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その引き金は重く  ささやかなゴーレム戦争  作者: アーマナイト


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1-3 シラカミ大尉の憂鬱 シラカミ大尉視点

 シラカミ大尉視点





「以上です」


 テキパキと報告をしたアオイケ中尉はいつもより陰鬱とした表情をしていて、二十二歳という年齢にしては老成した雰囲気がある。


 先が二股に別れた角を二本生やしているように見えるが、実際には独立した四本の角を生やしていて、それだけで同じ鬼族から憧憬の対象になりそうだ。


 しかし、現実には憧憬の対象どころか、本人が望みもしていないのに実戦へと放り込まれている。


「ご苦労様。それで中尉、なにか他に言いたいことはあるか?」


 アオイケ中尉は責任感が強く自罰的なので色々とため込んでいるようなので聞いてみると、予想通り即座に否定される。


「いえ、ありません」


「遠慮せずに言ってくれ。礼儀を忘れて暴言でもかまわん」


 アオイケ中尉の目を見据えて、強く口にする。


 多少、強引でも吐き出させないと、彼女は自分の心がすり減るまでため込んでしまう。


「…………では、我々に全滅を望むなら、最低限の礼儀として死んでこいと命じてくれませんか?」


 ため息をしてから、告げるアオイケ中尉の言葉は淡々としている。


 激情にかられることもなく、全滅を望まれた者の口調ではない。


 そのことが少し悲しくなる。


 彼女を今よりも失望させるが、現実はもっとお粗末で酷く醜悪ということだろう。


「なぜ、君たちの全滅を望んでいると?」


「機関砲を装備した相手に、支援砲での反撃を禁止されれば、誰でもそう解釈するかと」


「なるほどな、だが、私も上層部も君たちの死を望んではいない」


 そう、私も上層部も彼女たちの死を望んでいたわけではないのだ。


 少なくとも私はそのような命令をされてはいない。


「では、あれをどう解釈せよと」


 アオイケ中尉は理解できなというように、首を傾げる。


「そもそもだ、我々は君たちに支援砲の発砲を禁止していない」


 私の言葉に、アオイケ中尉の視線がゆっくりと鋭くなる。


「どういう意味です。ならなぜ我々は振動剣を振り回すことになったんです」


「我が国の制度上の制約だろうな」


 私の言葉に、アオイケ中尉は珍しく間抜けな表情を受けべて応じた。


「はっ?」


「君からの支援砲の発砲許可の申請は速やかの本国に回された」


 前線からの申請は、速やかに本国へと届けられた。


 ただ、返信はない。


 その理由も申請を黙殺されたというような高度な政治的な判断ではないことが情けなくなる。


「では、なぜ許可されなかったのです」


「今頃、閣議決定をしているところだろう」


 私の告げた言葉が、よほど響いたのかアオイケ中尉は頬を引きつらせている。


「…………冗談ですか?」


 冗談であればどれだけ救いになるだろう。


 国防隊員を戦争中の外国に派遣して、現場から自衛のために発砲するための申請が、平時の速度で遅々と処理される。


 現場で交戦して命の危機に直面している者からすれば、本国の正気を疑うだろう。


「事実だ。申請を受け取った総理大臣が許可して、次は主要な大臣を集めて閣議で許可して、上院の過半数の賛成が得られれば、支援砲を撃つことを認められる」


「…………そうですか。次からは、無理して振動剣を使わなくても、支援砲を撃てるのですね」


 色々な感情を飲み込んだ上で紡がれたアオイケ中尉の言葉は、しかし、彼女が大きな誤解をしていることを示している。


「……中尉」


「なんでしょう?」


「君は大きな勘違いをしている」


「勘違いですか?」


「ああ、許可されるのは、この前の申請だ」


