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先に来たのは救急車。後からすぐに警察も来た。あいつは大袈裟にも救急隊員に肩を担がれ、乗り込んだ。痛くない筈の足を引き摺っていた。彼女は腕を少し痛そうに顔をしかめて掴んでいた。けれど救急車には乗らなかった。
おいあんた! 病院まで付いて来てくれ!
何故だかあいつは俺にそんな事を言った。どうして俺が? ふざけるなと思ったよ。そして当然シカトを決め込んだ。
俺の車は救急車の前にあった。煽られるような形で発車した。あいつは救急車の中。発進した救急車はサイレンを鳴らし、すぐに俺を追い抜いた。
何を考えていたのか、俺は救急車を追いかけた。幸いにもすぐ近くの病院に入り込んだ。俺は入り口近くの歩道に車を止め、待っていた。あいつがそこから出て来るのを。外に出てタバコを吸って、缶コーヒーを飲んで、病院を出入りする人を眺めて。
夕方の病院は、出入りが激しい。その時はそう思った。けれどそれは間違いだ。病院は、いつどんな時でも人の出入りが激しい。
不思議と可愛い子が多いのは何故だ? 見舞いに来るなら可愛い子の方が嬉しい。そんな患者の気持ちを知ってなのか? それなら俺も、入院するんだけどな。なんて事を考えている内、あいつが現れた。以外というか、当然というか、早いご帰宅だった。俺としてはもう少し、可愛い子を眺めていたかった。声をかけるのはともかく、妄想する暇もない程に早く戻って来たよ。
あいつは出口から顔を見せると、辺りをキョロキョロ。俺を探していたようだ。おめでたい奴だ。本当に俺が来ると信じていた。まぁ、本当に追いかけた俺も充分におめでたいがな。
おぉ! やっぱりいたよ。ありがとうな。
あいつは小走りに近付いて来た。右手を挙げ、頭を少し下げ、大声を出す。
いやぁ、助かるねぇ。
俺は苦笑い。タバコを投げ捨て、車の中に戻った。あいつは真っ直ぐ助手席のドアを開け、乗り込んで来た。
信号まで真っ直ぐ、そこを右に曲がってくれ。後は暫く道なりに真っ直ぐ、曲がる時はまたその都度教える。
俺はさ、今無職なんだ。お前もだろ? 平日のあんな時間からフラフラしているんだ。違うのか?
俺はただ、首を横に振った。当時はちゃんと仕事をしていた。ちゃんとか? まぁどうでもいい。説明するのが面倒なんで、何も言わない。
夜勤専門で働いていた。その日は休みの日だ。なかなかいい会社でさ、週に四日の勤務だった。一日十二時間勤務。身体は辛いけど、稼ぎは良かったな。




