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俺の曲? 不思議だよな。同じ曲なのに、見事に好き嫌いが別れる。そんな曲だった。
全ての曲をあいつが唄っていた。あいつはギターボーカルだ。俺は歌わない。コーラスだってたまにだ。評判がよくなくてな、一時はコーラス禁止条例が発せられた程だ。
嬉しい事に、というか、当然というか、俺たちの曲は評価が高かった。スカウトは三人。演奏後に講評してくれる。一人目は興奮していた。
よかったらウチの事務所に来ないか? 君達だったらすぐにデビュー出来る。特に一曲目と三曲目は最高だよ。
あいつの表情は微妙だったな。俺達と違って、素直に喜んでいなかった。俺にはそんなあいつが不思議だった。ほんの少しの間だけな。その不思議は、すぐに解けてた。二人目のスカウトが教えてくれた。
全てオリジナル? ギターボーカルの君が作詞作曲ってなってるけど、本当? 英語の詞も君が?
その言葉にあいつが固まった。俺が代わりに答えたよ。
今日のは三曲ともこいつが作りました。ライヴでも人気の曲なんです。特に一曲目と三曲目は。
そうだろうね。いい曲だと思うよ。
スカウトの顔が厳しくなった。それまでの穏やかな表情が消え、何か怒っているようでもあった。
私はね、音楽が好きなんだ。ウチの会社以外の曲もチェックしている。邦楽も洋楽も、なんでも聴いている。メジャーでない曲もね。私の言っている意味、分かるよね?
俺には分からなかった。ドラムスコにもだ。いつものようにニコニコ笑っていた。けれどあいつには分かっていたようだ。言葉なく頷いていた。
曲も歌詞も、全てがそのまんまだ。パクリというのもはばかれる。どういうつもりなんだ?
俺もドラムスコも一瞬にしてパニックに陥った。パクリ? ・・・・そうか。だからあいつは喋れもしない英語の歌詞をつけた。従姉妹の姉ちゃんに日本語を英語に訳してもらったと言っていた。ベースやドラムについてもうるさいくらいの注文をしていた。いつもなら自由に奏らせてもらえるのにな。心当たりってのは後になってから出てくるものだ。
三人目の講評の前に、あいつは逃げ出した。俺達は固まったまま動けなかった。
君達は知らなかったようだね。
それが三人目の講評だった。俺達はスタッフに支えられ、ステージを後にした。
ふざけんなよ! 何でこんな嘘をついた! 俺はあいつを許さない。ぶん殴ってやる! どこ行きやがった!
ドラムスコが興奮していた。無理もない。俺だって怒りに我を忘れそうだった。
あいつはすでに楽屋からも姿を消していた。彼女も消えていた。よかったよ。そこにあいつがいたら、俺もきっと殴っていた。それも限界以上にな。
バンドは解散。そうなると思っていた。あいつが俺の前から消える。それが普通だよな? 同じ高校、俺を避けてこそこそ生きる。あいつにはお似合いだ。