「は? どういう意味でしょうか?」


「再び、君が支援砲を撃つ必要がある状況になったら、撃つためにはもう一度許可をもらう必要がある」


 私の言葉に、アオイケ中尉のかすかにあった表情が完全に抜け落ちた。


「…………冗談ですか?」


「事実だ」


「改善は可能ですか?」


「できるかぎり、交渉はする」


 私は彼女たちの上官なのに、私の言葉はこんなにも空虚であまりにも無力だ。


 現場でその身を危険にさらす者にとっては、気休めにも、慰めにもならない言葉だろう。


「…………今回のような護衛対象がいる任務は発生するのでしょうか?」


 アオイケ中尉の言葉を否定できればどれだけ幸福だったろう。


 しかし、この国の現状と派遣されている国防隊の立ち位置を把握すれば、輸送部隊の護衛任務が発生する確率が増えることはあっても、なくなることはないだろう。


 本国の政治家たちは国防隊を国外に派遣することに関して長々と議論をしても、派遣された国防隊がどのように運用されて、どのような苦境にあるかは与野党関係なく興味がないらしい。


 そして、彼らを選出する国民にしても、マイナーな外国に派遣される国防隊など、日常で意識することなどないだろう。


 国外への派遣に、税金がどれくらい使われたかは興味をもつかもしれないが、その程度だ。


 現場の国防隊の苦境を救うために国民が声を上げて、国を動かす可能性はなきに等しい。


「任務はあるだろう」


「こんな現状の我々が護衛任務を行うのですか?」


 アオイケ中尉の視線が鋭くなる。


 普段は話すときに人と視線を合わせないのに、今は強い感情を発露させるようにこちらをまっすぐに見つめて、視線をはずさない。


「そうだ」


「そうですか…………なら、今回鹵獲したテクニカルの機関砲を使わせてください」


「ダメだ」


「なぜです」


 鋭かったアオイケ中尉の視線がさらに鋭利になる。


「鹵獲武器の使用に関して、法的に整備されていない」


「明確に禁止されていないのでは?」


「明確に許可されていないのだ」


 法的に明確に禁止されていないから使わせろというアオイケ中尉と、明確に許可されていないから鹵獲武器の使用を認められない私の違いは、立場の違いかもしれない。


 前線に身を置くアオイケ中尉としては、支援砲が使えないなら、代用として法的にグレーな鹵獲武器でも使いたいのだろう。


 しかし、それは認められない。


 なにも、私は杓子定規に法的に許可されていないからダメだというのではなく、もしも、このことを認めて、後に政治家にとって不都合なことがあって、国外に派遣した我々を処分する理由がないときに、重箱の隅をつつくように、このことを持ち出してくる可能性が十分にある。


 できれば、誰かにつけ入れられるような隙は作りたくない。


 どうにも、この国防隊のこの国への派遣はきな臭いのだ。


「了解しました、現場にて創意工夫を凝らして臨機応変に対処して見せましょう」


 組織や私に期待していないのか、諦観に包まれた表情でアオイケ中尉は、淡々と言葉を紡ぐ。


 これなら感情に任せて理不尽だ怒鳴ってもらったほうが、私の気持ち的に楽だ。


「すまない」


「それとは別に、今回の任務についた隊員にはできるかぎり休養とメンタルケアをお願いします」


「理由を聞かせてもらっても?」


 予定にない実戦を経験をしているから数日の休養は考えていたが、アオイケ中尉の口調があまりに切実だったので、確認のために聞いたのだが、彼女は首を傾げて不思議そうに応じた。


「初めて人を殺した部下の心と体のケアに気をかけるのは当然では?」


「…………そうだな。中尉、君は大丈夫なのか?」


 私はダメな上司だ。


 彼女たちは実戦を経験して、敵を撃破している。


 報告を受けて知っていたはずなのに、彼女たちが初めての人殺しを体験して、心理的に相当な負荷がかかっていることを、アオイケ中尉に言われるまで思いつくこともできなかった。


