↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
17/251

1-6中 探索機――自爆機能

表現修正……2019/01/12


 探索機のボディ形成と内部ロジックの設計実装の間、いくらか意識レベルを落としていたニャマコの体が、力強く揺すられる。

 どうやら、試行錯誤の末、完成まで至ったようだが、その工数は地球時間で、およそ二週間ほどかかっている。

 開発開始前にニャマコから与えられた、思考操作機能と柔軟な補完機能を持つ開発環境一式により、コーディング方面に関してはある程度のクオリティが保証されている。

 とはいえ、ボディ形成はほぼ独力のため、それなりに苦戦はしたはず。


「おはよう、ニャマコ! できたよー!」


 声色は明るいが、表情には色濃い疲労を感じる。


「うむ。おはようにゃ……ふむ……これは……もはやマイコンの原型を留めておらんにゃ」


「どう? これなんか、かなりの力作だよ! 強そうなドラゴン! あと、カッコ良くて速いフェンリル!」


 この空間は高さの余裕が無いためか、四足歩行タイプの爬虫類型や、横方向に体長が取れる獣型の形状が多いようだ。

 サイズ自体は、最大で高さ3メートルほどで、横と奥行きの長さは種々様々。


「……サイズに対して出力は足りるのかにゃ?」


「全部、運動系マイコンは全身に埋まってるけど、メインマイコンが複数のもあるよ」


 運動の起点は、多数のマイコンで分散する、という事か。


「随分と凝ったものだにゃ」


「これは、3個タイプのケルベロス。こっちは、8個のヒュドラだよ」


 名前は悍ましいが、見た目はスマートな流線で構成されており、シルエットの格好良さを追求しているようだ。

 しかし、頭部にはツノや鋭い毛束などが見られ、攻撃性も感じる。


「ふむ、並列では無く、切り替え式かにゃ?」


「うん。あと、これ。両端頭部のヘビ、アンフィスバエナ。これなら、どこでも移動可能だよ」


 その前後に長い体の両端は、西洋の竜のような厳つい形状だが、細かい鱗に覆われた蛇腹部分には、東洋の龍のような滑らかさを感じる。


「ふむ、蛇腹の対称性は機能的かもにゃ」


「あ、ちゃんとラスボスは、ニャマコっぽさを残してるよ」


「ラスボスの意味は読み取ったが、単純に大物という意味かにゃ?」


「ほら、どこを切り離しても、またくっつく。全身メインマイコンだらけの、クライマックスキングナマコ」


 どう見てもナマコでしかない見た目だが、その身の一部を引っ張ると、多角錐のパーツが取り外される。

 そのパーツを地面に放ると、小さく薄い多角錐が連結した物が本体接合部に伸びて、自らを引き戻して嵌まり込む。


「ワシに対する認識が、ナマコで固定されておるのは理解したにゃ」


「ニャマコと同じく、弱点はすりおろし。全部削るとゲームクリアだよ。おめでとう」


 彼女の思考イメージを確認したところ、調理用すりおろし器で多角錐を削り、極小のマイコンを一つずつ取り外す光景が見られた。

 ゲーム性は薄い。


「……見た目のまともな奴は、見当たらんにゃ」


「ん……人型は難しすぎて、不具合の坩堝でムリゲーだったから……」


 おそらく、ニャマコが聞いたのは、『探索機として』という意味だと思われるが、彼女は『人間らしい』という意味で捉えたようだ。


「まぁ、迫力ある造形技術は、評価できるかもにゃ」


「形だけじゃないよ。ちゃんと自然に柔らかく動けるし」


 思考イメージには、強固に結合された耐久性の高い極細ワイヤーのような物が、ゲル状の何かの中で複雑に絡み合い、その周囲にマイコンが並ぶイメージが見られた。

 回転運動用のクロス構造と、ゲルの圧力変化による柔軟性の制御らしい。


「ふむ、やたらセンサーを多用しておったのは、そのためかにゃ?」


「ほら、スムーズでしょ? 飛べるタイプは無いけど」


 ドラゴンの足元を、波打つように拡大縮小させるが、器用に重心をコントロールしている。

 強く弾いて転倒させても、やや不自然な、規則正し過ぎる振り子運動は見られるものの、起き上がり自体は危なげない動き。


「お主の記憶で言うと、高級なネジ巻きオモチャだにゃ」


「うん。不具合嫌だから、基本的に一部のセンサーからの割り込み以外は、一個の入力に単純なことしか出来ないけど……多機能だよ?」


 多機能という点が強いアピールポイントらしく、ニヤリと笑みを浮かべる。


「移動探索と関係無さそうなイメージばかり伝わってきたのは、それが理由かにゃ?」


「もちろん全部、探索メインだから、センサーで取れる情報は、どの動作でも全部取れるようになってるし、ここなら嵌り難いから、問題無いはず」


「ふむ……まぁ、中身を見てみるかにゃ」


 ニャマコの体が固まったように停止し、同時になにやら、陽炎のような波が広がってゆく。

 それに反射するように、造られた者達それぞれが、多数の細い光線のようなモノでニャマコと繋がれる。

 わざわざ、それらしいエフェクトをつけているのは、種類を問わず、全てのミニニャマコと接続した事を、視覚的に表現しているのであろう。

 全て、しっかり確認しているという意思表示か。


「……ふむ。やはり、情報処理はだいぶマシだにゃ。少ない命令の組み合わせと、記憶領域のセコイ使い方が絶妙にゃ」


「セコくないよ。太っ腹だよ」


「大胆かもしれんが、全体的に設計自体はコンパクトだにゃ」


「薄い軽い小さいは、日本人の売りだよ」


 ソックスを厚底にして、腕を組み、ニヤリと笑う。


「思考も浅いにゃ。再帰処理のネストの方は、深過ぎだがにゃ」


「薄いのも重ねまくれば、層が厚いって言えるんだよ」


「生まれたての成長型AIよりは、器用な状況判断ができそうだにゃ」


 並列思考で重ねた、シンプルな処理の累積深度の有効性は、及第点のようだ。


「あ……あと、ちゃんと、どの流れでも行き詰まったら自爆するよ!」


「……何と闘うつもりにゃ。なぜ筋肉とマイコンで、爆発という発想になるのにゃ?」


 致命的な不具合に対して、シャットダウンで対応するニュアンスなら、理解できなくもない。


「良く、聞いてくれたね! そこがポイントだよ!」


 疲労が色濃い表情に、活力が戻る。


「いや、仕組みは予想できるし、イメージも伝わっておるが、実装する意味が――」


「自重の一万倍くらいの重さに耐えられる筋肉だよ? 空気をそれだけ圧縮できるって事だよ」


「だから、できるのは分かるが……」


「これはもう、腹部拡張、各部急弛緩、全身膨張からの、緩やかな収縮でタメ作ってからのー、どーん! って感じのクールな自爆で、イッちゃうしかないでしょ?」


「予備動作があることを、優しさと捉えたらいいのかにゃ?」


 むしろ不具合を装い、演出で惹きつけ、犠牲者を逃がさないトラップ。


「これで、このダンジョンの平和は保たれるよ」


「どう見ても、ただの地下水脈跡かなにかであって、夢と冒険の舞台では無いにゃ」


 ダンジョンという不明ワードから、記憶を読み取ったようだ。


「これぞ、ファンタジー!」


「いや、ファンタジーかもしれんが……」


 ファンタジーというよりは、ファンタジーを求めたい熱意であろう。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。