↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
50/251

2-14 雨降らし様――ゾウリムシ復活

ありがとうございます。


 現れた耳無しの者達にも、地球の人間に近い耳は存在する。

 もちろん鼠人や猫人のような、主張の激しい形ではないが、顔の両サイドにこじんまりとした、その厳つい風貌に見合わない小さな耳が付いている。


「久しぶりだな!」


「獣衆はどうした?」


「こちらに住むなら歓迎しよう!」


 力強く大地を蹴って、猫人達に劣らない勢いで駆け寄ってきた数人が、友好を示す挨拶なのか、腕を上げて手首を回すジェスチャーをし、ライもそれに応えて同じように返す。


「久しぶりやけぇ」


 結局、全く意味が無かった雨の障壁は解除される。


「変わった色だな。殻の色を変えたのか?」


「んだなぁ。こんな色しちょった神様、覚えちょるけぇ? あっちで光っちょる玉作った神様やけぇが」


「あぁ、良く見りゃ雨降らしの神様も、そんなんだったか?」


 一応、ライの読み通り『雨降らしの神』という認識で合っていたようだ。


「んだなぁ。今は雨降らしの神様と一緒におるけぇ。ここに、神様の守り役もおるけぇ」


「これは……雨降らし様……」


 ライの足元に居たニャマコを目にして口にした呼び名は、偶然にも海の軟体生物と同じ物であった。

 黒い神は雨降らしの神、ニャマコは黒い神の手足――眷属という扱いになり、神を外して意訳された、という事か。


 ちなみにアメフラシとは、食べても美味しくないナマコのような生物の名称である。

 もっとも、地球の分類上では全く違う生物だが。


「いや、ワシは雨降らしではなく、神の補佐……と言うと意訳は雨降らしになるにゃ。まぁ、とにかく、海の生物ではない別の名をつけてもらえんかにゃ?」


「……ウミ?」


 海というモノを知らない種族なのであろう。


「いや、すまんにゃ。アメフラシで良いにゃ……それは、ここに納めるのかにゃ?」


「あぁ、大青虫だ。俺達の感謝を受け取ってくれ」


「…………」


 ニャマコの視線の先には、巨大で青い、それも雨水を象徴するようなアクアマリン色の甲虫、というか目がクリッとして妙に愛嬌のあるゾウリムシ。

 それが体液を滴らせながらマッチョ達に担がれている。

 個人的には大変好ましい姿だが、ヒトのような自己認識が強いニャマコには、受け入れ難い贈答品かもしれない。


「……ダメか?」


「いや、問題無いにゃ。ありがたく頂くにゃ」


 交易の交渉に来て、出された物を拒否するわけにもいくまい、という事か。


「ニャマコ兄さん、食えるんかなぁ?」


「無理だにゃ」


 ライからしてみれば大青虫は食べ物という認識のため、単に食事をする機能自体を持っているか、という意味で尋ねたようだが、ニャマコの返答は心理的に不可能というニュアンスであった。


「ウチが運ぶけぇ?」


「いや……」


 直接掴むわけでも、黒い神の能力を借りるわけでもなく、マイコンを出す時のように震え出す。

 しかし、見た目には何も変わらず、震えが止まり次第大青虫に向かうと、脚の関節付近に触れて周る。


「そのまま下ろしてくれんかにゃ?」


「お? おう」


 全長5メートル以上はある大青虫が、ゆっくりと地面に降ろされると、内に曲がり閉じていた脚が開きだす。


「大したもんやけぇ」


「これなら、神の遣いに相応しいかにゃ?」


 立ち上がった大青虫が、呆然と見つめるマッチョ達を残して、滑らかな動きで歩いて行く。

 どうやら、目視できないサイズの端末を生成して、稼働に支障がない脚部に埋め込んでいたらしい。

 マイコンに生の筋肉をつけた、とも言える。


「ライ。大青虫は、雨降らし様の一族なのか?」


「いんやぁ。違うけぇ」


「あぁ、神様の仲間を狩っちまったのかと思ってな。でも、そうか……生き返らせちまうなんて、雨降らし様はすげぇんだな」


 ここはこれまで、黒い神への崇拝が突出した地域であったが、その崇拝のベクトルは雨降らし様――ニャマコに傾きつつあるようだ。

 大青虫は、カニのような食感、風味を持つらしい。

 ちなみにこの時点で、食用に安全な防腐処理がニャマコにより施されている。

 元は形だけ奉納してから、耳無し達が食べる予定であったとの事。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。