 率先して、心理的に憔悴しているかもしれない部下を気づかわなくてはいけない立場なのに、なんとも情けない。


「ええ、私は大丈夫ですよ。心なんてとっくに擦り切れていますから。今さら人を殺したくらいで壊れる余地なんてもうないですよ」


「……そうか。君たちの休養とメンタルケアは私の権限で確約しよう」


 本当に、こんなことしか告げられない自分が情けない。


「ありがとうございます」


 礼をしてアオイケ中尉が退出してすぐに、隣りに立つ私と同じく額から角を一本生やしたサトムラ中尉に声をかける。


「どう思う」


「心理的にやばそうですけど、大丈夫じゃないですか、彼女意外にしぶとそうだから、よくは知らないですけど」


 国防隊のどの部隊でも咎められそうなサトムラ中尉の口調だが、これでも彼女は私以外を相手にしたときには、その場にふさわしい口調をできる。


 この砕けた口調も、気を許せるという私への信頼だろう。


「違う、アオイケ中尉のことではなく。この国防隊の派遣についてだ」


 本来なら、国防隊での経歴や階級を考えれば、サトムラ中尉よりも私の方が情報を集められそうだが、彼女は妙に色々な情報を拾ってくる。


 その情報源は、彼女によれば、合コン、婚活パーティー、マッチングアプリで広がった人脈のおかげらしい。


 彼女らしいと思う一方で、情報収集能力から実は諜報機関の一員だったとしても驚きはしない。


「あー多分、真っ黒です」


 軽い口調で、サトムラ中尉に告げられる肯定の言葉。


 しかし、予想していただけに動揺はない。


「どう、黒い?」


「派遣されたユキカゼとパイロットのは半分が生贄ですね」


 サトムラ中尉の言葉は衝撃的ではあるが、意外ではない。


 なにしろ、我々がこの国に派遣される経緯と支援砲を発砲するまでの手順を考えれば、アサルトが戦場で実力を発揮できないのは分かり切っていた。


 それでも、フェネック王国の王族の先祖が、数百年前に我が国から島流しにされた皇族の女性で、この国で唯一の生き残りの王族で皇族と同じ狐族のユトナ王女からの支援要請を受け入れた。


 表向きは、クビ皇国製の災害現場で活躍するレスキューゴーレムとも呼ばれるワークゴーレムの操縦方法と運用の教導。


 ユトナ王女と直属の近衛兵たちを相手に、ゴーレムに関する技術を教える。


 だから、最新鋭の第三世代アサルトゴーレムのユキカゼを普段から扱っている精鋭でもある我々が、派遣された。


 だが、派遣されてみればアオイケ中尉たちの小隊は、関係のないはずの貴族派の連中に護衛戦力として便利使いされている。


 本国に連絡しても、できる限り便宜をはかれとだけ通達された。


 それなのに、私が直卒する小隊は護衛任務にかかわるなと言明される。


 これでは、アオイケ中尉の小隊になんらかの事故が起こることを望んでいる者がいると、明言しているようなものだ。


 ……上層部が全滅を望んでいないとアオイケ中尉に言ったことと、一見すると矛盾するが間違いというわけじゃない。


 支援砲の発砲を許可は悪意を持って妨害されているわけじゃないのだ。


 それとは、別にアオイケ中尉への悪意の気配は感じる。


 直接的に動いて排除はしないが、不幸な事故の誘発は願っているのだろう。


「私たちもか?」


「いやー、標的はアオイケ中尉の小隊ですね」


「彼女たちが経歴的に一部の連中から嫌われているのは知っているが、わざわざ外国に派遣して謀殺するほどか?」


 小隊長のアオイケ中尉を筆頭に、メンバーの全員が自分の意志で国防隊に入ったわけではない。


 数年前、政権交代で与党になった現政権は、無駄の排除という選挙公約を実現するために、財政健全化を叫んで様々な改革が行われた。


 その内の一つが国防費の削減と、国防隊員の整理だ。


 再就職先の斡旋などのケアをしつつも、国防隊員の数を大胆に減らし、抜けた穴を三〇歳以下の引きこもりやニートで補うという無茶苦茶なことを強引に進めた。


 数の上では国防隊員の人数は微減かもしれないが、有能なベテランの抜けた穴をやる気のない素人で補えるわけがない。


 一年もしない内に、強引に国防隊に入れられた数人が自殺して、複数の部隊で隊員の不審死が発生すると、国防大臣が責任をとって辞任することになったが、なぜか政策が撤回されることはなかった。


 もっとも、入隊させた者を使えないという理由で、追い出すわけにもいかないので多くの人員がそのまま国防隊に所属していて、国防隊という組織の屋台骨がすり減っているという現状は改善していない。


