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呪いと快楽③

 力も感情も弱まる一方であり、アカネが攻撃する度に麻薬の煙が鼻や口に入り込み、余計に弱体化されていく。アカネのビンタが直撃し、サチコのはゴロゴロと転がってしまう。

 何とか立ち上がろうとするが、サチコは中々立ち上がれない。ダメージではなく、麻薬による精神的性的快楽に侵されており、それと必死に戦っていた。



 ――だ、駄目!負けるな私!私を追い込んだあの人が憎くないの!?だから...さ、触っちゃ駄目....触ったら楽になれる。ヤバいくらい気持ち良くなっちゃうのも分かってるけど....一度でも触ったら....



 息が上がっているが、体力減少ではなく興奮によるものであった。顔は真っ赤になり、体温が上昇、胸の鼓動が大太鼓のようにうるさく響き、風が肌を撫でるだけで淡い快楽に感じる。パチパチ弾ける綿菓子のような小さな火花が脳に永遠と響き、自分の胸と下半身が熱く火照る。

 ゴツゴツとした床すら気持ち良く、今ここで腰を一振でも動かせば止まらなくなるのも理解していた。本能が理性を超えないよう、サチコはガチガチと歯を鳴らしながら耐えていた。だがそれも長く続かない。



 ――でも...これ以上はもう....無理。一回解消しないと....た、戦いに集中出来ない。憎む事も出来ない....だ、大丈夫。私なら...また戻れる。快楽になんか溺れる....訳が....



 はぁはぁと温かく速い吐息をしつつ、短刀を手放し、右手をスカートの中に入れる。自分の下着の中に手を入れ、それが肌に触れた時サチコの身体が痙攣する。我慢していた分凄まじい衝撃にサチコの気持ちも期待も最高潮に達し、憎しみや戦いなどすぐに頭から消え、ただただ性器を触る事を望んでいた。



「ッ!さ、サチコさんッ!!」



 バドーの大きな声でサチコのピンク色だった思考は停止し、ボロボロな彼へと目線が映る。立っているのもしんどそうな彼は両手を口元で丸め、少しでも声が届くようにして叫ぶ。



「頑張ってくださいサチコさん!!大丈夫ッス!サチコさんなら勝てるッス!!その人と過去に何があったのか詳しくは知りませんが、負けたくない敵なんでしょ!?諦めないで下さいッス!!サチコさんがこの世界で頑張ってきた事を活かせばきっと勝てるッス!!」



 バドーの応援はしっかりサチコの耳に届き、彼女の手も思考も停止して呆然と彼を見つめていた。大声を出した影響で喉を痛そうにしているバドーの横にいるヨノンは彼を呆れた目で見ていた。



「結局...応援か。まぁそれくらいしか無いが....応援なんてしても効果なんて」

「効果なんて気にしてる場合じゃないッスよ!ゼェ...ゼェ...。

 今は自分らで出来ることを精一杯するッス!例え応援しか出来なくても!それに...自分の人生は言葉に救われた。言葉の力は良く理解してるッス!見守ってくれている人がいる...応援してくれる人がいる。それだけでも力は漲るッスよ。」

「.......かもな。...おいサチコ!なんだその様は!そんな体術の基本も出来てない魔力馬鹿の素人に負けるのか!?情けないな!!そんなんじゃお前の師匠より俺の師匠の方が格上ってのは確定だな!!」



