バイオテロとまさかの真実
リコリスのまさかの真実です
「婚約者と話し合って決めたんだ。婚約破棄をした」
「僕もしました」
アーサーとアーロンは学園でわざわざ私を捕まえてそう報告してくれた。
「殿下、アーサー。リコリスたんを見るな!あまりのきゃわたんさに目が潰れる!」
私の横で控えていたジェリドは、夜だろうが車のライトをつけないヤンキーのような向こう見ずさで、二人に喧嘩を吹っ掛けた。
「お前ちょっと黙ってろ!あの、よかったらお茶しませんか?」
「ありがとう」
私はジェリドが用意してくれたお茶をカップに注ぐ。
すると、真っ白なカップに、この世の混沌を煮出したような、ドロドロの真っ黒な液体が、というよりもスライムが注ぎ込まれた。
「……」
私が、お茶を注ぐとそれだけでこんな色になるのだ。
実はお茶だけではない。お菓子を作ってもこんな色になる。調子がいいと触手が生えてきたりするけれど。
「ではいただく」
「お姐様。ありがとう」
二人は謎のスライムXなどに気がつかない様子でお茶に口をつけた。
「グホッ」
「ゴボッ」
二人はそれぞれ、個性的な咳をしてその場に倒れこんだ。
吐くなよ。掃除するのはジェリドなんだから。
そして、泡を吹き。喉を押さえ白目を向く。
何これ。悪霊にとりつかれた?
「ズボボボボボバルァ!」
「グゲゲゲゴガァ!」
そして、二人はブリッジをしながら、ゲタゲタとその場を走り回る。
大丈夫か?こいつら。
ていうか、毒を盛ったって疑われない?大丈夫か?
私は一瞬だけ不安になる。
「あぁ、二人ともリコリスたんのお茶を飲んで狡い!僕も飲む!」
ジェリドは空気を飲まずに、そんな事を言い出す。
これ以上お前は引っ掻き回すな。
「お前、ちょっと黙っとれ!」
私は、苛立ちからジェリドに膝げりをかます。
「あぁ、今日はねこちゃん!」
ジェリドはスレスレでかわして鼻血を吹いて倒れた……。
どんな身体能力してるんだよ。コイツ。
「り、リコリス姐さん」
「り、リコリス」
ゴソリと音がしてそこを見ると。二人は復活したらしく、私にドン引きしていた。
「あ、だ、凄いことになってましたけど、大丈夫でしたか?」
私は咄嗟に誤魔化したが二人は引き吊った笑顔をうかべるだけだ。
「「アイリーンと距離を置く」」
「そ、そう」
そんな事をほぼ同時に言われて、私にはどうでも良かったけれど、適当に返事をしておいた。
この後大変な事にしたなるなんて知りもしないで。
「リコリスたん。おいで」
屋敷に帰り寝ようとすると。ジェリドがなぜか私のベッドに侵入して、手招きをしていた。
目眩がする。私は眉間をひとさし指で押さえた。
何でお前がいるんだよ。
「さっさと、出てけ!」
私はジェリドの顔めがけて蹴りをぶしかました。
「あぁ!」
ジェリドはベッドから出てはくれたももの、顔をほんのりと赤らめて身悶えする。
最近ではジェリドの変態度がかなり増していて、豚野郎でしかない。
「り、リコリスたん。あれを。はぁ、はぁ、僕はあれなしでは生きていけなくなった」
またかよ。
「今日は何がいいの?」
「クッキー!」
ジェリドの言われるままになぜか手元にある。私の手作りクッキーを明後日の方向に投げつけた。
豚野郎はそれを信じられない身体能力で飛び付き、口でキャッチした。
もう、気持ち悪いを通り越して凄いとしかいいようがない。
人間をやめたのだろうか。
そんな事よりも、クッキーは何も入れていないはずなのに、黒墨が練り込まれているかのようにどす黒く。ブスブスと不気味な音をたてている。
こんなもん食えるのか?
