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後であいつに聞いた話だ。あいつは俺が彼女とそういう関係になる前から彼女に手を出していた。電話をかけまくり、必死に口説いた。彼女はずっと断っていたそうだ。俺に惚れていたからな。けれど同時に、あいつに惹かれていたのも事実だ。俺の目を盗み、俺が便所に行っている時や、本屋で立ち読みしている時、学校で居眠りをしている時。二人はその時間に俺を裏切っていた。
真実を知っても、俺は何故だか怒りを感じなかった。どうでもいい。そうとしか感じなかった。俺はそれまでと同じようにあいつと付き合った。彼女も同じように顔を出していた。狂った女だ。俺はもう少しの魅力も感じていなかった。隣にいても俺にはその顔が見えなかった。存在を感じられなかったんだ。彼女はあいつの目を盗んで俺を誘う事もあった。俺は受け入れない。というか、身体さえ無反応だ。仕方ない。彼女は俺に悪態をつく。勝手に言わせておけばいい。無意味な叫び。サルの威嚇を思い出した。
ドラムスコは俺とあいつの関係が信じられないようだった。
よく平気だな。裏切られてたんだぜ? 悔しくないの?
悔しい? 何でだ? 俺は俺で楽しんだんだ。それでいい。どうでもいいね。それよりも俺はあいつとの活動が楽しいんだ。お前もだろ? だからバンドを続けている。
そうだけど・・・・
それでいいんだよ。女を取られたなんて、たいした裏切りじゃない。よくある事だ。バンドマンなら、特にな。
バンドの人気が高まり、俺達にチャンスが振ってきた。プロのスカウトが集まるイベントへの参加を誘われた。
あいつは大喜びだった。これはチャンスだ! なんて気合を入れていたな。俺もドラムスコも楽しみにしていた。プロになれるかも知れない。考えるだけで嬉しかった。
あいつが選んだ曲は三曲ともがあいつの作った曲だった。人気のある二曲に、あいつ個人がお気に入りの一曲。
俺達のチャンスは三曲。そう決められていた。一曲目と三曲目には納得が出来た。あいつが作った中で一番の出来だ。歌詞が英語なのが気に入らなかったけど、そこがあいつの拘りだった。知ってるか? 拘りっていい意味じゃないんだぜ。
真ん中の曲は、俺もドラムスコもあまり・・・・ 悪くはないけれど、スカウトの前で奏る曲じゃない。そう思ったんだ。パクリとまではいわない。けれど何処もかしこも誰かの顔が浮かぶ。そんな曲だった。スタジオでジャムってるぶんには楽しかったけれど、人前で奏る曲じゃない。
俺達のバンドは皆が曲を作っていた。俺もドラムスコもな。ドラムスコの曲が一番まともだった。当たり外れのない曲。言い換えればありきたりなんだけどな。それでもパクリじゃないオリジナルの匂いが漂っていた。




