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 退職前、社長は俺に知り合いの会社を紹介してくれた。償いのつもりだ。俺は丁寧に断ったよ。見栄っ張りに恩を売るのは御免だ。他にも何人かの社員が誘われたようだ。その中にあいつは含まれていなかった。

 あいつも俺には社長の世話にはなりたくないと言っていたよ。

 その時の社員の一人が社長の口利きで就職をしている。俺はそいつにたまたま会い、あいつの事を知った。あいつもその会社に入り込んだそうだ。数ヶ月遅れでな。あいつはまた再就職に困り、社長に頼った。土下座でもしたんだろうな。それにしても社長は狂っている。息子を死に追いやった奴の世話をするんだから。腐った見栄っ張りだ。

 俺は退職金と雇用保険で自由を楽しんでいた。

 その頃の俺の楽しみは、女だった。いい女を二人、手に入れていた。偶然? そんな訳ないだろ? 計画的だ。

 二十歳の娘と、五十手前のお姉さん。どっちもそこそこだった。可愛くも見える。ブスにも見える。服装や化粧でまるで違う女に変身するからな。まぁ俺は、すぐに裸にしちゃうんだけど。汗をかけば化粧も溶けていく。

 スタイルがっていう意味じゃなく、二人ともいい身体をしていた。男好きする身体って意味だ。

 そう言えばあいつ、若い頃の浮気を自慢していた事があったな。三日続けて浮気相手が家に乗り込んで来たってな。間抜けな話だ。同じ職場の女に手を出したんだ。三人共がだ。あいつは気付いていなかったけどな、三人が互いに手を組んでいた事は明らかだ。じゃなければ三日続けての偶然なんてあり得ない。

 そんなに偶然が続くって事は、本当はもっと沢山浮気相手がいたって事ですよね?

 俺の言葉は皮肉だよ。けれどあいつは、少しの間を置き、喜んでこう言った。

 そうなんだよ。よく分かったな。

 あいつは大嘘つきなんだ。

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