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悪役令嬢の101人目のダーリン  作者: マンゴスチン姐さん
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恋の奴隷の鼻毛

本日二回目の更新です

面白くなっていればいいんですけど

あの前世の記憶が戻る騒動……?以来ジェリドは、いや、鼻くそは毎日のように私のところに訪れるようになった。

『婚約破棄しない!』

と、怒りのまま言い切った勢いはいつの間にか消えていた。というよりも、次の日からなくなっていた。

最初は煩くなくなって良かったと思った。

けれど、それは間違いだった。


「リコリスたん。はぁぁ、今日もきゃわたん」


うん。キャラクターが変わった。

悪質タックルの影響なのか、次の日から「リコリスたん」と呼ぶようになった。

「ち、近寄るな」

私が逃げようと身体を引くが、そんなの無視してジェリドはギュムッと抱き締めてきた。その力はわりと強い。

に、逃げれねぇ……

ズゾゾゾゾゾゾ。と、麺類を啜る音を出しながらジェリドは私の匂いを嗅ぎ始めた。

なんか本当に啜られているような気分。微かにだが体も揺れているし。キモい。

「やめい!この鼻くそ!」

「あぁぁぁ、リコリスたんは。きゃわたんなうえにいい匂いまでする」

「マジでやめろ。お前の事を奴隷って呼ぶぞ。この鼻くそ野郎」

「リコリスたんの恋の奴隷なんて幸せ」

噛み合わない会話をしながらジェリドはこちらを見る。

うっとりとした瞳は蕩けるようで、私の心のチュロスがビンビンにこいつはヤバイと危険信号を送ってくる。

「この鼻くそ豚野郎!」

「あぁ、奴隷でも。豚でもいい。リコリスたんの側にいられたら、どこでも僕は天国」

「さっさとどっか行け!」

ビッターンとジェリドにビンタをすると、彼は唇から尋常じゃない血を流しながら吹っ飛んだ。

「あぁ、リコリスたんのビンタ……。僕は幸せ」

ジェリドは恍惚とした表情で立ち上がろうとしない。

「別にいいけど。血で絨毯汚さないでね」

私はそう言うとハンカチをジェリドに差し出した。

「ありがとう。リコリスたん。はぁ、その顔もきゃわたんでプリプリ……」

プリプリってなんだ?うんこか?

考えるのはやめよう。どうせわからないし、考えても無駄だ。

ジェリドはハンカチを受けとり、それに顔を埋めながら、再び麺類を啜るような音を出して匂いを嗅ぎ始めた。

「あぁ、リコリスたんのハンカチの匂い最高。麻薬のよう」

私はゾゾゾと全身に鳥肌が立つのを感じた。

こいつはヤベェ。前以上に変態チックじゃねぇか。

「用がないならさっさと帰れ!」

「リコリスたんの大好きなドーナツとチュロスを今日は持ってきたんだ」

「……」

ドーナツとチュロスだと!?私は前世からそうだったが、スイーツが大好きだ。

特にドーナツとチュロスは夢に出てくるくらい好きだ。

「あぁ、そう、置いて帰ってください。貴方なんて視界にも入れたくないですから。さっさとどっか行け。あと、これを手作りできない男となんて結婚しませんから」

「そんなつれない事を言うリコリスたんもいい」

ジェリドは私のツンデレのツンどころか、切れ味抜群の出刃包丁で斬られてもめげることはない。

無礼な事をどれだけ言っても、最近では頬を染めるくらい喜び、人として問題が表面化していた。

何があって彼はここまでの変態になったのだろうか?考えたくもない。きっとゲームの制作者が悪いのだ。

普通ここまで嫌われていたら誰もが関わらないようにすると思うのだが。

もはや婚約破棄よりもこの男からさっさと逃げるべきだと、最近は思うようになっていた。

心のチュロスはビンビンで、この男はヤバイと教えてくる。

ジェリドにとって私なんて残飯以下だと思っていはずだ、だったら、何を狙っているのだろうか?



まさか、私のお父様!?



