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悪役令嬢の101人目のダーリン  作者: マンゴスチン姐さん
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脳筋くそ野郎と料理対決

攻略対象を出しました

私が思い付いた方法は攻略対象に片っ端から喧嘩を吹っ掛ける事だった。

立場が上の連中に狂犬のように喧嘩を売っていたらジェリドだってただじゃ済まない。

そう、何かしらお咎めを受けるだろう、呆れたジェリドは私に婚約破棄を申し入れる筈。たぶんね。


攻略対象は4人の居る。


まずは私の婚約者の鼻毛。

一人は脳筋くそ野郎。

もう一人は陰険メガネくそ野郎。

最後は顔だけ脳タリン野郎。

とりあえず私は脳筋くそ野郎に喧嘩を吹っ掛ける事にした。

出会い頭にぶん殴ってもコイツなら問題なさそうな気がする。強そうだし。


私は鼻毛を飛ばす勢いで鼻息を荒くして奴を探した。

そして、すぐに見つけた。

奴はアイリーンと一緒に鼻の下を伸ばしながらテラスの席でお茶をしていた。

奴は黒髪黒目で落ち着いた外見をしているが、鍛えているせいか他の男子よりも体つきが一回り大きい。

そのせいか、『大人っぽくてカッコいい。』と女子から人気がそれなりにある。


羨ましくて仕方ない。

こんなにもしまりのない顔をしていたら全てが台無しだ。もしかしたら、鼻毛が見えてるかもしれない。



私は覚悟を決めて右手を握りしめる。そして、脳筋ワキガ野郎に向かって走っていった。

ヤル事はモチのロンで決まっている!

私が前世の時によくおじいちゃんが餅を喉に詰まらせた。そのたびにやっている技をコイツにもヤルだけだ。



「覚悟はいいか!私は出来てる!!」



謎の台詞を吐き私は奴に向かって突進する。ドドドドドドドドと、蹄の音を響かせ。気分はオークだ。

片手には見えない出刃包丁と、臭み消しのネギを持っている。

こいつをどうやって料理してやろうか。

「グフフフ」と笑い声が思わず出てしまう。


アイリーンと脳筋くそ野郎は私が突然叫びだしたものだから、目を丸くして固まっていた。




「ハイムリック砲!!」




技の名前を叫び奴の鳩尾に右こぶしを私は放った!


「うっ。あぁ……」


その瞬間だ。私の右こぶしに激痛が走ったのだ。


「手が~!手が~!」

私は右手を押さえながら叫び声をあげる。

え、なにコイツ?脳みそどころか鳩尾にも筋肉あるの?筋肉の鎧?

そして、私は自分が運動神経が皆無であったことを忘れていた。なぜか、その勢いで転んで頭からお茶を被ってしまった。

なんとも、ミラクル的な誤算だ。お茶がぬるくてよかった。



だけど!!

お茶が。目に入ってしまった。


「目が~!目が~!」


左手で目を押さえその場で私はのたうち回りながら悶絶した。

お茶効果で私の臭みはきっと消えているはずだ。

まって料理されてるの私じゃん。


「だ、大丈夫か?」



脳筋くそ野郎は心配そうにこちらに近づいた。

え、なんかいい奴。突然殴りかかった私の心配をしてくれるなんて。控えめに言って頭大丈夫なのだろうか。人が良すぎて心配になってくる。


「止めてください。カイ様。」


アイリーンがなぜか今にも泣き出しそうなカイに顔を向けていた。

「え、何?」

「貴女わたしに何か言いたいことがあるから来たんでしょ!?わたしの事を虐めるつもりなんでしょ?」

なぜか、アイリーンは鼻息を荒くして両目に涙を溜めてまるで被害者のような顔をした。

被害者ってどちらかというと、カイの方なんだけどな。

「何だと!?」

脳筋くそ野郎は私を敵と認識して睨み付けた。



「俺のリコリスたんに何をするんだ!」



スタッと軽くステップを踏むようにジェリドは、私の前に現れた。

別にそれはいい。奴はなぜか天井から飛び降りて来た!

お前どこに控えてたんだよ?

それよりも聞捨てならないことがあった。

「この鼻毛!いつから私はお前のものになったんだよ!」

ビッターンとジェリドに左手でビンタを放つと、奴は「あぁ!」と頬を押さえながらその場に座り込んだ。

「り、リコリスたん」

「ちょっ、大丈夫か?」

カイは慌ててジェリドか私にどちらに手を差しのべたらいいのか迷いだした。


なんだろうこの感じ。どちらかを選ばないといけないなんてとても罪作りではないか。

これが、修羅場……!

