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 あいつが持っていた缶ビールは二本だけ。両手に二本、そのまま店を出てチャリンコのカゴの中だ。蓋を開けた時に泡が溢れたからな。万引きだよ。直接聞かなくったって、あいつの事は大体分かる。

 おい! 何かおかしくないか?

 あいつが突然真顔になった。直前までニヤついていたあいつがだよ。

 お前の顔か?

 俺は冗談ではなくそう言った。あいつの顔は本当におかしかった。あんな真剣な顔のあいつは始めて見たよ。その後にだって一度も見た事はないね。

 馬鹿言うな! 何か変だぞ! 俺達は何かを忘れている。なんだ? お前も考えろよ!

 俺は公園を見回した。そこには誰もいなかった。そうだ。誰もいなかった。分かるだろ? いる筈の奴がいなくなっていたんだ。

 まぁ、だからといってどうって事はないんだけどな。死んでなかった。それだけの事だろ? 俺達は何時間も別の場所にいたんだ。そのコジキがどこかに逃げるのは当然の事だ。けれどあいつは、慌てていたな。今なら冷静に考えられるけど、当時は俺も慌てていた。あいつのが移ったんだな、きっと。だってそうだろ? ガキにやられたコジキが必死に逃げるのは当然だ。多少身体が痛くても、動ける限りは逃げるもんだろ? ガキがいつ戻ってくるか分からない。狂ったガキほど恐ろしいものはない。あの時のあいつがまさにそれだよ。

 あの野郎! どこ行きやがった! チクショウ! 逃げやがったのか?

 別に逃げたからって、大丈夫だろ? あいつに行く場所なんてないんだよ。

 そんな事あるかよ! ああいうのはな、一人じゃ生きていけない事をよく知ってるんだ。だからいつでも誰かとつるんでる。仲間を連れて来たらどうする?

 あいつの馬鹿げた発想に、俺はビビってしまった。コジキの軍団が攻めてくる。想像しただけでも鼻が曲がる。

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