ピチピチギャルの私よりも、出涸らしジジイのお父様を狙う方が、私のメンタルを削る事をこの男は気が付いているのかもしれない。

パパンは少しだけ天然だし。


「キモい。人としてあり得ない。消えろ」


心の声は思わず漏れでていた。


「酷いなぁ。ちゃんと明日は作ってくるからね」


あ、本気でドーナツとチュロスを作ってくるつもりかもしれない。

この調子では明日は手作りのチュロスとドーナツを持ってきそうな気がした。

しかもお店のもの以上の物をこの男なら作り出せそうだ。

「ふふふ」

「そんなに笑ってもあげないからね!」

きっとこんなに私を微笑ましく見るのは、このドーナツとチュロスを狙っているからだ。

「気にしないで食べてくれ」

ジェリドはうっとりと私を見て取らない意思だけは見せてくれた。

変態じゃなければ見た目はこの鼻くそはよかった。


ブラウンの髪の毛は少しだけくせがあって、タレ目の緑色の瞳は新緑のように爽やかで綺麗だと思う。

顔立ちだって他の攻略対象と同じくらいよかった。

ぶっちゃけ好みのタイプだけど、だけど。変態では何もかもが台無しだ。喋りもしないで好感度がうなぎ登りって、勘違い男だし。

私の事を今は『いい。』と言うがそれは明日には変わっているのかもしれない。

というよりも私はそれを期待しているのだが、今のところその可能性は低そうだ。

早く婚約破棄してくれないかしら。


「早く食べてよ。リコリスたんが美味しそうに食べて居るところを見たい」


ジェリドは熱っぽい目で私を見てきた。まるで恋する乙女のように。

気持ち悪い。

私は瞬時にそう思ったが、恋する気持ちを否定するのは『100人の男と付き合った処女』としては許されない。

私は恋愛マスター。恋する気持ちは応援する所存だ。

「えぇ、頂くわ。」


私は仏頂面で返事をした。

ドーナツとチュロスは目眩く妄想の扉だ。


「あぁ、ドーナツ。貴方はなぜドーナツというの?」

「知らんがな」

「ねぇ、お願い。俺とどこか遠くへ行こう」

「一人でいけば?」

「ねぇ、愛しているんだ。」

「え、キモ」

「俺の事、どれだけ好き?」

「なんでそんなに自分に自信があるの?頭大丈夫?」

「うっうぅ……。なんて切ない。こんな素晴らしい劇を考え付くなんて、リコリスたんは天才だ!」

私はドーナツとチュロスで寸劇を始めると、ジェリドは感極まって涙を流し始めた。

今、感動する要素なんてないよな?どこに泣きポインドあった?

「恋はね。一方通行じゃダメなの。わかる?」

私の問いかけにジェリドはコクコクとメモを取りながら頷いていた。

意外と勤勉なのよね。

私の話すことを必死でメモを取ったりするんだから。そういえば、アイリーンに骨抜きにされる前は、真面目に勉強してたものね。

「大切なのは、ときめきと強烈なインパクトよ。一度見たら忘れられない衝撃は、一生相手のなかに残るのよ。いい意味でも悪い意味でも」

その点ではこの鼻くそはインパクト大ではあるけれど。

でも、なんとなくこいつの恋愛は成就しない気がしてならない。

「そう、みんな新しい扉を開いて欲しいのよ。だから少しだけ荒々しく『愛してる。』なんて掠れた声で耳元で囁かれたら胸がキュンキュンするのよ。たぶん。」

なおもジェリドは、処女のくせに偉そうに語る私の恋愛講義を真面目に聞きながらメモを取っていた。

「きっと貴方にはそんな事なんて出来ないと思うけど。」

私は挑発して怒らせるような事を言いながら、ジェリドを上目遣いで見る。

奴はそんな私に怒る様子もなく、ただうっすらと頬を染めて喉を上下させただけだった。


怒れよ!そこは!


「何事も程々が一番よ。」


私はそう言い切るなり、持っていたチュロスを噛み千切った。

ジェリドは何故か梅ぼしを食べたように、顔をくしゃくしゃにして、鼻の穴を広げて股間を押さえていた。


あ、鼻毛見えそう。



コイツはもうダメだ。今日から鼻くそじゃなくて鼻毛と呼ぼう。



私は無意識に思った。正攻法では間違いなく婚約破棄なんてしてくれない。


ん?あれ?


忘れていたけど目の前の鼻毛限定で『罵る』というコマンドがあったような気がした。

それをすると好感度が序盤にブチアゲになりストーカーモードに入ったような。

あれ?

今、気がついた。私はその『罵る』を使いまくっている事に。

何故か高くなる好感度はそのせいだったのか。

待って。じゃあ。婚約破棄とかないんじゃないの?

ふと冷静にその事に気がついた。

婚約破棄されないのなら将来は安泰だが、果たして鼻毛と結婚生活が出来るのかと考えるととても無理だった。


この恋愛わからんちんと一緒なんて、一生地獄じゃないか。


こんな奴に処女を捧げるくらいなら一生処女の方がいいに決まってる。何としても婚約破棄をさせなくては。


どうしたら?


私は悩み抜いた挙げ句、悪くない方法を思い付いた。

読んでくださりありがとうございました

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