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彼女は悲鳴も上げられず、苦しみに倒れ込んだ。可哀想な事に、即死じゃない。苦しんだ末、死んでいった。ドラムスコが殺した第一号だ。
キャアー! 悲鳴を上げたのは、その塊から少し離れていた女だ。ヒステリックな叫び。俺だって驚いた。たった一声で演奏がかき消された。俺もあいつも、動きが止まった。
観客が逃げ出した。ドラムスコから必死に離れていく。ちょっとしたパニックだな。蜘蛛の子散らす? そんな感じだ。
ドラムスコはステージに上がり、固まっているあいつの胸を刺した。前屈みになったあいつの背中を刺す。うつ伏せに垂れ込んだあいつを蹴飛ばし、仰向けにし、身体中を刺しまくっていた。俺は依然固まったまま。予想はしていた事態。現実に目の当たりにすると、恐怖が身体を支配する。
ドラムスコは何かをぶつぶつ呟いていた。俺には聞き取れなかったけれどな。
ドタドタと、ステージ脇から足音が。今起きている事態を認識し、なんとかしなくてはと考える連中が動きを始めた。ドラムスコを取り押さえにやってきた。俺はその足音を合図に、動きを取り戻し、楽器を捨て、ドラムスコを背後から取り押さえた。その直後、ステージ脇から飛び出して来た連中に、俺もドラムスコも囲まれた。予定通りだ。
俺はナイフを奪い、刺した。散々暴れて疲れ果てていた。思いの他簡単に奪えたよ。
なん、で・・・・
ドラムスコの瞳が濡れていた。
ナイフを奪おうと、連中が飛び掛る。俺もドラムスコも、とうに死んでいたあいつも、押し潰された。そのドサクサに、俺は持っていたナイフを飛び掛ってきた一人の手に握らせた。そしてそいつは、その勢いのまま、ドラムスコの胸を刺したんだ。
これが事実だ。そいつは興奮していて何も覚えていなかった。そいつだけじゃない。誰一人、俺の行動が見えていなかった。バカだよな。俺の証言に、皆が騙された。
何言ってんだよ! 自分を守る嘘は嘘じゃない。誰だってしている。それにな、嘘はバレて初めて嘘になる。バレなければそれでいいんだ。皆が信じている事が、真実だからな。
その後俺は少し有名になった。悲劇のヒーローだ。当然の御褒美だ。ソロデビューもしたんだぜ。覚えているだろ? 話題だけ、全く売れなかった。一発屋にすらなれなかった。仕方ないよな。どんなにいい曲でも、俺の歌は不味過ぎる。テレビにも引っ張りだこ。一時的にな。俺はご覧の通りのパンピーだ。飽きられて当然だ。偉いだろ? 俺は自分を分かっている。深追いはしねぇんだ。その業界に未練はないね。俺は勘違い集団の一員になるつもりはないんだ。
なあ? いい加減その服装やめてくれよな。可愛い格好しろってんだ。俺の好みはワンピースだ。短めのだぞ。生足が見えなきゃ意味がない。パンツは見せるなよ。見えるか見えないか、そのギリギリが可愛い。化粧はしなくてもいいけどな、髪の毛くらいなんとかしろよ。そんなボサボサじゃぁな。それから表情もな。笑っていれば誰だっていい女になれるんだ。




