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 あいつが浮気をしていたのは事実だ。けれどあいつは何も知らない。あいつの妻も、当時から浮気を続けていた。

 あいつの妻は簡単だ。俺から声を掛ける事もなく、そこにいるだけで、向こうからノコノコ近付いて来た。あいつの妻がそこにいる事は調べ済みだった。俺は暇人だな。仕事帰り、休みの日、あいつの家の前で張っていた。

 あいつはバカだ。俺を食事に誘った事がある。俺は当然断るつもりだった。何度か誘われていて、何度も断っていた。どうして気付かない? 俺は嫌いオーラを全開に放っていた。

 今日は帰ってから何か用事でもあるのか?

 帰り際、あいつがそう言った。

 いや、今日は何もありませんよ。家に帰って酒飲んで寝るだけです。

 余計な事を言わなければよかった。

 だったら俺と一緒にラーメンでも食いに行くか?

 えぇ・・・・ いや・・・・

 言葉に詰まった俺の負けだ。

 用事ないんだろ? だったらいいじゃねぇかよ。

 ラーメンを食いに行くっていうのが微妙だった。飲みに行くなら大歓迎だったけどな。相手が誰であれ、ただ酒はいいもんだ。

 何故だかあいつは、俺らを車に乗せ、そのままあいつの家に向かった。俺一人だったら何が何でも断っていた。他にも犠牲者がいるからこそ、我慢が出来るってもんだ。

 財布を忘れちまったからよ、ちょっと取ってくるよ。ここで待っててくれ。

 何も言わずにあいつは車を駐車場に停めた。ふざけた奴だよ。財布がないなら先に家ばいい。わざわざ家に帰るなら、別に次の日でもいいだろ? こっちは暇だけど、無駄な時間に付き合う程の心の余裕がない。けれどまぁ、おかげであいつの家を知る事が出来た。かなりの豪邸だ。その時は知りたくもないと思っていたけれど、後には知っててよかったと感謝した。

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