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魔王と勇者 ~我、異世界転生した!~  作者: 珈琲ノミマス


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第12話 我、隔離?

 千葉先生よ。


 我は、先ほどから不思議に思っておるぞ。


 体育館を出た我らは、一度校舎の中へ入った。


 ならば、そのまま教室へ向かうものだと思うよな?


 だというのに、何故また外へ出る?


 我とユウは千葉先生の後ろについて校舎を通り抜け、再び屋外へ出ておった。


 …………。


 教室は、こちらではないのか?


 我は千葉先生の背中を見上げながら、そのまま視線を前方へ向けた。


 校庭の向こう側。


 そこには、真新しい八棟の校舎が並んでおる。


 もしかして。


 我らが向かっているのは、あれか?


 入学前に行われた見学会でも、この学校へ来たことはある。


 だが、あの時はまだ工事の真っ最中。


 周囲は柵や幕で覆われており、建物の外観も、ましてや内部も満足に見ることはできなかった。


 それが今では、八棟とも完成しておる。


 まさかとは思うが……。


 それぞれのクラスに対して、一つずつ校舎が用意されているのだろうか?


 …………。


 我、困惑。


 それに。


 先ほどから、他の新入生の姿がまったく見当たらぬ。


 入学式におったのは、我らダンジョン科の新入生だけだったように思える。


 ダンジョン科ではない新入生たちは、どこにおる?


 我らとは別に、入学式が行われているのか?


 それとも、登校する日そのものが違うのだろうか?


 …………。


 わからぬ。


 わからぬことばかりではないか。


「先生。どこまで行くんですか?」


 おお、ユウよ。


 我も、ちょうどそれを聞こうと思っていたところだ。


 いや。


 本当ぞ?


 決して、聞く機会を逃しておったわけではない。


 我は心の中で頷きながら、千葉先生の返事を待った。


 我らが歩いているのは、校舎から校庭の端まで伸びる長い屋根付きの通路。


 その両脇には桜の木が並び、春風が吹くたびに淡い花びらが舞っておる。


 実に美しい光景よな。


 本来ならば、足を止めて眺めたいところだ。


 だが、今はそれよりも気になることが多すぎる。


 何故、教室へ向かうだけで、これほど歩かされる?


 何故、他の新入生がおらぬ?


 そして。


 何故、校庭の端にクラスごとの校舎らしき建物が並んでおる?


「あなたたちは、通常の新入生とは違います。詳しい説明は教室で行います」


 …………。


 それだけか?


 我の疑問は、何一つ解決しておらぬぞ。


「わかりました」


 ユウよ。


 わかったのか?


 我は隣を歩くユウへ顔を向けた。


「何がわかったのだ?」


「え? わからないことがわかったよ」


 …………。


 それは、そうだが……。


 いや。


 わからないということしか、わからなかったのではないか?


 それを「わかった」と言ってよいものなのか?


 我、余計に困惑。


 だが、ユウはそれで納得したらしく、何事もなかったように歩き続けておる。


 まったく。


 おぬしは細かいことを気にせぬよな。


 まあよい。


 詳しい説明は教室で聞けるらしい。


 今は大人しく、千葉先生の後についていくしかあるまい。


 歩きながら八棟の校舎を眺めていると、それぞれの正面に大きな文字が掲げられていることに気づいた。


 A。


 B。


 C。


 D。


 E。


 F。


 G。


 そして――。


 S。


 …………。


 やはり、クラスごとに一棟ずつ用意されておるのか?


 しかも、どの校舎も一階建てではない。


 一階。


 二階。


 三階。


 四階。


 すべて四階建て。


 …………。


 ちと、金をかけすぎではないか?


 一クラスにつき、最大でも五名。


 我らS組に至っては、我とユウの二人だけ。


 そのために、一棟丸ごと用意したとな?


 それが八棟。


 土地代。


 建築費。


 維持費。


 設備費。


 清掃や修繕にかかる費用まで考えれば、相当な額になるはずだ。


 …………。


 我、魔王として財源が心配。


 この学校。


 予算は大丈夫なのか?