 アオイケ中尉も、数年間引きこもりだったところを、両親の希望で国防隊に強引に入隊させられ、幸か不幸かアートマンシステムという第三世代アサルトの特殊な操縦システムに、高い適性を示したことで教導隊に所属することになっている。


 しかし、国防隊のなかでも優秀な者の集められる教導隊に、適性があるとはいえ元引きこもりが所属していることを、快く思っていない者は国防隊の内外を問わずにいるだろう。


 それでも、国外に派遣して謀殺するほど手間をかけるかという疑問もある。


「だから、生贄なんですって。彼女たちの死は次の謀略のトリガーになっていたみたいですね」


 サトムラ中尉の説明によれば、アオイケ中尉たちの小隊が戦死すると同時、これを素人に国防へと関わらせた悲劇だと、世論を煽り国防隊から素人のような者たちを完全に排除し、同時に曖昧な文言と明確な規定がない法律を大胆な改正を行い、最終的には国防隊を国防軍にすることが目的らしい。


 一般人の妄想や空想は実害がないが、権力者の妄想や空想は力があるだけに現実に影響が出るだけに困る。


「なっていた、か?」


「そうです、過去形ですね、死にませんでしたから、彼女たち。本国では、色々と激しく党派を超えて動いているみたいです。あはは、ある意味一致団結していますね」


 皮肉気に笑うサトムラ中尉の言葉を聞いて頭が痛くなってくる。


 彼女の言う通り本国では、トカゲの尻尾切りと責任の押し付け合いで忙しくて、こちらを気に掛ける余裕などないのだろう。


「はぁ……首謀者は?」


「所属政党を間違えていると言われている比較的リベラルな与党で一番のタカ派のゴシタ上院議員です」


 すぐに、ゴシタという名前で脳裏にニュースなどに登場した顔が思い浮かぶ。


「ああ、ゴシタか。そう言えば以前に国会で、やる気もない無職の人間に、国防の一翼を担わせるとはなにごとかとか、叫んでいたな」


「そのせいで主流派から外れたみたいですけどね」


「それなのに、タカ派ということで一部の野党とパイプ役にもなり、党に対しても主流派から外れても、国防隊の国外派遣をごり押しできるぐらいの影響力があるか? 面倒な人物だな、ゴシタという人物は」


 現場を理解してるわけでもないのに、やる気と行動力に満ちている。


 関係のないところで、その能力が発揮されるなら構わないのだが、自分たちが火中の栗なのだとしたら平静ではいられない。


「あー、ゴシタは大丈夫っぽいですよ」


「どういうことだ」


「予定だと、派遣されて国防隊に戦死者が出たら、国防隊の派遣に賛成した責任が自分にあるっていって政界からかっこよく勇退。同時に、国防隊の即時撤退を提言することになっていたみたいです。けど、アオイケ中尉たちは戦死するどころか、戦果を上げちゃってますからね。次の計画が発動できないし、国防隊も撤退できなから、計画に賛同した国防隊の現役とOBから、話が違うって物凄い非難の集中砲火を食らって、皮肉なことにゴシタはひっそりと政界を引退することになりそうです」


「個人の自己陶酔に付き合わされたのかと思うと、ゾッとするな」


「あれ、大尉は法改正や国防軍の設立に反対ですか?」


 サトムラ中尉が意外だという表情をする。


「反対ではない…………がな」


 望んで国防隊に入った身としては、非現実的な法や体制を歯がゆくも思うが、改正や改革で物事を大きく変えたときに良い方向に必ず進めると思うほど、純粋無垢でもない。


 高邁な理想が、山積する現実で押しつぶされるなんてことは、よくあることだ。


「なんです?」


「支援砲の発砲までの非現実的なプロセスを考えると、賛成したくはなるが、現場で判断できるようになる危険性も理解しているからな」


「現場が法を拡大解釈して、暴走する危険性ですか?」


「それもなくはないがな。それ以上に、問題が起こったときに責任者が責任を取らずに、現場に責任を押し付けるこの国の体質を考えると、な。法改正して、国防軍になって、結果として政治家にとって動かしやすくて、責任を押し付けやすいトカゲの尻尾になっていましたでは笑えんだろう」


