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けれどあいつは違っていた。
この前は悪かったよ。悪気はなかったんだ。いい曲を作りたかった。けれどどれも誰かの曲に似てしまう。お前やドラムスコのような曲が俺には書けなかった。だからつい・・・・ ごめん。パクッたのはあの二曲だけだ。
そんな言葉に、俺は騙された。あいつを許し、もう一度バンド活動を始めた。俺はバカだ。あいつは結局、腐った大嘘つきだ。
けれど許さなかった奴が二人いた。ドラムスコと、彼女だ。ドラムスコの怒りは分かる。俺が必死に説得したけれど、納得してくれなった。俺がまたあいつとバンドを始める事さえ、裏切りと言っていた。彼女にして見れば、恥をかかされた。あいつとは二度と会いたくなかったようだよ。
俺とあいつは二人で活動する事にした。ドラムスコの代わりは考えられなかったんだ。
ライヴにはヘルプのドラマーを呼んで凌いでいた。それなりに評判もよかったよ。けれどな、俺は見つけてしまったんだ。あいつが発表した新曲。今まで以上にいい曲だった。やれば出来るじゃんと思ったね。ライヴでも好評だった。歌詞は日本語だったし、俺は少しも疑っていなかった。
CD屋の視聴機、俺達の曲が流れた。あの野郎、またやったな! すぐにピンときた。俺はすぐにそのCDを買った。歌詞を見てやっぱりと思ったね。丸ごとパクリだ。日本語訳をそのまま歌っていたんだ。ほんの少し歌い易く変えてな。
俺はあいつには何も言わなかった。怒りと共に呆れてしまったんだ。あいつには何を言っても無駄なんだ。
ちょうどその頃、あの街では一つの事件が起きていた。知ってるよな? 通り魔事件だよ。男女、子供大人、区別なくに背後から襲い掛かる。ナイフで脇腹を刺すのがそいつの手口だ。幸いな事に、その時点では死者が出ていなかった。意識不明の重傷者は二人出ていたけれどな。
俺は偶然、その犯人が誰なのか知ってしまった。目撃者の証言の中に、俺だけが知っている秘密が隠されていたんだ。
なんて大袈裟だけどな。俺だけじゃなくても、ほんの数人しか知らないあいつの特徴だよ。犯人の右手の親指の爪は、紫色に膨らんでいた。
あのイベントの日、スネアをケースにしまう際、蓋が勢いよく閉じられ、親指を挟んだ。その現場を見たのは俺一人。ドラムスコは悪態をついて痛がっていた。




