第229話 レンタル聖女①
「ご無沙汰しておりますロード様」
「お久しぶりです」
「ええ・・・突然呼び出してごめんさいね。楽にしてちょうだい」
ここは、ミルフィーユ王立学園の理事長室。
理事長代理をしているロードは、エルフの象徴である長い耳にかかっている髪を少しかき上げながら、正面に立っている2人の人物に促した。
ホワイト・パレスの白竜族の代表のヒュウガ・ホワイトはその腰まで伸びた長い銀髪と威厳を持った鋭い瞳でロードを見つめながらソファに腰を掛けた。
その兄に続き、短髪で少しヤンチャな少年を思わせる弟のフブキもヒュウガの隣に座った。
二人とも人間離れをした美しい容姿に、そこだけ絵画のように様だ。
「ああ、ここではゴールデン・エイトと名乗っているからよろしくね」
「お忍びでこちらにいらしているのは承知でおりますが、だんだん偽名を覚えるのが厳しくなってきましたよ」
「ユキナは元気なのでしょうか?何でもワタル・・・ワタル様と共にこちらで学生の真似事をしているとか?」
フブキはユキナがワタルと妖精の契約をしていることを理解しているが、まだ祝福している訳では無い。
妹を溺愛しているフブキにとって、複雑な思いを抱えていた為、無意識に攻めるような口調になっていた。
「おいフブキ!ロード様に失礼だろ!」
「だってよ兄貴!以前ユキナに会った時は、フリフリの奇妙な服を着て、おかしな杖を振り回していたんだぜ。絶対ワタル様の影響だろ?」
「うふふ・・・魔法聖女のことね。でもユキナは楽しそうにやっているわよ。心配する気持ちは分かるけど、あれは本人が望んでやっているから安心していいわ」
「そ、そうですか・・・」
ユキナが魔法聖女ショーどころか、ミルフィーユ学園で本物の聖女として有名になっていることを知らない二人。さらにワタルの為に人化の魔法で大人になったユキナを見たらビックリして腰を抜かすだろう。
「あのロード様・・・なぜか私が学園の正門にいた所、勇者様と呼ばれたのですが?」
「ああ!そうだった!シップ・ブリッチの時にヒュウガがおいしいところを全部持っていたからよ」
「ん?どういうことですか?」
「敵のラスボス・・・ええっとなんて言ったからしら?とにかくフブキが倒しちゃったでしょう。でも、その後あなたが登場したじゃない?その時の印象が強すぎてあなたが勇者だと思っている人が多いのよ」
「アハハハハッ!なんだそれ!良かったな兄貴!ミルフィーユ王国で勇者になっているぞ!」
「笑うなフブキ!それに最後の魔獣を倒したのはフブキだろ!」
「人の印象は怖いわね〜。冒険者ギルドではあなたの像まで飾ってあるわよ。うふふ。」
「・・・なんてことだ」
「まぁいいじゃないか兄貴!勇者はモテるって言うから、ミルフィーユで伴侶が見つかるかもしれないぞ!全然そんな気配がないから宰相も心配しているんだからな」
「ほぉ〜フブキはずいぶん余裕だな。ああそうか!リッカと上手くいっているんだったな!そういうことなら早急に婚儀の予定を決めようじゃないか!」
「チョッ!まっ待ってくれ兄貴!あれは勝手にリッカが言っているだけだ!最近ではストーカーのようになっていて怖いんだよ。今だってこの話を扉の外で聞いて・・・
」
フブキはホワイト・パレスの騎士団長で、リッカは副団長である。もともとフブキに恋慕の情を抱いていたリッカは、ユキナ救出作戦でフブキの妻役を演じた事がきっかけにその熱が燃え上がり、今では押しかけ女房のようになっていた。
バンッ!
「いつにしましょう?ヒュウガ様!いえ、もうお兄様と呼ばせて頂きますね。すでに大安の日は向こう1年間式場を押さえておりますのでご安心を」
この世界に縁起の良い大安の概念を教えたのはワタルの父親のガンテツである。
「フフフ・・・お兄様か・・・」
「リッカ!勝手に入ってくるな!それに何で話が進んでいる?」
「あら?フブキ様おかしな事を・・・すでに父上にご挨拶をされたではありませんか?」
「あれは、今回の打ち合わせで話しただけだ!結婚の挨拶ではない!」
ギャーギャーと言い合っている二人を優しく見守るロードとヒュウガ。
何やかんやと言ってお似合いだと思っている。
「愛の勝利ねリッカ・・・応援してるわ。式には呼んでね」
「はい!お母様!」
「アハハハ!もう覚悟を決めろフブキ!」
「兄貴覚えていろよ」
ロードは白竜族にとって母たる存在だ。リッカがロードをお母様と呼んでも間違いではないが、フブキは外堀をガチガチに固められていたことに気づき、がっくり項垂れた。
「さて・・・少し真面目な話をしましょう。」
場を仕切り直すために声のトーンを落としたロードに皆が注目する。
「我々を呼んだと言うことは・・・」
「・・・そうね・・・いよいよ」
・・・ゴクリ
一同が次のロードの言葉を予想して息を飲む。
「聖女をレンタルすることにしたわ」
そして、ズッコケた。
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