表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/16

第4部 東京・施設② 「選び直す」

この作品は、現代を舞台にしたフィクションです。

人の流れや空気、

「なんとなくそうなってしまうこと」をテーマにしています。

特別な能力があるようで、

どこか現実にもあるような話です。

ゆっくり読んでもらえたら嬉しいです。



仕事は、続けていた。



---


現場は変わる。


建築、解体、補修。



---


どこに行っても、やることは同じだった。



---


段取りを組んで、人を動かす。

危ないところを先に潰す。

無駄を減らす。



---


気づけば、職長を任されることが増えた。



---


「任せるわ」



---


そう言われて、現場を回す。



---


それなりに、うまくいく。



---


ミスも減る。

事故も起きない。



---


評価も、悪くない。



---



---


でも。



---


何かが足りない感じは、消えなかった。



---



---


介護は、やっていなかった。



---



---


たまに、派遣で入るくらい。



---



---


正直、やりがいはなかった。



---



---


あのときのことを思い出すからだ。



---


岡田。

現場。

崩れた流れ。



---


そして。



---


嵯峨久美。



---



---


忘れたわけじゃない。



---



---


むしろ、残っている。



---



---


だから、距離を取っていた。



---



---


ある日。



---


上野にいた。



---



---


理由は特にない。



---



---


ただ、歩いていた。



---



---


スマホを見る。



---



---


Googleマップの矢印が、ゆっくり動いている。



---



---


目的地は決めていない。



---



---


でも、足は進む。



---



---


止まる。



---



---


目の前に、桜。



---



---


人が少ない場所。



---



---


少しだけ、静かだった。



---



---


その下に。



---


ゆきがいた。



---



---


「やっと来た」



---



---


「……たまたま」



---



---


「嘘」



---



---


即答だった。



---



---


「ちゃんと来たでしょ」



---



---


何も言えない。



---



---


少しだけ、隣に立つ。



---



---


風が吹く。



---



---


花びらが落ちる。



---



---


「そろそろ、自分で決めなよ」



---



---


「……何を」



---



---


「どこでやるか」



---



---


その言葉が、今までと違って入ってくる。



---



---


「今のとこ、違うでしょ」



---



---


図星だった。



---



---


「ちゃんとやるなら、別のとこ」



---



---


「自分の場所で」



---



---



---


少し考える。



---



---


答えは、すぐに出た。



---



---


「……あるな」



---



---


口に出る。



---



---


「前、派遣で行ってたとこ」



---



---


ゆきが、少しだけ笑う。



---



---


「やっとだね」



---



---



---


その日で、決めた。



---



---


その施設に入った。



---



---


派遣じゃなく、職員として。



---



---


現場に立つ。



---



---


人を見る。



---



---


動きを読む。



---



---


空気を感じる。



---



---


その瞬間。



---



---


分かった。



---



---


見える。



---



---


誰が無理をしているか。

誰が限界か。

どこで崩れるか。



---



---


全部じゃない。



---



---


でも。



---



---


輪郭がはっきりしている。



---



---


(……これか)



---



---


今までの違和感が、繋がる。



---



---


俺は、把握している。



---



---


それが、自分の能力だと分かった。



---



---


でも。



---



---


代償も、すぐに分かった。



---



---


自分の感情が分かりにくい。



---



---


怒っているのか。

悲しいのか。



---



---


他人の感情が先に入ってくる。



---



---


境界が、曖昧になる。



---



---


(……面倒だな)



---



---


でも。



---



---


嫌ではなかった。



---



---


初めて、使えると思った。



---



---


現場は変わった。



---



---


ミスが減る。

人が動きやすくなる。

無理が減る。



---



---


結果が出る。



---



---


評価も上がる。



---



---


気づけば、中心にいた。



---



---


でも。



---



---


嵯峨とは違う。



---



---


無意識じゃない。



---



---


全部、分かった上でやっている。



---



---


そこが違った。



---



---


それでも。



---



---


完全には、切れない。



---



---


嵯峨久美。



---



---


考えると、引っかかる。



---



---


嫌いじゃない。



---



---


むしろ。



---



---


まだ、憧れている。



---



---


(……どこまでが俺だ)



---



---


分からない。



---



---


でも。



---



---


今は、それでよかった。



---



---


遠くで、桜が散る。



---



---


何かが終わって。



---



---


何かが、始まっていた。

ここまで読んでいただき、ありがとうございます。

この物語は、

「流れのままに生きること」と

「自分で選ぶこと」の間にある違和感から生まれました。

能力の話ではありますが、

本質は「どう生きるか」という話です。

完璧じゃなくても、

自分で選んだと思えること。

それだけで少し違う、

そんな感覚が伝わっていれば嬉しいです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