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その日のコンビニは、駐車場のないコンビニだった。始めて行くコンビニ。その後は一度も行っていない。二度と行きたくない場所だ。何故かって? そこであいつと出会ったからだよ。それもあまりいい出会いじゃなかった。
ごめんなさい・・・・
目の前に倒れていた女がそう言った。驚きのあまりつい、そんな言葉を発してしまったようだ。本音じゃなく、あいつの罵倒に気圧されただけだ。俺は見ていたから分かる。その女は悪くない。悪いのはあいつの方だ。
けれど女にも非がある。そうなんだ。悪くもないのに謝った。だからこそあいつはつけあがる。
俺は道路脇に車を止め、ガードレールを乗り越えてコンビニに向かった。そこそこ大きな道路沿い、片道二車線、一応は国道だぜ。狭い土地に無理矢理コンビニなんて作るから、駐車場がないんだ。駅から近くて客には困らないだろうって考えが腹立つ。コンビニは車でも行けるってのがチャームポイントだ。
俺は雑誌の立ち読みをして、もちろんパチンコ雑誌に決まってるだろ? それから缶コーヒーを買った。食事は外で、何処かの店に入ろうと考えた。コンビニのおにぎりや弁当を眺めたけれど、どれもいまいちだ。なにかもう一つ、俺の腹に訴えてくるものがなかった。缶コーヒーは自動販売機よりもスーパーよりも、コンビニが一番なんだ。分からないのか? コンビニでは限定のおもちゃ付きがよく売ってる。ミニカーとかミニバイクとか、色々ある。働く車シリーズなんてのもあったな。まぁたいていはタイヤのある乗り物ばかりだ。その日俺が買ったのは、マウンテンバイクだった。ちょっと高級なチャリンコシリーズだよ。
店を出てすぐに、あいつの怒鳴り声が聞こえた。ガシャン! バタンッ! 騒々しいったらない。
前から猛スピードで突っ込んで来る自転車が一台。そこに跨っていたのがあいつだった。俺の目から見て、あいつは明らかにわざとぶつかろうとしていた。
彼女は完全な被害者だ。前から突っ込んで来るあいつに驚き、足を降ろして立ち止まっていた。そこにあいつが突っ込んだ。彼女に非はない。残念だけど、それを知っていて、証言出来るのは俺だけだ。俺は何も言わなかったけれどな。他人の騒ぎに巻き込まれるのは御免だ。俺はただの傍観者でいたいんだ。っていうか本当は、彼女のその後の行動に理由がある。
あいつは彼女に対して左側を走っていたと主張していた。それが悪い事だと、彼女の意識に植えつけていた。実際にそれが悪いのかいいのか、俺には分からない。ひょっとしたら、こいつらには分かるのかも知れないがな。まぁそんな事には興味はない。俺に分かる事は一つ。彼女は自転車を止めていて、あいつは走らせていた。
あいつは手の甲から血を流していた。痛い! 動かない! ダメだ! 救急車を呼んでくれ! 叫んでいるあいつの顔は、滑稽だった。三文芝居? 俺だけなのか? あいつの行動もセリフもわざとらしく聞こえる。
おいあんた! 救急車呼んでくれよ! 頼むよ!
あいつが俺に向かってそう言った。騒ぎは大きくなり、コンビニの前には結構な人だかりが出来ていた。それなのにあいつは、俺を指名した。
彼女はおたおたしながらもまず、旦那に電話を掛けた。その行動に、俺は彼女を助ける気を失った。旦那がいるのか・・・・ つまらないな。それになにより、彼女は救急車や警察ではなく、真っ先に旦那に連絡を取った。普通は警察か救急車だろ? 俺が彼女を軽蔑した瞬間だった。結局、救急車を呼んだのも、警察に連絡したのも俺だ。あいつは最初、警察は呼ばなくてもいいと言った。示談で済まそうと。医者代、プラスアルファ、今すぐ払ってくれればそれでいい。多くの野次馬がいる前で、平気でそんな言葉を吐いた。
あいつは彼女から連絡先を聞こうと躍起になっていた。彼女は賢い。簡単には教えなかった。しかし、警察には連絡先を伝えなければならない。そして警察は、お互いに相手に連絡先を伝える義務がある。とあいつは言っていたが、本当はどうなんだ? そうか。まぁ、どうでもいい話だ。




