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エピローグ 「そのあと」

この作品は、現代を舞台にしたフィクションです。

人の流れや空気、

「なんとなくそうなってしまうこと」をテーマにしています。

特別な能力があるようで、

どこか現実にもあるような話です。

ゆっくり読んでもらえたら嬉しいです。





夜の空気は、少しだけ冷たい。



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車椅子を押す。



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砂利の音が、ちゃんと足元から伝わる。



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止まる。



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嵯峨久美が、空を見ている。



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「今日、天気いいね」



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「ああ」



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風が吹く。



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今度は、ちゃんと分かる。



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時間は、遅れていない。



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音も。



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感覚も。



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全部、揃っている。



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「ね」



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嵯峨が言う。



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「なんで、止めてくれたの?」



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少し考える。



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もう、見えない。



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流れも。

感情も。



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それでも。



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「……分からないままにしたくなかった」



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それだけ言う。



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嵯峨は、少し笑う。



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「そっか」



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沈黙。



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遠くで、誰かが笑う。



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「ね」



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「今、楽しい?」



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少し考える。



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前みたいに、答えは浮かばない。



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でも。



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ちゃんと、自分で選ぶ。



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「……まあな」



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完璧じゃない。



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満足でもない。



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それでも。



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今は、ここにいる。



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自分で選んで。



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そのはずだ。



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風が、もう一度吹く。



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その一瞬だけ。



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何も見えないはずなのに。



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少しだけ。



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流れが、分かった気がした。



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でも。



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考えるのをやめる。



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もう。



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勝手には、ならない。



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少し離れた場所で。



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ゆきが見ている。



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何も言わない。



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何も変えない。



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「……ちゃんと選んだね」



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その声は、風に混ざって消えた。



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ここまで読んでいただき、ありがとうございます。

この物語は、

「流れのままに生きること」と

「自分で選ぶこと」の間にある違和感から生まれました。

能力の話ではありますが、

本質は「どう生きるか」という話です。

完璧じゃなくても、

自分で選んだと思えること。

それだけで少し違う、

そんな感覚が伝わっていれば嬉しいです。

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