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 あいつの過去の話はまだ続く。聞きたくもないよな? そんなつまらなそうな顔してりゃぁ分かる。俺だって話したくもない。けれどもう少しだけだ。あいつは世話になったその会社を、一度辞めている。半分はクビみたいなものだ。

 この会社には当時、社長の甥っ子が働いていた。兄の息子で、優秀だったそうだ。仕事だけじゃなく人間的にもな。

 これは噂の域を出ていないが、どうやらあいつの虐めが原因で自殺をしたそうだ。息子は高校生になり、会社でアルバイトをしていた。虐めの現場を何度も見ていた。まぁ大体の想像はつく。俺はあいつの息子に対する態度を見ていたからな。

 当時は会社の敷地の隣に社長の自宅があった。その後会社が大きくなり、社長家族は引っ越し、その土地に社屋が広がった。

 自殺をした甥っ子は、遺書を残していなかった。社長は虐めの事を警察には言わなかった。しかし、あいつには会社を辞めて欲しいと伝えた。

 あいつが簡単に受け入れる筈もない。社内での立場が悪くなっても関係ない。あいつは少しも気にせず会社に顔を出していた。

 けれどあいつは、突然会社を辞めていった。お世話になりましたと辞表を提出。その日のうちに消えていった。

 理由は一つ。新しい職場が見つかったんだ。飲み屋でたまたま隣に座っていた客が、会社の社長だった。といっても死に損ないの爺さんで、実質会社は息子の専務が仕切っていた。人手不足だった訳ではなく、話の流れでそうなっただけだ。専務はいらないと言ったが、社長にもプライドがある。一度受け入れた話、断るなんて出来っこない。あいつは無事再就職を果たしたんだ。

 その社長はあいつに一つの約束をしていた。仕事を覚えたら独立すればいい。あんたなら大丈夫だ。十年我慢すれば仕事を回してやるからな。

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