「あー、そんなことないですよって、笑って否定できませんね」


「だろう? だが、今は、それよりもこれからのことだ」


 私の言葉に、この危機的な状況が理解できていないのかサトムラ中尉は不思議そうに首を傾げる。


「これからですか?」


「上の予定では戦死者が出たら、ユトナ王女への支援を打ち切って撤退する予定だったが、その計画は破綻した。この後、戦死者が出たら計画は再起動すると思うか?」


「無理じゃないですか? だって、国民への煽りも文句は、素人が法律などの制約で手足を縛られてなにもできずに殺されたなのに、すでに、相手に一回勝っていますからね。今さら戦死者が出ても、それこそ群衆は負けたことを気にしても、仮に事実だったとしても法的制約で負けたなんて信じませんよ」


「…………なあ」


「なんです?」


「ひょっとして、書類上はともかく、国防隊の国外派遣に関して政治的に主導している者が、現状だといなくないか?」


「えっ? …………総理大臣、国防大臣、外務大臣…………ああ、あの爺さんの計画を黙認しても、積極的に賛成してしませんから」


「かといって、当初のプランが潰れたからと言って、撤退を指導するほど、この件に関わりたい権力者もいないわけか」


「えっと、なんか、マズくないですか?」


「マズいだろうな。政治的意図の喪失した国外派遣か、自分で言ってて寒気がする」


 ユトナ王女側から撤収を望まれないかぎり、我々は長期間この国に駐留する可能性もある。


 クビ皇国から派遣した主力は中隊規模のアサルト。


 それを円滑に運用するための人員を含めれば、それなりの人数になるが、我々に関わる政治的なリスクを考えれば、この国に駐留させてもコスト的に見れば高くもない。


 撤退に関しても、本国の政治家が決断すれば、迅速に実行できるだろう。


 決断できる者がいればいいが……。


「望み薄だが、タニ大佐に期待するか?」


 思い浮かぶのは、派遣された部隊の最高責任者であるタニ大佐。


 とはいえ、彼の役割は現場でリーダーシップを発揮するよりも、王国、王女、貴族派、本国、駐留している土地の有力者との円滑なコミュニケーションによる調整にある。


 そういう意味では、きっちりと仕事をしていると言えるかもしれない。


「無理じゃないですか、この国に来てから連日連夜で各国の大使や貴族たちとパーティーですよ、羨ましい」


「そうだな、最低限の報告でも目を通してもらいたいのだがな」


 タニ大佐がパーティーに連日参加しても問題ないが、もう少し現場とのコミュニケーションもしてもらいたいものだ。


 これまでの報告や意見具申の結果を考えると期待できないな。


「酔いさましになりそうな報告なんてありますか?」


「ないな。だが、アオイケ中尉たちを無事に帰還させる道は必要だ」


「同情ですか?」


 サトムラ中尉がからかうように聞いてくる。


「合理的な判断だ。あの者たちは十年後のクビ皇国に必要な人材だ」


 はっきり言って、私よりもはるかに貴重な四人だ。


 後方の実態を知らない政治屋は、経歴だけで謀略の捨て駒にしようとしたようだが、クビ皇国がアサルトの開発で世界をリードするつもりなら、絶対に必要になる。


 私やサトムラ中尉でも、第三世代のアサルトは動かせるが、アオイケ中尉たちほどアートマンシステムとの適性がないから、完全に性能を引き出すことはできない。


 これは訓練で覆るものではないし、あるいはこれからの研究による技術革新で私たちでもアオイケ中尉並みの結果を出せるようになるかもしれないが、そのためにも彼女たちが国防隊にはどうしても必要なのだ。


「まあ、貴重な人員ですね」


「ああ、最悪、鹵獲品の使用を認める可能性も視野にいれるか」


 できれば採用したくないが、彼女たちが休養している間に、代案が見つからなければ、私の責任で許可するしかないか

次回の投稿は8月4日1時火曜日を予定しております。

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