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そんな話にあいつは惹かれた。
けれどあいつは使い物にならなかった。社長はあいつがあまりにも仕事が出来なくて、息子に責められ、ショックで死んじまった。それから十年、あいつは独立を申し出た。お前じゃ無理だと一喝され、逆切れして逃げていった。十年いても何の仕事も出来ないあいつに独立させて任せる仕事なんてある筈もない。あいつは仕事も人間性も上辺だけだった。
仕事を失ったあいつに頼る人なんていない。居酒屋での出会いなんて、そう続くものじゃない。妻に頼っても、二度目は難しかった。というより、もう当ては残されていなかった。あいつは社長の元に現れ、泣きついた。それしか道がなかったんだ。
家族の中、あいつは孤立していた。一緒に暮らしている親からも軽蔑され、兄弟からも距離を置かれていた。親からの遺産は全て兄弟のもの。遺書を弁護士が預かっている。あいつには家がある。それで満足だろと親は言う。あいつに逆らう度量はなかった。
これで大体分かったろ? あいつって人間がどんなに薄っぺらかが。
俺はあいつから仕事を教わる事になった。といっても、あいつから教わる事なんて一つもない。あいつの言う通りにしていたんじゃ仕事が前に進まない。俺はあいつに隠れて息子から仕事を教えて貰った。あいつは面倒臭い人間だ。人間なんて皆面倒臭い。そんな寂しい事は言うなよ。それが現実だとしても、あいつはその上をいく面倒臭さだったんだ。
あいつは何故だか俺の教育係を買って出た。迷惑な話だよな。俺を仲間に引き込もうとしたんだ。あいつは若い社員を囲んで社長や息子の悪口を言って喜んでいた。もっとも、その言葉を真に受けていた奴は一人も・・・・ いいや、一人はいたかもな。類は友を呼ぶ。いいや、友が類に引き込まれるってのが本当だな。
俺も始めはその中で話をしていた。聞いているだけで腹が立つ糞話だ。他人の文句。それも自分を棚に上げてだ。何がそんなに楽しいのかね? あいつらはゲラゲラ笑って喜んでいたよ。俺には理解が出来なかった。他人の話をして何が楽しい? 俺は他人には興味がない。