「ぉギョバォアブボォォ!」
意味のない言葉を吐きながらジェリドは泡を吹きそのまま力尽きた。
こいつ大丈夫か?とうとう頭がおかしくなったのか?
「あぁ、リコリスたん。プリプリ。きゃわたん。ご主人様……」
泡を吹きながら悶えていた。
「お前ちょっとうるさい」
私がジェリドに怒鳴り付けると、奴はハァハァと荒い息のままコクコクと頷いていた。
「リコリスたん。そろそろ卒業だね。そうしたら僕のお嫁さん」
ジェリドはそう言いながら、想像したらしく鼻血を吹き出していた。
あっ……!
私は結局ジェリドと婚約破棄に至っていない事に今更気が付いた。
でも、待って。卒業ってもうすぐなんじゃ。
誰かに罪でも捏造してもらって断罪でもされない限りジェリドにが101人目のダーリンになってしまう。
カエルも嫌だけどジェリドも嫌だ。こんな変態と結婚生活なんて無理!
私は絶望の淵に立たされていた。
そしてその日はやって来た。
「リコリスたん。おはよう」
眩しい朝の日差しと共に隣に居たのは輝かんばかりの真昼の太陽のような笑顔を私に向けるジェリドだった。
「ほげぇ!?」
私は身体中に鳥肌が立つのを感じながら、「ひぃ!」と思わず口から悲鳴が出た。
「で、で、出てけ~!」
「今日が終わればリコリスたんは、僕のお嫁さん。ブフォッ!!」
ジェリドは器用に勝手に鼻血を吹いて倒れた。
や、ヤバイこれ今日逃げるか断罪されないと無理な気がしてきたぞ。
卒業パーティーはジェリドが用意した赤いドレスを着て会場入りをした。
センスのいいドレスだと思う。
胸元のフリルのようなレースは貧乳を隠してくれるが、適度に身体のラインがわかるように計算されて作られたアイラインのドレスは大人っぽく見えた。
ジェリドの隣にならんでもこれなら見劣りしないくらい美人に見える気がした。
人前だから特に私と話す事はなかった。
この場で「リコリスたん。」なんて言われたらドレスが破れるのを気にしないで飛び蹴りをしそうな気がしたから良かった
あまり喋らないと、まともに見えるジェリドと一回ダンスを踊ってすぐに私は壁の花になった。誰にもダンスに誘われないから。
そこそこモテると思ったのになぁ。誰にもチヤホヤされないなんて。今日は結構可愛いと思うんだけどなぁ。
ちなみに、ジェリドは見た目だけはいいからか女子に群がられていた。
あの変態がまともに女子と会話が出来るのかとても疑問だったが、考えるのはやめよう。
私は一人の時間で考えなくてはならないことがあるのだ。
どうやってあいつから逃げればいい?
日頃の行いが良い私が断罪なんてされるわけがないし、失踪するしかないかな。
そうだ。それしかない。
よし、その方向性で決めた!
「リコリス?どうかした?」
突然声をかけられて私はギクッと身体を凍りつかせる。
あ~。ビックリした。
考え事をしすぎていたらしい。ジェリドがまともな顔をしてこちらを見ていてた。
「な、何でもない」
私はドキドキしながらも考えが読まれないようにムスッとしながら返事をすると、奴はクスリと笑って私の腰を抱いた。
「そろそろ殿下が話し出すと思うから」
あぁ、もうそんな時間か。もう、パーティーは終わりを迎えていた。
それにしても、何で今日は無駄にスマートなのだろう?
エスコートに変態じみたものが一切なくかえって不安が募ってきた。
「みんな、この日を迎えられて私はとても嬉しく思う。」
殿下の語りかけるような優しい声でスピーチが始まった。
「ある宣言をしたい……。この場でジェリドとリコリスは婚約破棄とする!リコリス君は聖女だ。しかるべき相手。つまり僕と結婚する事になる」
はぁあぁあぁああ!?
わ、私、聖女だったの!?だから貧乳だったのか!




