第二十七話 亜 dream of heart
いつもとは違う下着に少し違和感を感じながら、俺はリビングへと向かった。
「あ、そこに牛乳置いてるから飲んでいいよ」
「分かりました。 いただきます」
なんと、珍しい。 瓶の牛乳だった。 風呂上がりのあとのってやつか。
「あ、いいなー僕も飲も」
俺の後に続いてハジメもそれを手に取る。 熱された体に冷たさが伝わってくる。
ゴクッ……ゴクッ……
「……プハっ! 」
いや、うますぎだろ、これ。
「僕は風呂上がりはコーラ派なんだけど、ありだね。 牛乳」
別に風呂上がりに限らずいつでもコーラ派だろ。
△
「じゃあ、男子はコッチで寝てね」
アスナから指された部屋は……ってこれ部屋か? ってぐらいにひどい状態だった。 ダンボールが天井まで積み上げられていて、いかにも今片付けたという感じだった。 かろうじて現れた床に布団が2セット敷かれている。
「カスミ先生……」
俺は視線を向ける。
「いやー、バタバタ片付けたからねー。 まさか誰かが泊まりに来るとは思っていなかったのよー」
と、俺と視線を合わせずに言う。
「他に部屋あるじゃないですか」
「いや、他の部屋はコレより酷いわ……」
カスミ先生の代わりにアスナが呆れたように言う。 コレより酷いのかよ……。
「そ、そんなことないでしょー? どの部屋も片付ければ使えるわよ! ……3日間ぐらいかければ」
「お言葉ですが先生、軽く見積もっても5日だと思います……」
ソナが申し訳なさそうに言った。 大抵の部屋は片付けなくても使えるようにするべきなのだ。 それを5日とは……。 度ってモノを知らないのか。
「と、兎に角、今日はここで寝てね♡」
ウインクするカスミ先生。 悪意しかなかった。
そうして、各々就寝の準備をして、女性班は大きな部屋でベットへ寝に行き、俺ら班は大きな部屋なのに震度1で倒れそうなダンボールタワーの侵略によって小さくなった布団へと向かった。
「おやすみ、ユウ」
「ああ、おやすみ」
俺らは特に会話もせず、すぐに眠りについた。 俺は他人の家で寝るということは苦手なのだが、今日は色々ありすぎて体力の限界だった。 深い眠りへと……。
行ければ良かったのに。
▽
気づくと俺は雨の中に立っていた。 場所は……住宅街の道路、だろうか。 じこく は夕方くらい。 太陽が見えないから分からないが……。
暫く立っていると、前から3人組の人影がこちらに向かってきた。 向かって右は母親、真ん中には妹、左には兄がいた。
……え……?
ここで俺は気づく。 どうして人影だけで性別がわかるんだ……? 目には黒いシルエットしか見えない。 それでも、確固たる理由がなくても、俺は判別がついた。
「やめろ……」
瞬きをすると、後ろから3人組の……大柄な男の〝シルエット〟がこちらに向かってきた。
「……やめてくれ……」
瞬きをすると、男たちは〝メメ〟を担いで連れていこうとしていた。 〝母さん〟は、男の足にすがって、〝メメ〟を返すよう頼み込んでいた。 そして〝俺〟は。
「っっっ……!! 」
瞬きをすると、俺は〝俺〟に飛びかかっていた。 後ろへ飛んで行った〝俺〟に、俺は馬乗りになって顔面を殴り続けた。
「どうして……〝お前〟はっ……何も……しなかったん……っっだっ……! 」
すると、〝俺〟が今までの痛みは無かったかのように俺を睨みつける。 冷たく、嘲笑うかのように。
そして言う。
「どうしてって……きみのちからぶそくでしょ? 」
その瞬間、目の前が黒い黒で真っ黒になる。 上か下かも分からないのに、とにかく俺は落ちて堕ちておちていく。 最初の3人組の親子は──
▽
「っっっ!!! ……ハァ……ハァ……ハァ」
目が覚めた。 荒い呼吸を整えようと胸に手を当てる。 ……大丈夫だ。 ただの……悪夢だ。 汗で滲んだ手で拳を作る。 こういうことは偶にある。 メメと母さんがいなくなってすぐの頃は毎晩のようにこの夢に魘された。 最近は無くなっていたんだが……。 まあ、無理もないか。 今日のことを考えると。 少し安定してきた頃に、
ガチャリ
と、ドアが開く音がした。 ……ハジメか? トイレにでも行ったのだろうか。 ガチャン と閉まる音がしたと思ったらハジメは俺の布団の中へ入ってきた。 モゾモゾ……と、俺の頭の方へ向かってくる。
……ったく、ふざけてんのか、寝ぼけてんのか知らないが……めんどくさいな。
起こしてやろうと俺は左を向く。
果たして、そこにハジメ──はいなかった。
代わりに──ソナがいた。
ここまで読んでくださり、本当に感謝の言葉しかありません。
最近、Twitterの方でも宣伝させてもらっています。
そちらの方もよろしくお願いします!




