第二話 変わらない日々
高校の入学式まで、あと三日。
陽向は今日も自然と公園へ足を運んでいた。
「おっ、来た。」
ベンチに座っていた結衣が手を振る。
「毎日いるな。」
「陽向こそ。」
「俺は散歩。」
「うそつき。」
二人で笑う。
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「そういえばさ。」
陽向は公園の砂場を見つめた。
「ここで宝探ししたの覚えてる?」
「あー!」
結衣の表情がぱっと明るくなる。
「ビー玉埋めたやつ!」
「結局どこに埋めたか分からなくなった。」
「拓真だけ本気で掘ってたよね。」
「スコップ持ってきてさ。」
「宝探しじゃなくて工事だった。」
思わず二人で吹き出す。
「結局見つかった?」
「いや。」
「じゃあまだこの下にあるのかな。」
「あるかも。」
「いつか誰か見つけたら面白いね。」
「『なんだこのビー玉』ってなるな。」
「絶対なる!」
また笑い声が響く。
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少し歩くと、桜並木が目に入った。
風が吹き、花びらが舞う。
「きれい。」
結衣が空を見上げる。
「昔さ。」
陽向がぽつりと言う。
「入学式の日に桜拾って遊んでたよな。」
「ランドセルにいっぱい入れた!」
「家帰ったら母さんに怒られてた。」
「掃除大変だったんだって。」
「結衣が全部俺のランドセルに入れるから。」
「えへへ。」
「笑ってごまかすな。」
「だって面白かったんだもん。」
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桜を見上げながら、陽向は言う。
「もう高校生か。」
「早いね。」
「制服届いた?」
「……制服?」
「高校の。」
結衣は少し首をかしげる。
「高校って、どんなところなんだろう。」
陽向は笑う。
「どんなって……。」
少し考えてから答える。
「俺もまだ行ってないから分かんないけど。」
「部活とかあるし。」
「新しい友達もできるだろうし。」
「授業も難しくなるんだろうな。」
結衣は楽しそうに聞いている。
「楽しそう。」
「だろ?」
「うん。」
少しだけ間を置いて、
「陽向なら、きっと楽しい高校生活になるよ。」
そう笑った。
⸻
「そういえば。」
陽向は急に思い出す。
「高校生になったら、タイムカプセル開けようって約束してたよな。」
結衣の表情が止まる。
「……あ。」
「覚えてる?」
「もちろん。」
「何入れたっけ。」
「秘密。」
「忘れたんだろ。」
「忘れてないもん。」
結衣は笑う。
でも、その笑顔はどこか寂しかった。
「じゃあ今度掘りに行こうぜ。」
陽向が言うと、
結衣は少しだけ困ったように笑った。
「……うーん。」
「どうした?」
「また今度。」
「そっか。」
陽向は深く気にしなかった。
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帰り道。
コンビニへ寄る。
「今日はジュース。」
「いいね!」
店を出て、
陽向はオレンジジュースとサイダーを持ってくる。
「どっち?」
「陽向は?」
「オレンジ。」
「じゃあ、私はサイダー!」
そう言って笑う。
「はい。」
陽向が差し出すと、
結衣は少しだけ手を引っ込めた。
「あっ、ごめん!」
照れ笑いしながら言う。
「今日は喉乾いてないから大丈夫!」
「えー?」
「陽向飲んで!」
「また俺か。」
「いっぱい飲んで大きくなって!」
「もう伸びないって。」
「あはは!」
結局、陽向はジュースを二本抱えて歩くことになった。
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公園へ戻る途中、
一人の男子高校生とすれ違う。
「あれ?」
男子高校生は陽向を見て立ち止まる。
「陽向?」
「……拓真!」
「久しぶり。」
拓真は少し笑う。
「最近よくここ来てるよな。」
「うん。」
「結衣と話しててさ。」
そう言った瞬間、
拓真の笑顔が消えた。
「……え?」
「だから結衣。」
陽向は隣を見る。
結衣はいつも通り立っていた。
「ほら。」
拓真は結衣ではなく、
陽向だけを見つめていた。
「……そうか。」
小さくつぶやく。
「どうした?」
「いや……。」
拓真は無理に笑う。
「また今度ゆっくり話そう。」
「お、おう。」
拓真はそれだけ言って去っていった。
「なんだったんだろ。」
陽向が首をかしげる。
結衣は拓真の背中を見つめながら、
小さく微笑んだ。
「拓真、優しいもんね。」
「そうだな。」
「昔から、ずっと。」
その声だけが、春風に溶けていった。