 二人の声はサチコのピンク色だった頭を塗り替えていく。ピンク色から赤色へ、彼女の顔は力が抜けたゆるゆる状態から怒りによる力の入った表情へと変化する。



「格....上...?そんな訳ないじゃないですか!!ロアさんの方が凄いに決まってますよ!!ロアさんが一番凄いんですから!!それを今に証明してあげますよ!!!」



 サチコは勢いに任せて立ち上がり、自分の頬を強く叩いて心を切替える。目の前のアカネを睨みつけ、二人の言葉を胸に刻み込む。

 サチコが立ち上がったのは嬉しい事だが、自分の言葉よりヨノンの言葉を糧にされたと感じたバドーは悔しさに頬が震えた。



「ほ、ほほぉ....や、やるじゃないッスか。ま、咄嗟にしては良い判断じゃないッスかね?自分ならもっと良い掛け声くらいありましたけど!」

「何を意地になってんだよ...サチコのやる気が上がればどうでもいいだろ。ったく。

 ....ん?ロア?サチコの師匠ロアって言うのか?なんか聞き覚えが...どっかの....兵士?」

「あ!ち、違うッスよ〜。サチコさんの師匠さんは兵士とかいう柄じゃないッスよ〜。多分どっかの菓子の名前ッスよ〜。だから聞き覚えがあるンスよ〜。」

「....多分って言った直後に何で菓子って決めつけてんだ?適当な言い訳感半端じゃないぞ?」



 図星を突かれたバドーは更に慌ててまたその場しのぎの言い訳をするが、それも尽くヨノンが指摘していた。そんな二人の緊張感のない話し声はサチコの胸に響き、暖かくする。それはリラックスという意味ではなく、己を奮い立たせる勇気、力と成った。憎しみとは正反対の感情だが、サチコは冷静になり、余裕を感じる。



 ――私は憎しみに振り回されてた。憎しみでは勝てないって分かってても悔しくて意地になってた。

 前の私ならそれで良かったかもしれない。だけど今の私は違う。大切な存在がいる、叶えたい夢がある、生きる喜びも知ってる。だから落ち着くんだ私...冷静に憎め。復讐の為じゃない、勝つ為に戦うんだ!



 深呼吸をし、アカネに対する憎しみの感情を抱きつつ、サチコは構えた。短刀はそのまま床に置いておき、素手状態。

 そんな彼女を見てアカネは首を傾げながらクスクス笑っていた。



「あはは〜どうしたの委員長ぉ〜?刃物置いたままだけど諦めたぁ〜?それとも私とエッチしたいのぉ〜?」

「....貴女を見てると益々反吐が出ますよ。どんな経緯で手を出したか知りませんが、そんな麻薬に逃げて、頭の悪そうな言葉しか吐かない。ゾンビのような廃人。」

「ふふ〜、ついさっき発情してオナニーしようとしてた癖にぃ〜?そんな酷い事言っちゃうんだ〜。まぁいいや〜、すぐに快楽漬けにしてあげるからねぇ〜?」



 アカネは魔力を脚に集め、一気にサチコとの距離を詰める。サチコの口を目掛けて迫ってくる彼女の右手をサチコは内側から払い、右手の掌底を彼女の顔にカウンターで当てる。

 バチィンと高い音が鳴って相手がぐらついた所で、サチコは彼女の左膝を蹴り抜く。アカネの左脚は後ろへ吸い込まれるように下がり、上体が下がった所にサチコの左拳がアカネの顎をかち上げる。そして次にサチコは彼女の上体が上がっている内に右脚の回し蹴りを放ち頭部に命中。

 アカネは床へと倒れる。



「うっ!あは!やるなぁ〜委員長ぉ〜。」



 ニヤケ顔が治らないアカネは起き上がりと共にサチコの顔を引っ掻こうとする。しかしサチコは前進しながらそれを頭一つで避け、アカネの背後に回ったのと同時に彼女の後頭部に肘打ちをする。

 

 よろけたアカネはすぐに振り返り、サチコに向かって左拳を放つ。が、サチコはまたしても冷静に軌道を見切り、外側に回避。そして彼女の伸びきった左腕を右手で掴んで己の身体に引き寄せ、そして左手で彼女の顎を押し、サチコの身体を軸にしてアカネの体勢を崩した。


 アカネは受け身も取れずに後頭部を床に激突。いくら麻薬で痛みは解消されていても衝撃は消えない。アカネは頭をぶつけた衝撃で一瞬固まり、その隙にサチコは彼女の顔に右正拳突きをぶつける。


 アカネから手を離し、距離をとって構える。息を整え、彼女の動きに対応出来るように魔力を切らさぬよう練ることに集中する。



 ――二人の言う通り、この人は魔力が高いだけの人だ。私が今まで培ってきた技術をこの人は対応出来ない。

 悔しい....本当は感情のままにこの人を倒したい。だけどこの戦いは私一人の問題じゃない。この要塞にいる大勢の人の命がかかってる。我儘は言ってられない!

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