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偽物扱いで追放された元聖女たち、最強の相棒と自由な冒険者ライフを始めます  作者: 柚木(ゆき)ゆきこ@書籍発売中
第五章 消えた元大聖女を追う聖女

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57、それぞれの処遇

「ということで、後はこちらに任せて欲しいの」


 満開の花のよう華やかに笑うフローレンスに、ミナは何度も頷いた。ミナが先頭に立ったとしても、平民と侮られてしまうだろう。けれども、先代大聖女である彼女であれば、きっと教会の改革も早々に着手できるような気がする。

 

「私も魔力量や努力を考慮して貴女に決めたのだけれど……あの時の私は、とにかく大聖女という仕事ができる人で判断していたの。それがエルミナ、貴女よ。貴女の実力は私をも凌ぐ……いえ、今なら歴代最魔力量ではないかしら。頑張ったのね」


 フローレンスの言葉に、ミナの心は温かくなる。彼女の努力を察して、褒めてくれるのはフローレンスだけだった。

 過去のことに思いを馳せていたミナ。そんな彼女の耳にフローレンスの声が届く。


「けれど……私の無知が貴女を苦しめてしまったのは申し訳なかったわ。だから今度は私がその罪滅ぼしをさせて欲しいの」

「フローレンス様……いえ。私もうまく立ち回ることができず、申し訳ございませんでした」


 自分の実力を高めるためにわき目も振らず、訓練を続けた日々。あの日々は無駄ではなかったが、もう少し周囲を把握する必要があったのだ。フローレンスは聖女一人一人の様子を把握し、皆で教会を作り上げようとしていたのだから。

 自分もまだ未熟者だったな、とミナの口から漏れる。その言葉がバルカスに届いたらしい。

 

「本当だ! せめてお前が侯爵令嬢に王太子の婚約者の地位を譲っていれば――」

「黙りなさい」


 唾を飛ばしながら、ものすごい剣幕でミナを指差すバルカス。しかし、彼の言葉はフローレンスによって一蹴される。


「前提として、貴方が侯爵家との繋がりが欲しいからと欲を出したのが、そもそもの間違いよ。教会と王家……もちろん、貴族も入るわね。双方は賄賂などを使い便宜を図ってはならない……初歩の初歩よね。貴方はそう学ばなかったかしら?」

「……」 


 唇を強く噛むバルカス。フローレンスの言葉は正論であるため、言い返せない。

 彼は最初侯爵令嬢を大聖女に押し上げることで彼女の実家と繋がり、寄付金を増額してもらおうと考えていたのだ。しかし、侯爵令嬢が大聖女候補に選ばれたことで、さらに欲を出した。今代の大聖女を侯爵令嬢にし、王太子の婚約者にできないかと。

 王太子の反応もよく、国王陛下や王妃陛下もそのことに賛成していた。そのため、侯爵令嬢を大聖女にしようと暗躍してきたのだが……結果は言わずもがな。


 バルカスは平民が大聖女に決定したことで、侯爵家からも、王家からも小言を突きつけられていた。だからミナを陥れ、侯爵令嬢を大聖女に引き上げようと画策したのである。

 フローレンスは再度バルカスと王太子を睨みつけてから、長い息を吐いた。

 

「バルカス、貴方は教会を私物化しましたね。その上、総本山で認められた大聖女を追放するなど……背信の行いですわ。私、貴方にも目を掛けていたのですが……どうやら見込み違いだったようですわ」

「……!」


 バルカスはその言葉で、自分がフローレンスから見捨てられたことを理解する。

 ミナの体調不良を理由に、大聖女不在は問題だから……と代役を立たバルカスだったが……彼は忘れていた。大聖女が長引く体調不良などで表に出ることができない場合、総本山に連絡し指示を仰ぐという話に。

 

 彼が『その先を言わないで欲しい』と思っていても、フローレンスはもう禁忌を犯した者など擁護する理由もない。総本山の命に背いた者には、鉄槌を。


「現在総本山に遣いの者を送っておりますの。総本山での判断を待つ事になるでしょうが……バルカス、貴方は破門でしょうね。この者の身柄は私が一時的に確保致しますが、よろしいですよね?」


 王太子たち一行は、彼女の威圧に耐えられず、素直に首を縦に振った。まあ、何か言いたげなのは王太子だけで、護衛たちは引き取ってくれてありがたい、と言わんばかりに胸を撫で下ろしているが。

 執事がバルカスを再度縄で拘束している間、フローレンスはみっともなく地面にうつ伏せている王太子へと近づいた。王太子はまるで陸に上がってしまった威勢の良い魚のように、喚いている。残念ながら手足しか動いていないので、滑稽ではあるが。

 

「お黙りなさい」


 そう彼女が言葉にすると、王太子の動きが止まる。そしてフローレンスは鼻を鳴らしてから、言い放った。


「本当にお前は両親にそっくりね。特に私に勝ったと今ですら喜んでいる王妃に。どうせ私の選んだ娘を蹴落とした事で、優越感に浸っているのでしょう……本当に国を治める者として情けないわ。しかもそれに同意する国王陛下も……」

「私の両親を悪く言うな!」


 その言葉にフローレンスが顔を覗き込む。その瞳には感情すら映っていない。

 むしろ瞳の奥底で黒い何かが蠢いているように見えた王太子は、恐怖から身震いする。そんな彼女は冷え冷えとした声で話しかけた。


「お前、分かっていないのね? ならいいわ。教えてあげる。お前たちがやったことは、教会への背信行為よ。エルミナを表向き体調不良だと発表しておいて、裏では追放した……第一に報告しなければならない事項を隠蔽した点。第二に大聖女というカードを政治利用する可能性がある点。そして最後に――」

 

 彼女は王太子の額の中心を、中指で触れた。


「総本山が信任した大聖女を勝手に変更しようとした点……これが一番の問題ね。最悪……()()()教会から破門されるわね。そうなったら、聖女たちはきっと総本山に連れて行かれるでしょう。ねえ、お前。この国から聖女がいなくなったら、どうなるかくらいは分かる?」

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