンジョンだけど、相手にしてるのは本物のモンスターなんだね」


 ユウは一度言葉を切り、自分の傍らに置いたセイヴェリアに視線を向けた。


「訓練でも、やってることは実戦と同じだね」


「うむ」


 我も頷く。


 訓練用だから安全なのではない。


 千葉先生が付き添っているから、何をしてもよいわけでもない。


 一つ判断を誤れば、怪我をする。


 助けを待つ間に、命を失う可能性さえある。


 そのことを、我らはようやく身をもって理解し始めておった。


「あと、俺からのアドバイスは一つだ」


 まだ何かあるのか?


 携帯食を口に運びながら、我は千葉先生に顔を向けた。


「何ぞ?」


「何で、銃を一度も使わなかった?」


 …………。


 銃?


 言われて初めて、左胸のホルスターに意識が向いた。


「撃つ必要がないと判断して使わなかったなら、それでもいい。だが、お前らは違うだろ」


 千葉先生は、我とユウのホルスターに順番に視線を向けた。


「使わなかったんじゃない。存在を忘れていただけだ」


 おおう。


 我、うっかり。


 確かに、ダンジョンへ入る前に弾薬まで確認し、いつでも使えるよう準備しておった。


 それなのに、ゾンビと遭遇してからは、シールドクローを操ることばかり考え、銃には一度も手を伸ばしておらぬ。


 完全に存在を忘れておったわ。


「うむ。我としたことが、準備しただけで満足しておった」


「私も。前に突っ込んで、剣で倒すことしか頭になかった」


 ユウも傍らに置いたセイヴェリアを見ながら、僅かに眉を下げた。


「白崎が接近する前なら、何発か撃って数を減らすこともできた。接近した後でも、離れている敵や、回り込もうとしている奴を狙えた場面はあった」


「でも、マオが撃ったら、私に当たらない?」


「だから、射線を見るんだよ」


 千葉先生は人差し指を立て、我とユウの間に一本の線を引くように動かした。


「白崎が前にいるなら、天神はむやみに撃つな。白崎も、天神が撃てる位置を作るなら、その前に声をかけて射線から外れろ」


「なるほどの」


「特に天神。お前の銃は威力も貫通力も高い。上手く使えば、敵が固まっている時に、一発で複数にダメージを与えられる」


 千葉先生はそこで一度言葉を切り、我を真っ直ぐに見た。


「その代わり、撃った弾が敵を貫いた後、どこに飛ぶかまで考えろ。石壁に当たれば、思わぬ方向に跳ねることもある。白崎がいないからといって、何も考えずに撃っていいわけじゃない」


「うむ。肝に銘じよう」


 銃は強い。


 我の選んだ銃ならば、なおさら。


 威力と貫通力の高さは利点だが、その分だけ射線の先に注意を払わねばならぬ。


 敵を貫いた弾が、さらに奥にいる何かに当たる可能性もある。


 石壁に当たれば、こちらの予想しない方向に跳ねることさえあるのだ。


 味方。


 見えない場所にいる人間。


 あるいは、壊してはならぬもの。


 撃つ前に、その先まで見なければならないのだな。


「それと、弾は有限だ。ゾンビ一体を倒す度に使えと言ってるわけじゃない。剣やシールドクローで十分なら、それでいい」


 千葉先生は携帯食の残りを口に放り込み、袋を畳んだ。


「だが、銃が必要な場面でも忘れていたんじゃ、持ってきた意味がない。剣も、盾も、銃もある。状況を見て、一番安全な方法を選べ」


「うむ」


「はい」


「せっかく身につけた技術を無駄にするなよ」


 使えるものは使い、少しでも安全に進む。


 持っている武器を、すべて使わなければならぬわけではない。


 大切なのは、何を使うべきか考えた上で選ぶこと。


 それも授業で何度も教えられてきたことだった。


 だというのに、実際にダンジョンに入れば、目の前の敵を倒すことに意識を向けすぎ、選べるはずの手段を忘れてしまっておった。


 授業で知識を得るだけでは足りぬ。


 実際に使い、失敗し、こうして指摘を受けながら身につけていく。


 やはり、千葉先生は我らの先生よな。

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