 無論、ダンジョンハンターの育成が重要なのはわかる。


 命に関わる技術を学ぶ以上、必要な設備へ金をかけること自体は悪くない。


 だが。


 使える金には限りがある。


 必要な場所へ必要なだけ使い、無駄を減らす。


 国を治める上では、当然のことぞ。


 元の世界にいた頃も、毎年のように予算を巡って頭を悩ませたものだ。


 新しい設備が欲しい。


 城壁を直したい。


 兵士の装備を更新したい。


 祭りの予算を増やしてほしい。


 我のおやつ代が欲しい。


 皆、好き勝手に要求を出してきおった。


 そして最後に、それらをまとめて我の机へ置くのだ。


 …………。


 思い出しただけで、少し頭が痛くなるな。


 もし、ここにモロイがおれば――。


『魔王様。必要性を説明してください』


『魔王様。費用に見合う効果はあるのですか?』


『魔王様。まさか、見栄えがよいという理由だけではありませんよね?』


『魔王様。自分で買ってください。経費では落とさせません』


 そのような小言を、延々と聞かされるに違いない。


 しかも、校舎を一棟ずつ確認し、帳簿を開き、最後には責任者を呼び出すだろうな。


 …………。


 うむ。


 容易に想像できる。


 モロイよ。


 おぬしがこの光景を見たら、何と言うのだろうな。


 少なくとも、素直に褒めることだけはあるまい。


 む?


 千葉先生が、校舎入口の脇にある装置に何かをかざしておるな。


 あれは、カードか?


 短い電子音が鳴ると同時に、施錠されていた扉が静かに開いた。


 …………。


 そこまでするものなのか?


 学校の校舎へ入るだけぞ?


 普通ならば、扉を開けてそのまま入ればよいはずだ。


 それなのに、この校舎はカードによる認証がなければ入れぬらしい。


 まるで、重要な資料か危険物でも保管している施設のようではないか。


 …………。


 我らは、これからここで何を学ぶことになるのだ?


 我、早くも心配。


「どうぞ。一年生の教室は二階です」


 千葉先生に促され、我とユウは校舎の中へ足を踏み入れた。


 うむ。


 そのまま案内されてはおるが、気になるものが多いの。


 一階にも幾つか扉が並び、見慣れぬ設備らしきものも目に入る。


 本当ならば、一つずつ確認したいところだ。


 だが、今は千葉先生についていくことが優先よな。


 ここで勝手に立ち止まり、迷子になるわけにもいかぬ。


 我らは階段を上り、二階へ向かった。


 そして、階段を上りきったところで、千葉先生が廊下を示す。


「このフロアが、今後あなた方の学ぶ場となります」


 うむ。


 教室と記されたプレートはわかる。


 廊下側の窓から中を覗けば、小学校で使っていた教室よりも少し狭く作られておるようだ。


 人数が少ないのだから、それも理解できる。


 我らS組は、我とユウの二人だけだからな。


 広すぎる教室を用意しても、空いた場所ばかりが目立つだけだろう。


 だが。


 理解できぬのは、教室よりもさらに奥だ。


 我は廊下に並ぶ扉と、その横に取り付けられたプレートへ順番に視線を向けた。


 まずは――。


 男子更衣室。


 その隣には、女子更衣室。


 うむ。


 ここまでは理解できる。


 ダンジョン科では、実技の授業も行われるのだろう。


 制服から専用の装備へ着替えることもあるはずだ。


 男女それぞれに更衣室が必要になるのも当然よな。


 その先は――。


 休憩室。


 …………。


 誰の?


 先生たちのためか?


 それとも、もしかして我らが使うのか?


 授業の合間に休むだけなら教室でもよかろうに、何故わざわざ専用の部屋が用意されておる?


 我、疑問。


 そして、さらにその先。


 宿泊室。


 …………。


 我ら、ここで寝るの?


 学校ぞ?


 何故、校舎の中に泊まるための部屋があるのだ?


 ダンジョン科では、学校へ泊まり込まなければならぬ授業でも行われるのか?


 それとも、緊急時に備えるため?


 いや。


 どちらにしても、中学校へ入学したばかりの我には説明が足りなさすぎる。


 そして、その隣にはトイレ。


 …………。


 うむ。


 もう、わけがわからぬの。


 更衣室。


 休憩室。


 宿泊室。


 トイレ。


 これだけで、この二階だけでも寝泊まりできそうではないか。


 小学校とは違いすぎておる。


 いや、中学校というものが多少違うことは理解していたつもりだ。


 だが、これは単なる小学校と中学校の違いではないよな?


 明らかに、このダンジョン科だけが異質だ。


「机の上にネームプレートがありますので、自分の名前が置かれた席へ着いてください」


 千葉先生は、何事もないような口調でそう告げると、教室の扉を開いた。


 …………。


 千葉先生よ。


 あまりにも自然に案内しておるが、これはおかしくないということなのか?


 カード認証が必要な校舎。


 クラスごとに分けられた専用の建物。


 一つの階に用意された更衣室と休憩室。


 さらに、宿泊室。


 それらが、この学校では当たり前なのか?


 我は教室へ入っていくユウの背中と、平然としている千葉先生を交互に見た。


 …………。


 我だけが気にしすぎなのだろうか?


 いや。


 そんなはずはないよな?


 我、理解不能。

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