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けれどそんなに簡単じゃなかった。タバコの火は簡単には火を飛ばさない。あいつの庭の芝生が燃える。俺の想像は甘かった。
そしてそのタバコをきっかけに、ほんの少しあいつとの仲がギクシャクした。俺一人の内面的な問題じゃなく、あいつと二人、表面的な問題だ。
君がやったんだろ? 僕じゃないんだ。他に誰がいる? あのタバコは日本じゃ売ってないんだ。
庭に落ちていたタバコを、あいつの父親が見つけたそうだ。犯人はあいつしかいない。実際にあいつはタバコを盗んでいるからな。言い訳も出来ない。切手帳を没収されたと怒っていたな。ざまぁみろって言葉をあいつに投げれなかった事がストレスだよ。
タバコの火がダメなら、直接つければいい。簡単な事だ。庭に投げ入れるのがダメなら、忍び込めばいい。長い付き合いだ。忍び込む道は心得ている。
あいつは俺と顔を合わす度に文句ばかり言う。俺はしかめっ面を見せ、頷いた。それでもあいつと離れなかったのは、俺の悪知恵と、あいつの優しさからだ。あいつは何だかんだと言ってもいい奴で、俺の事が好きだった。俺は後々疑われるのが嫌だった。あいつと喧嘩をしていると思われては困る。あいつはきっと俺の事を話す筈だ。疑われる原因は少ない方がいいだろ?
狙い時はあいつの父親がいない時だ。あいつが隠れてタバコを吸うのはそんな時。父親の事を恐れるのは子供なら当たり前だ。俺はあいつから、父親のいない日を聞き出した。偶然だ。あいつの方から教えてくれた。
今日から父さんが出張なんだ。よかったら明日泊まりに来ないか?
最高のチャンスが来たと思った。前からそんな約束はしていたんだ。俺は決行を心に誓った。やるには今日しかない。嬉しくて、自然と笑顔を作っていた。
そんなに嬉しいのか? よかった。母さんに御馳走を頼んでおくよ。




