11
あいつが浮気をしていたのは事実だ。けれどあいつは何も知らない。あいつの妻も、当時から浮気を続けていた。
あいつの妻は簡単だ。俺から声を掛ける事もなく、そこにいるだけで、向こうからノコノコ近付いて来た。あいつの妻がそこにいる事は調べ済みだった。俺は暇人だな。仕事帰り、休みの日、あいつの家の前で張っていた。
あいつはバカだ。俺を食事に誘った事がある。俺は当然断るつもりだった。何度か誘われていて、何度も断っていた。どうして気付かない? 俺は嫌いオーラを全開に放っていた。
今日は帰ってから何か用事でもあるのか?
帰り際、あいつがそう言った。
いや、今日は何もありませんよ。家に帰って酒飲んで寝るだけです。
余計な事を言わなければよかった。
だったら俺と一緒にラーメンでも食いに行くか?
えぇ・・・・ いや・・・・
言葉に詰まった俺の負けだ。
用事ないんだろ? だったらいいじゃねぇかよ。
ラーメンを食いに行くっていうのが微妙だった。飲みに行くなら大歓迎だったけどな。相手が誰であれ、ただ酒はいいもんだ。
何故だかあいつは、俺らを車に乗せ、そのままあいつの家に向かった。俺一人だったら何が何でも断っていた。他にも犠牲者がいるからこそ、我慢が出来るってもんだ。
財布を忘れちまったからよ、ちょっと取ってくるよ。ここで待っててくれ。
何も言わずにあいつは車を駐車場に停めた。ふざけた奴だよ。財布がないなら先に家ばいい。わざわざ家に帰るなら、別に次の日でもいいだろ? こっちは暇だけど、無駄な時間に付き合う程の心の余裕がない。けれどまぁ、おかげであいつの家を知る事が出来た。かなりの豪邸だ。その時は知りたくもないと思っていたけれど、後には知っててよかったと感謝した。




