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 本当助かるよ。手が痛くてさ、これじゃぁ自転車にも乗れない。明日でも構わないからさ、自転車引き取って来てくれないか? 頼むよ。

 ふざけるな! と思ったね。けれど口にはしなかった。ただもう一度、首を横に振った。

 冷たい奴だな、お前は。友達いねぇだろ? 可哀想だから俺がなってやるよ。

 あいつは勝手にベラベラ話を続けていた。事故の事。それが初めてじゃない事。以前は慰謝料で十数万手に入れたそうだ。仕事をしない理由。年齢。彼女がいない事。普段の生活。聞いてもいないのに話が止まらず次から次へと話題を変えていく。俺は頷いたり、首を振ったり、それだけだ。後はあいつの指示に従い車を走らせた。

 そこが俺の家だ。ちょっと待っててくれ。今門を開けるから。

 あいつが言う俺の家は、信じられない程ではないけれど、そこそこ大きな家だった。あいつの言う門は、家の門ではなく、ガレージの門だった。車の入っていない空のガレージ。俺はそこに車を止め、家の中に招待された。家には誰もいなかった。どんな母親なのか興味があったのに残念だ。その後もあいつの家には何度か行っているが、母親の姿は見ていない。

 あいつの家の中、あいつの携帯電話が鳴り響いた。

 もしもし、いやぁ、本当に大変でしたよ。今も手が痛くて、右手では電話も持てないんですよ。

 話し相手が誰なのかはすぐに分かった。彼女じゃない。彼女の旦那だ。

 示談でも構いませんよ。こちらとしては治療費もろもろを払って貰えればそれでいいんですよ。あっ、ちなみに健康保険は使いませんでしたから。今日は一万以上も取られてしまいましたよ。

 その後もあいつは文句を並べていた。丁寧な口調だっが、俺には悪意が感じられた。後で聞いたんだが、病院代は払っていなかった。事故の時、大抵は支払いをしないもんなんだとよ。俺は知らなかったが、それが常識なんだろ? そこで払うとえらく損をするって話を聞いた。まぁ、どうでもいい話だな。俺は事故なんて起こさないし、巻き込まれる程間抜けじゃないからな。

 どうでもいいんですよ。こっちとしては治療費に慰謝料、それが貰えればそれでいいんです。二・三万? それじゃあとても、示談なんて出来ませんね。まぁ、いくら出せるのか考えて下さい。こちらとしては訴えても構わないんですよ。そうしたら裁判になりますけどね。

 嫌な奴だ。ほんの少し、彼女に同情した。

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