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あいつは一年生の担任。クラスは二つ。俺は一組、あいつは二組だ。ツカツカ突然目の前に現れ、俺の顔を両手で挟んだ。左右同時の平手打ちのようなものだったな。大人の大きな手は、俺の顔を挟んでも指がはみ出していた。パシンッと頬が揺れ、耳がキーンと鳴っていた。
その一撃で俺は、半ベソをかいていた。けれどそれで終わりじゃない。あいつはそのまま俺を持ち上げたんだ。両手で顔を掴んだままな。
俺は宙ぶらりん。あいつは俺をほんの少し高く投げ上げたんだ。落ちてくるタイミングに合わせてもう一度パシンッ。それを二度繰り返した。俺の頬が真っ赤に膨らんだ。二つの理由でな。痛みと怒りだ。
俺はあいつを睨みつけた。当然だろ? 理由が分からなかったんだからな。必死に泣くのを堪えたよ。
あいつも俺を睨んでいた。けれど何も言わずに立ち去った。他の生徒達が騒ぎ始めたからな。あいつの目を見ていた俺には分かる。あいつはえらく動揺していた。情けのない奴だ。意志の弱い男なんだよ。
どんな意思でもいいんだ。例えそれが間違っていてもな。そこにあいつの拘り、その理由があればそれでいい。俺はそう思うね。
けれどあいつには、それがなかった。何の拘りもなく、単純に生徒を虐めていただけだった。
俺を引っ叩いた理由は、俺の言葉遣いが生意気だったから、だそうだ。俺は友達と話していただけ。あいつに対して生意気だったわけじゃない。子供同士、口が悪くて何が悪い? 責任があるとしたら、俺にだけじゃない。俺の親、保育園の先生、それにあいつら大人達にもある。だってそうだろ? ガキの言葉遣いなんてな、周りの物真似に過ぎない。
あいつは何を考えたのか、俺の通っていた保育園を尋ねた。俺以外にも、その年の生徒はあいつの目には悪く映ったようだ。他の保育園には行かなかった理由は分からないがな。きっと、俺への嫌がらせだろ?
あいつは俺に謝りもしなかったんだ。悪いのは俺であり、俺の親であり、保育園にあると思いたかったんだろうよ。ふざけた奴だ。
俺はその事を親には話さなかった。そんな必要はない。そう思ったからだ。俺は怒りの矛先を理解していた。あいつ本人に直接向けずして何の意味がすある?