気がつけば、前世は妄想族だった私のいけない癖が出ていた。


あぁ、アイリーンを取り合うカイとジェリドの構造って最高よね。



目眩く妄想の扉が開いていった。



「「アイリーン。いい加減どちらか選んでくれないか?」」

「そんな、私には出来ない。二人を傷付けたくないもの」

「ふっ、こうなったら勝負だ!」

カイはジェリドを睨み付ける。

「臨むところだ!」

ジェリドは、闘志をみなぎらせてカイを見た。

「お願い!私のために、争わないで……」

アイリーンが流した一滴の涙が闘いの合図だ。

「「魚料理で勝負だ!」」

包丁を極めし者が、武術を極める。胃袋を掴みし者が愛を勝ち取る。

二人は各々の臭み消しを使い。さらなる料理の高みを目指す……!

最後は作ったものが龍になってどこかに飛んで行くのだろう。

知らんけど。


「ぐへへへへへへへへ……」



私は知らない間に涎を垂らしながら笑っていた。

ジェリド以外の二人が、明らかにドン引きな顔をしてこちらを見ている事に気がついた。

あ、不味い。

「こほん」と誤魔化すように咳払いをする。



「え、別に違うよ。あのさ、立たせて、腰が抜けた。」

ジェリドではなくてカイの方に助けを求めたら、やはり人がいいのか咄嗟に手を出して立ち上がらせてくれた。

マジでいい奴だ。殴った事を今さらだけど後悔してきた。


「あ、ありがとう。私、アイリーンさんに用事があって来たんじゃないんだけど」

「へ?」

アイリーンは驚いた表情をしていた。

私が釘を指しにくると思っていたのだろうか?そもそも、そんなことをしている自覚があったというのか?

まぁ、そんな事考えても無駄か。


「お前だよ!お前!」


私はジェリドが心配そうに右手に触れようとしたのでそのまま蹴倒しながら、左手で指差しながらカイに怒鳴り付けた。

「へ?オレ?」

カイは私にそんな事を言われるのを思いもしなかったのか驚いて見せた。

「婚約者いるのに他の女とイチャイチャしやがって。うらやま……違う!彼女に悪いと思わないの?」



本当は、カイが羨ましかった。

そこそこ私は美少女だし、イケメンにチヤホヤされたいけどこの鼻毛のせいでことあるごとに邪魔をされるし。

思わずジェリドの顔の上に足を乗せた。

「あれは、勝手に決められた婚約者だ!オレの望みなんて」

カイはテンプレ通りの台詞で弁解を始めるが、他に言える事はないのかと思った。

ジェリドは私の靴に自ら顔を押し当てて匂いを嗅ぎ始めていた。

靴にネギを仕込むのを忘れているぞ。ジェリド。


「そんなの当然じゃない。貴族なんだから。彼女だってアンタとの婚約なんて嫌で嫌で仕方ないのよ!」



カイは私の爆弾発言に呆然とした表情をする。自分がそうなのに、相手も同じだとなぜ思わない。こんな、不誠実な男なんて好きでいるはずがないじゃないか。


「そんなわけない。オレにアイリーンと関わるなって言ってきた」

「そりゃそうよ。婚約者なんだから礼儀上は言わなきゃいけないでしょ」

「え?」

「アンタわかってる?今、婚約破棄したら、彼女はすぐに他の相手を見つけられるのよ!この女に逆上せ上がるのもいいけど、放ったらかしにされた彼女はずっと宙ぶらりんで婚期を逃すのよ」

「そんなのオレには」

カイは自分が悪くないと言い出すが、そもそもコイツの心変わりで彼女は迷惑している自覚をちゃんと持てよ。

なぜか、ジェリドの手が私のふくらはぎをまさぐるようにさわりそこを揉み始めた。

「ねぇ、アンタのせいで一人の女性の人生が狂うんだけどそれでも関係ないって言いきれるの?不誠実な事をしてたらアイリーンさんだっていつか裏切られるって思うわよ。」

「……」

カイは元々人が良さそうなので思うところがあったらしい考え込み始めた。

「彼女に自分よりも好条件の相手を早く見つけて差し上げなさいよ」

「わかった。ありがとう。姐御」

カイはなぜか瞳を輝かせて私に向かってそんな言葉を吐き。そして、アイリーンを残してその場から颯爽と去っていった。




「姐御ってなに?」




ようやくそれだけ呟くと。

いつの間にかジェリドは、私を床に横たわらせマッサージを始めた。味付けに塩を揉み込まれているような気分になってくる。

「リコリスたん。肩が凝ってるね。揉みほぐしてあげるよ」

うっすらと微笑みを浮かべるジェリドはとてつもなく不気味で、肥溜めのように深く底が知れない。

「リコリスたん。きゃわたん。食べちゃいたい」

その一言で私はようやく自分の身の危険に気がつく。オークって高級食材にもなると聞いたことを思い出す。

臭みをお茶で消されて、塩を揉み込んだら後は焼くだけじゃないか!

「私はオークじゃない!食べるな!!」

逃げようと、ジェリドの股間に蹴りを入れる。

「ふぐぅ、ゴポゴポ」

泡を吹いて気絶するの鼻毛を見ながら、今回の作戦が失敗した事にようやく気がついた。

下ネタを封印するとこんなにも切れ味がなくなるものなんですね(´・ω・`)

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