↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
鍛冶屋ではじめる異世界スローライフ  作者: たままる
第17章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

1094/1112

廃鉱2

 坑口に背を向けて歩き出してから、誰も口を開かなかった。

 濡れた土を踏み、靴底の下で石が傾かない場所を選びながら、俺たちは旧道を戻る。先頭のヘレンは進む先を見て、次には足元へ視線を落とし、ときおり背後の気配を確かめた。


 リディは何も言わず、その後ろを歩いている。坑内で感じた圧のようなものが、まだ意識に残っているのかもしれない。

 俺には、彼女の横顔がいつもより少し硬く見えた。


 リケも黙ったまま、露出した石を避けて進む。俺は最後尾から、3人の歩みと足元を見ていた。

 分かれ道の手前まで戻ったところで、坑口から十分に離れ、日没までに落ち着けそうな場所を選んで足を止める。


「今日はここにしよう」


 俺が言うと、3人がそれぞれ頷く。

 パパッと寝るところだけ決めると、焚き火を手早く用意する。火はあまり大きくしない。荷はすぐ手の届くところへ置いた。

 食事も必要最低限、火を通さずに食べられるものを手早くとる。今は身体を休めて、明日は存分に動けるようにしておくほうが大事だからな。


 食事をとりながら、簡単に話をする。ここまでの風景の話は誰もしなかった。


「今夜の見張りはどうする?」


 俺が尋ねると、ヘレンが事もなげに言った。


「街道からは十分離れてるし、道の様子から見て、誰も通らないみたいだから、ここならいらないんじゃないか? 何かが近づいたらアタイがすぐにわかるだろうし」

「ふむ」


 今はほとんど「元」がついているとはいえ、つい最近まで現役の傭兵だったヘレンの言うことだし、それならば良いか、と今夜は見張りを置かないことになった。


「リディは大丈夫か?」

「ええ、ここならそこまで厳しくないので」

「ならいいんだが。しかし、〝人除け〟の魔法をこういうところで使えると良いんだがなぁ」


 俺は唇を尖らせた。リディが久しぶりにクスリと笑う。


「あれは住居にかけるものですからね」

「ここでたった1日飯を食って寝るだけじゃ住居とは言えないか」


 俺が小さく笑うと、皆も少し笑った。

 俺は少し気を引き締めて続ける。

 

「明日は中へ入る。だが、不安要素が一つでもあれば戻るぞ」

「ああ」

「はい、親方」

「分かりました」


 それだけ決めると、あとは静かに夜を越えた。

 目を閉じても、坑内から響いた『ゴッ』という鈍い音は、しばらく耳の奥に残っていた。けれど考えたところで、暗い穴の向こうに答えが出るわけでもない。

 気がつけば、意識は闇の底へと沈んでいった。


 次に目を開けたときには空が十分に明るくなっていた。

 俺たちは荷を背負い直し、旧道を引き返す。知っている道ではあるので、再びの往き道はスムーズに進めた。

 昨日見た坑口が、今も岩肌の根元で黒く口を開けている。近づくにつれ、湿った冷気が外へ流れ出しているのが分かる。

 今日は、昨日より早い時間にここへ来られた。多少奥まで行っても、引き返す時間が十分あるだろう。


「戻る時間を残して、入口の中を見ておこう」


 俺が言うと、ヘレンは坑口を見上げて頷いた。


「よし。アタイが先に入る」


 ヘレンは身をかがめ、狭い隙間へ身体を滑り込ませた。入口の内側で一度止まり、脇に残った腐りかけの支柱へ手を添える。

 ただし、体重を預けることはしない。支柱の傷みを目で確かめると、今度は頭上の岩へ視線を移し、足元の水溜まりを覗き込み、未知の領域への一歩をいよいよ踏み出したのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
cont_access.php?citi_cont_id=509229605&sツギクルバナー
― 新着の感想 ―
そう言えばここが誰かの領地で、廃坑になっているとは言え入るために許可がいる、みたいなことはないのかな? 良さそうな鉱物見つけたら持って帰る算段だし。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。